@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00010593, author = {吉村, 昇}, month = {Jun}, note = {近年石油化学工業の発展にともない新しい高分子材料がつぎつぎと出現し、特に電気的、機械的性質がすぐれていることから、それらは電気絶縁材料として電気機器、電力用および通信用ケーブルなどに広く用いられるようになつた。電気機器における電気絶縁は機能的には機器の寿命を決定するものであり、同時に部分放電劣化、トラッキング劣化、材料中を樹枝状に進展するトリーイング破壊などの長時間課電による絶縁破壊への配慮が必要である。トリー状の絶縁破壊形態は、1930年代篠原によって無機ガラスおよびハロゲン化合物中ですでに発見されている。しかし1958年、Kitchin,Prattらによって初めて実用ポリエチレンケーブル中にトリー状の絶縁破壊形態の存在が発見されて以来、トリーイング破壊は大きな問題となってきた。特に最近ポリエチレンおよび架橋ポリエチレンが高電圧電力ケーブルに採用されるにともない、長時間課電による貫通絶縁破壊の形態としてのトリーイング破壊は、その防止および抑制に関して工学上極めて重要な問題であると同時に、電気絶縁の破壊形態に対する物理的解釈の上からも興味ある問題である。本論文では高分子絶縁材料のトリーイング破壊について、これを発生および進展に分けて実験的にこれらを究明したものである。本論文の大要は8章からなる。第1章は緒論とし、ここでは高分子絶縁材料について概説し、その絶縁性能と問題点について述べた。さらに本論文の主題であるトリーイング破壊についてこれまで内外の研究経過を記述するとともに、本研究の目的を掲げ、本研究に対する著者の立場を述べている。第2章ではポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリスチロール、ポリ塩化ビニル、シリコーンゴムに交流50Hzを課電した際のトリーの発生について実験的に検討した結果について述べている。すなわちポリ塩化ビニル(軟質)、シリコーンゴムのようなヤング率の小さい(10^7dyns/cm^2以下)材料では針とポリマーの界面間にエアギャップが生成し、そのエヤギャップ内での放電の点弧後トリーは発生する。ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリスチロール、ポリ塩化ビニル(硬質)(ガラス転移点温度以上)ではマクスウェル応力による機械的破壊によることを説明し、ポリエチレン、ポリスチロール、ポリ塩化ビニル(硬質)がガラス転移温度以下ではトリーの発生電界強度はそれぞれの材料の古流の絶縁破壊の強さに比例して大きく、この範囲では空間電荷効果による電界緩和が起きているものと予測した。第3章ではトリー進展の基礎的特性について検討した。トリーの進展も発生と同様にヤング率との間には密接な関係があることを明らかにした。またボイドの有無の実験結果からトリーの伸びには発生ガスによるトリー内の気圧が大きな影響を持つことを確認した。またポリエチレン、架橋ポリエチレンの場合には、トリーの形状はトリー状、ブッシュ式、マリモ状と三つに分類され、ポリスチロールでは25,40,60℃の温度でトリー状とは異なる扇状のクラックとなることが明らかとなった。第4章では新たに開発した間欠課電装置を用いてトリーの伸び、形状と分解発生ガスの関係について検討した。連続課電ではブッシュ式あるいはまりも状を呈する電圧条件でも、間欠的に家電することによってトリー状へ移行し、トリーの伸びも促進されることが明らかになった。そしてこの原因が休止時間内での分解発生ガスの拡散あるいは針とポリマー間への漏洩によるポリエチレンの気体体積は約10^-9(cm^3)程度であることを考察した。第5章ではボイド内に種々の気体を封入し、その際の進展特性とトリー内の放電形態について検討した。エポキシ樹脂の場合ボイド内に十分な酸素分子が存在すれば、トリー内の放電はコロナ状となるが、酸素分子のない場合には微小アーク上の放電形態を呈する。そしてトリーの伸びは微小アーク状放電の強弱と関係がある。またPMMAの場合にはいずれのガスでもコロナ状放電となることを明らかにした。トリーの形状は酸素分子の場合には極端に枝分かれが少なくなることが認められた。第6章ではトリーイングの加速試験として電圧および周波数加速について検討するとともに併せて発生および進展機構について考察した。トリーの発生に関しては電圧、周波数とも加速に関与することが確かめられた。一方、トリーの伸びは針端にボイドがない場合には周波数加速は得られず、電圧加速については形状がトリー状となる電圧範囲において加速されることが明らかとなった。針端にボイドを持つ場合には電圧、周波数とも加速効果があることを示した。そして周波数を上奏した場合にも50Hzと同様にトリーの発生はマクスウェル応力に基づく機械的破壊によるものと考えた。トリー発生電圧以下の電圧条件では、3,10KHzと比較的高い周波数の場合には針端部分には溶融痕跡が見受けられた。これは誘電発熱による熱妖怪によるものと考察した。またトリーの進展については、トリー枝内で発生する気中放電の放電柱がトリー先端部分に到達した際の高電界形成による破壊と考えた。第7章では間欠電源装置を利用して電力ケーブルのコロナスキャニング試験について調べた。トライアックと言う静止器を利用した電源装置であることから、コロナパルスの測定感度を上昇できること、線間電圧、対地電圧の二種類の電圧を同一試験で課電できることなど種々の利点を持つことから、今後の高電圧ケーブルのコロナスキャニング試験法の一つとして十分に期待できることを確認した。第8章は結論で、本研究で得られた知見と工学的意義について述べた。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:工学博士 (論文) 学位授与年月日:昭和50年6月12日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {高分子絶縁材料におけるトリーイング破壊に関する研究}, year = {1975} }