@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00010659, author = {市原, 茂幸}, month = {May}, note = {第一章(その1)大腸菌のエンテロキリン介在の鉄取り込みに関与する外膜タンパク質の存在1.膜構造維持のために存在し,変化することが少いと考えられていた大腸菌外膜タンパク質の中に,培地の鉄により合成が抑制される3種類(O-2a,O-2b,O-3)のものを初めてみいだした。これら以外の外膜タンパク質には全く変化がなかった。2.3種類の外膜タンパク質を有する生菌には,エンテロキリン介在の特異的な鉄取り込み系が存在し,3種類の外膜タンパク質をもたない生菌には,その系が存在しなかった。3.膜標品におけるエンテロキリン介在の鉄結合活性を測定した結果,3種類のタンパク質を有している外膜にのみその活性が存在した。4.外膜標品に存在するこれらのタンパク質のモル数と,その外膜標品がエンテロキリンの介在により結合し得た鉄のモル数はおよそ1:1であった。5.3種類のタンパク質の存在量の異る外膜標品(タンパク質間の比は変わらない),および,外膜の一部と思われている小粒子においても,タンパク質と鉄の結合が1:1で起ることを示した。6.鉄結合活性測定の系のエンテロキリンと鉄の量比を種々変えた実験により,鉄の結合は,エンテロキリンが触媒として働くのでなく,鉄-エンテロキリン複合体がタンパク質に結合するために起こることを明らかにした。また,この結合は0℃でも起こったが,温度に依存していた。7.大腸菌B株には3種類のタンパク質のうち,0-2aは存在しなかった。しかし,3種類のタンパク質のを有するK-12株と同じ程度の鉄結合活性をもっていた。8.以上の結果から,鉄-エンテロキリン複合体のリセプターは,O-2bかO-3あるいはその両者であると結論した。第一章(その2)大腸菌細胞への,鉄-エンテロキリン複合体の結合に関与する外膜タンパク質の同定1.O-2(a+b)とO-3を外膜タンパク質の"heatmodifiability"(SDSとタンパク質の複合体が加熱前と加熱後で電機泳動の移動度が異ること)を利用し,SDS中で精製したが,精製したタンパク質では鉄結合活性が失われていた。2.他の研究グループで得られた,エンテロキリン介在の鉄取り込み系の変異株で欠損している外膜タンパク質feu A,feu BとO-2a,O-2b,O-3との対応を,精製したタンパク質O-2(a+b),O-3およびB株外膜を用いて調べ,O-2bがfeu B,O-3がfeu Aであることを明らかにした。3.feu A変異株,feu B変異株 およびfeu A・feu B二重変異株を得て,鉄-エンテロキリン複合体結合活性を測定した。その結果,O-2b(feu B)タンパク質が存在する場合のみ,活性があることをみい出した。O-2bの外膜における存在量と,外膜に結合した鉄の量は1:1であった。4.以上の結果から,鉄-エンテロキリン複合体のリセプタータンパク質は,O-2bであると結論した。第二章 大腸菌外膜主要タンパク質O-8,O-9のタンパク質化学的な比較および遺伝学的考察1.外膜主要タンパク質のうち,ペプチドグリカンと特異的な相互作用をもつなど,非常に性質の類似した2つのタンパク質O-8,O-9を,相互に分離することに成功し,それぞれに完全に単一にまで精製した。2.アミノ酸分析,BrCN分解物のゲル電機泳動による比較で,両者が非常に類似してはいるものの,少しずつ異ることを指摘した。3.N-末端アミノ酸配列の決定を12番目アミノ酸残基まで行いそれぞれを比較した。3番目(O-8はVal,O-9はIle)と11番目(O-8はLeu,O-9はphe)の違いのみが見いだされた。この結果から,両者が異る遺伝子の産物であることを明らかにした。4.これまでの遺伝学的な結論を,両者の構造遺伝子が異るという結果にあてはめ再分析し,O-8の構造遺伝子が大腸菌遺伝子地図の48分,O-9の構造遺伝子が21分にマップされることに提唱した。5.大腸菌遺伝子地図において,21分と48分は約90°離れていることから,両者が共通の祖先をもち,進化の過程で連続重複が起っているという仮説にあてはまることを考察した。第三章 大腸菌外膜主要タンパク質の菌株特異性1.種々の異る大腸菌の外膜タンパク質を3種類のSDSポリアクリルアシドゲル電気泳動法で比較した。その結果起源の異る3群,大腸菌K-12株,大膜菌B株,大腸菌J-5株で,その外膜タンパク質の組成にちがいがあることを見いだした。2.ペプチドグリカンと相互作用をもつタンパク質の比較から,K-12株にはO-8,O-9,B株にはO-9のみ,J-5株には電気泳動で少し移動度の異るO-8',O-9'があることを示した。3.主要タンパク質の1群であるO-10,O-11は,いずれの菌株にも共通して存在していた。4.鉄で制御されるタンパク群は,K-12株がO-2a,O-2b,O-3であり,B株は,O-2b,O-3であった。J-5株は,O-2a,O-2b,O-3を持っていたが,その他にこの近辺に鉄で制御されない2種の主要タンパク質を持っていた。6.以上の結果をまとめ,他の研究グループ間で異る菌株,異るタンパク質の名称のため混乱していた外膜タンパク質の比較表を作った。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:農学博士(論文) 学位授与年月日:昭和53年5月26日}, school = {名古屋大学, NAGOYA University}, title = {大腸菌外膜タンパク質の構造と機能}, year = {1978} }