@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00010748, author = {水谷, 研治 and Mizutani, Kenji}, month = {Mar}, note = {1債務循環の理論--経済変動における金融の役割経済活動において金融は重要な役割を果している。金融の機能を利用すると、過去において自分が蓄積した分は勿論のこと、他の部門で蓄積されたものも使用することができる。こういった金融の本質的な機能を本格的に活用すると、不足する需要を作り出すことができるだけでなく、不足する供給力を他の部門から持ってきて利用することができる。このようにして需要面のみならず供給面の拡大も可能となる。すなわち金融を利用することによって経済規模を拡大することができるわけである。このことは供給力に余裕があるかぎり続けることができる。その場合の供給力は自己の部門内にある必要はない。世界のどこかにあり、それが利用できれば構わない。一旦このような形で金融を利用して経済の運営を始めると,安易な道であるだけに是正が困難であり、いつまでも統く可能性がある。その場合、限界となるのは供給力の余裕がなくなることであるが、今一方の限界は金融の機能が限界に至ることである。それは債務の増大に伴って金利負担が著しく過大となり、金利の支払いと債務残高の増加が相互に増幅しあって破局に向う場合である。債務増大の限界に至ると、もはや債務を拡大して経済水準を高めることは不可能となる。そして逆に債務の削減が必要となってくる。債務拡大の過程で経済を拡大させてきた反対の現象が現れ、債務の縮小の過程で経済は縮小を続けざるをえない。このように債務の増減が経済の循環に大きな役割を果しており、債務循環に基づいて経済の波動が現れると考えられる。 経済発展と不均衡の拡大--収斂体系よりも発散体系が現実経済は何時も合理的に均衡を目指して動くとはかぎらない。むしろ一度均衡から離れると、どこまでも均衡から離れていく傾向があり、望ましい方向へと収斂するのではなく,むしろ拡散することが多い。現実の経済動向はどこかの段階で、それ以上の拡散的な動きを制約する要因が現れて反転していく。景気についていえば、その間に自律的に反転する場合もある。上昇から反落が起こる場合と、下降からの反騰が起こる場合とでは違っていて、それは供給力が需要に比べて著しく大きいか、逆に小さいかによって、一方のみに偏ると考えられる。それだからこそ、経済政策によって修正が行なわれる。ところが傾向的な動向に対処するために経済の体質を悪化させることがある。その場合でも一度方向が決まると、たとえ望ましくなくても、そのまま進行し、問題を拡大していく。問題が極端に大きくなり限界に達すると、経済の是正のために破壊的な変動が生じる。 フローとストックの相互関係--債務増大による経済発展経済をとらえる方法としては、フローであるGN Pをはじめ生産や輸出入など毎年作り出されるものの増加率を経済成長率などとして見ることが多い。それが重要であることは当然である。しかし、長い期間を考える場合には、物やサービスを経常的に産み出す機構や資産のストックの面を重視する必要がある。ストックを犠牲にすれば、一時的にフローを大きくすることができる。しかし長い間ストックを犠牲にし統けると、やがてはフローに影響を及ぼし、経済成長率を低下させる。持続的に経済発展を続けようとすれば、経済の拡大過程で、ストックも拡充することが必要である。現実にはマイナスのストックである債務を拡大して経済の繁栄を図ることができる。それが始まると、安易であるだけに、長い間続き、その間は経済的繁栄を続けることができる。しかし一方では債務が増大していく。それが限界に達すると経済の流れが転換し、大不況が現われる。 金融の役割と限界--債務増大と金利負担の限界ストックとフローの両者を結ぶ掛け橋が金融である。とくにマイナスのストックとしての債務が増大するためには金融が重要な役割を果している。金融面からの支援があるかぎり、繁栄を統けることは容易である。経済社会を大きく引さ上げるほどの金融的支援が続くのは、有力な経済主体があって、それが積極的に資産を減少させ、債務を増大させるからである。また、この主体に対し、他から積極的に融資を続ける必要がある。それができるのは余程の信用力を保持する経済主体である。その主体が極端なまで債務を増大させ、融資主体から見離されるまで、周囲を含めて繁栄を続けることができる。しかし、それは無限に続くわけではない。債務が極度に増大すると、金利の支払いが増加し、やがては経常的な経済活動をも阻害することになる。さらに進むと金利負担が増加して、やがは限界に達する。ストックの劣化を通じて繁栄を統けた分については、いずれ修正をせまられる。大変動を経なければ、過大となった債務を縮小し、正常化を達成することは難しい。それを回避するために最大の資産である人間の性格を変えることが推奨されることがあるが、長い将来を考えと賛成できない。将来にわたって、持続的な繁栄を願うとすれば、ストックを再構築しなければならない。その意味では短期的な繁栄を目指す場合と、長期的な繁栄を目指す場合とでは採るべき方法が異なる。現実には、とかく短期的な見方に偏りがちである。しかし、いずれ繁栄は続かなくなり、早晩、長期的な課題に取り組まざるをえなくなる。その過程では、経常的に犠牲を払う必要があり、その間、経済成長率の大幅な低下は避けられない。それだからこそ、むしろ苦難を覚悟して早目に対処し、債務を縮小して根本問題の是正を図る必要がある。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類 : 経済学博士(論文) 学位授与年月日 : 平成1年3月13日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {債務循環に基づく経済の長期波動 : 経済発展における金融の役割りとその限界}, year = {1989} }