@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00010667, author = {遠藤, 守信}, month = {May}, note = {炭素繊維は複合材料の革命児と期待されて久しいが,今日,ようやく重要な工業材料としての地位を確保するようになり,今後,その実用化は急速に拡大するものとみられている。炭素繊維は高強度,高弾性,高電気伝導性を有し,炭素繊維強化複合材料は宇宙航空技術の分野を中心にバイオニクス,電気,電子材料の分野へも応用されるようになり,炭素繊維の製造法,諸物性,応用法の開発に関する研究はますます活発化している.一般に炭素繊維はポリアクリロニトリル(PAN),レーヨン,ピッチなどの有機繊維を熱処理炭化して製造される。本論文はかかる炭素繊維のうち,ベンゼンを熱分解して得られる独自の気相成長炭素繊維の成長機構とその電気物性についてまとめたものである。これら気相成長炭素繊維は高性能炭素繊維として工業的見地からも注目され,また市販の有機系炭素繊維に比較すると構造不整が少なく一つの理想物質とみなされている.これらの構造や諸物性に関する知見は学術的にも工業的にも重要な意味を持つものであるが,一般の炭素繊維の発展に対しても重要な情報を与える。また,今まで全く取り扱われなかったユニークな炭素材料として,その成長機構や電気物性の解明は古くから貯えられてきた炭素の科学に対して興味ある知見を提供する。さらに,この気相成長炭素繊維を用いて,半金属の炭素繊維から金属的電気伝導性を有する合成金属織維も生成することも可能である。このように本研究では炭素繊維に新しい物性を付与し,その応用を拡大する観点からの提案も行っている。本論文は9章からなり,第1章は序論,第2章~4章では"炭素"を論ずる場合に最も基本となる構造とその成長機構を明確にしている。第5章~6章はその電気物性,第7章は磯械的物性,第8章は気相成長炭素繊維の新しい電気材料的応用法についで検討し,第9章で総括を行っている。以下にその要旨を示す。第1章は序論である。Anold-butnewmaterialといわれる炭素および黒鉛材料一般について概説し,その中で,宇宙航空技術の分野における高性能材料としての要望から生まれた炭素繊維の位置付けを行うと共に,今日までに得られた炭素繊維は三種類に分けられ,そのうち本論文で対象とする気相成長炭素繊維に関する内外の研究経過を述べ本研究の特徴を詳述する。さらに,炭素繊維一般について,電気,電子物性面より見た特徴ならびにその電気工学的応用の現状と将来の展望について示す。ここで取り扱う独自の気相成長炭素繊維がその構造,電気物性上,一般の炭素繊維に対して一つの理想物質とみなされるものであり,本研究が炭素繊維ひいては炭素の科学の発展に重要であることと絡めて本論文の目的を述べ,つづいてその概要を記している。第2章では気相成長炭素繊維の生成法と成長過程について述べている。特に炭素繊維生成に及ぼす諸因子の影響を明らかとし,生成のための最適条件を確立した。その結果,長さ25cm~30cmに及ぶ多量の長繊維が再現性よく得られ,従来,全く知られていなかった炭素繊維の成長過程の解明が可能となった。すなわち,この気相成長炭素繊維は核形成期,長さ成長期,太さ成長期の三つの過程を経て発達することが明らかとされた。第3章では気相成長炭素繊維の構造と成長機構を明らかとし,その成長モデルを提案している。気相成長炭素繊維は繊維軸に沿って直径約100Åの中空チューブが存在し,この中空チューブ周辺と繊稚表面付近ではその構造が著しく異なっていることが知られた。すなわち,この炭素繊維はセメンタイト(Fe3C)微小結晶の触媒作用によって中空チューブを備えた太さ数100Åの素繊維が形成され,続いてベンゼンの熱分解沈積こよってこの細い素繊維上に炭素被膜がコーティングされ,太さ数$¥mu$m~数100$¥mu$mの炭素繊維が生成されることが示された。そして素繊維の形成に対して新しい成長モデルが提案されている。また素繊維は炭素繊維形成に不可欠であり,また太さ成長部分は炭素繊維の物性を特徴づけるものである。このように気相成長炭素繊維の成長機構は第2章の結果とよく対応し,また木繊維の工業的量産が容易であり,且つ有望であることが予測された。第4章では,気相成長炭素繊維は熱処理することによって無定形炭素に近い構造から黒鉛構造に変化する性質(易黒鉛化性)を有する炭素繊維であることを示し,またその結晶構造の変化過程を明らかにした.そして,3,000℃の熱処理によってグラファイトウィスカ-(GraphiteWhisker)に匹敵する黒鉛繊維が得られることを示す。第5章は気相成長炭素繊維の電気伝導性に関するもので,電気抵抗率とピエゾ抵抗効果を中心に述べている。本繊維の電気抵抗率($¥rho$)は繊維の大部分を占める熱分解炭素層の物性の反映であり,良好な配向性のため,その電気抵抗率と微細構造の関係を直接知ることができた。また炭素献維を3,000℃までの各温度で熱処理する場合の$¥rho$の変化は易黒鉛化性炭素の挙動とよく一致し,これはMrozowskiのバンドモデルによって定性的に説明された。また,本繊維の構造上の利点を応用し,これまでの炭素材料では測定されなかったピエゾ抵抗効果($¥Delta$/$R_o$)を測定し,歪みと抵抗変化の関係を明らかとした.その結果,気相成長炭素繊維の($¥Delta$/$R_o$)は歪みに対して直線的に,また3,000℃で熱処理した黒鉛繊維ではわずかな負の極小と続く正の直線的増加を示すことが知られ,繊維の徴構造と関連して一般の有機系炭素繊維とも比較して検討された.そして本繊維の理想構造性は不均質な高次構造を含んだ従来の炭素材料及び一般の炭素繊維の電気抵抗率ならびにピエゾ抵抗効果の解釈に有効な知見を与えた。第6章はキャリアの輸送現象に関係した磁気抵抗効果,熱電効果,磁気ゼーペック効果を取り扱ったもので,これまで検討されたことのないユニークな研究対象として,固体物性的見地から考察を加えている。例えばこの炭素繊維のもつ年輪状構造に原因するとみられる欠陥によってもたらされる新しい現象が磁気ゼ-ペック効果に観察された。第7章は気相成長炭素繊維の機械的強度に関するもので,一般の炭素繊維のそれらと比較検討がなされている。また炭素繊維の弾性率と電気伝導率の関係についても考察している。第8章は気相成長炭素繊維の新しい応用の試みに関するものである。黒鉛繊維GF-3,000(気相成長炭素繊維を3,000℃で熱処理したもの)と硝酸との反応によって,黒鉛繊維と硝酸の層間化合物を生成し,それが金属的電気伝導性を有する高強度繊維であることを示し,その化合物繊維の構造,電気物性について検討した。これは,気相成長炭素繊維の特徴を利用して,それを積極的に電気材料的に応用しようとする立場からの研究であり,この結果はまた市販の炭素繊維の導電材料としての実用化の可能性を示唆するものである.第8章では,さらに気相成長炭素繊維のシ1)コン(Si)被覆及びシリコン(Si)一炭素(C)複合織椎について示し,これは本繊維の複合材科への応用のワンステップとなるものである。第9章は本論文の総括であり,得られた主な知見をまとめて記すとともに,本研究の電気工学上の意義とその工学的応用について述べている。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:工学博士(論文) 学位授与年月日:昭和53年5月31日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {気相成長炭素繊維の成長機構と電気物性に関する研究}, year = {1978} }