@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00010079, author = {青木, 義幸 and AOKI, Yoshiyuki}, month = {Apr}, note = {有殻アメーバは広く世界中の土壌に分布し、その個体数も多い。そのため、 陸域シリカサイクルに何らかの影響を及ぼしていると考えられる。とくに、 Euglyphidae は環境中からケイ酸を吸収して鱗片をつくり、それを並べて殻を構築 するため、土壌中のケイ酸量の増減に関わっていると予想される。しかしながら、 これまで、有殻アメーバのバイオシリカを定量的に評価した例はほとんどなく、 したがって、有殻アメーバがどの程度の規模を持ったシリカプールであるのか不 明であった。 本研究の目的は、森林シリカサイクルにおいて、これまでほとんど評価され てこなかった有殻アメーバの役割を、定量的なデータから評価することにある。 そのために、有殻アメーバの殻、とくにEuglyphidae の殻をEPMA で分析し、 化学組成を調べた。また、純粋な鱗片試料をEPMA 分析することによって、有殻 アメーバのバイオシリカの化学組成を調べた。その結果、有殻アメーバの殻から はSi,Al,Ca,Fe,K,P,S,Cl,Na,Mg,Mn,Ti が検出され、とくに、Euglyphidae の殻からはSi,Al,Ca,K,P,S,Cl,Na,Mg が検出された。一方、鱗片には Si しか含まれておらず、有殻アメーバのつくるバイオシリカが非常に純粋なシリ カであることが分かった。また、その他に検出された元素は生息していた土壌環 境を反映している可能性があり、それらは殻の内側に付着した生物由来、もしく は、土壌由来の物質、または、鱗片をつなぐ膠着物であったと考えられる。 さらに、有殻アメーバのバイオシリカ量を正確に測定するため、高倍率での 観察が可能なSEM による個体密度測定法の吟味を行った。従来のメンブレンフ ィルター法に分散剤を用いたsuspend-settle-decant procedure を導入することによ って、90%の有殻アメーバを土壌縣濁液から回収できるようになった。これによ って、従来の量の2.5-25 倍の土壌サンプルから有殻アメーバを抽出し、SEM 観察 することができるようになり、それによって、正確な個体密度測定が行えるよう になった(RSD:5%)。 有殻アメーバを含む土壌微生物が、土壌からのケイ酸溶出にどのような影響 を及ぼすのか、また、有殻アメーバがどれだけのケイ酸をバイオシリカとして固 定しているのか確かめるために、ケイ酸溶出実験を行った。その結果、有殻アメ ーバを含む土壌微生物が、土壌から供給されるケイ酸を一時的に細胞質内に保持、 もしくは、バイオシリカとして固定することによって土壌溶液中のケイ酸濃度を 低下させていることが分かった。さらに、土壌微生物によって取り込まれたケイ 酸の55%が有殻アメーバによるものだと推定されることから、有殻アメーバが土 壌におけるシリカ蓄積生物として重要な地位を占めていることが分かった。 有殻アメーバによって保持されているシリカ量、並びに、年間バイオシリカ 生産量の推定を行った。アカマツ-アベマキ林土壌で有殻アメーバの殻として保 持されているバイオシリカは0.45-1.57 kg SiO2 ha-1 であり、一時的なシリカプール として植物ケイ酸体の100 から1000 分の1 と、高等植物に匹敵するような規模 ではなかった。しかし、有殻アメーバは短いライフタイム、活発な増殖によって、 年間に10-227 kg SiO2 ha-1 yr-1 ものシリカを固定しており、高等植物が落葉落枝と して土壌に供給するバイオシリカの量に匹敵していることが分かった。 有殻アメーバはシリカ消費者、供給者として高等植物に匹敵するほどの役割 を持っており、とくに、短いライフサイクルと活発な増殖によって、短期的なシ リカサイクルに貢献していると考えられる。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(環境学)(論文)学位授与年月日:平成20年4月30日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {土壌有殻アメーバと森林シリカサイクル}, year = {2008} }