@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00012929, author = {縫村, 崇行}, month = {Mar}, note = {ヒマラヤ地域に存在する氷河は、表面をデブリ(岩屑) に覆われたデブリ氷河が多い。デブリ氷河の下流域では、氷河表面を覆うデブリと氷河周辺の地面との境界が不明瞭であるため、可視衛星画像から氷河の面積を正確に捉えることが困難である。そのためヒマラヤ地域での氷河変動を議論するにあたっては、デブリを含めた氷河表面の高度変化の正確な計測が重要となってくる。一方、デブリはその厚さが薄い場合はアルベドを減少させることにより氷河の融解を促進するが、厚い場合は断熱効果により融解を抑制する作用がある。そのため、ヒマラヤ地域における氷河変動量を求める場合は、デブリ氷河の変動を抑えることが重要となってくる。山岳氷河のように現地へのアクセスと測量作業が困難で、頻繁に観測することができない対象について、広域に均一な精度で変量を抑えるためには、リモートセンシング観測は不可欠であり、リモートセンシングを用いて氷河変動を捉える試みは多くの地域でなされている。ヒマラヤにおいても、氷河の面積変化、表面高度の変化、流動速度の分布など、従来空間的及び時間的に連続的に求めることが困難であったものを、明らかにする研究が試みられている。しかし、リモートセンシングによる観測は、その計測方法やセンサーの種類により、様々な原因にもとづく誤差やバイアスが含まれるため、一般的に現地観測に比べ計測精度が劣るとされる。また、従来のヒマラヤ地域でのリモートセンシングを用いた氷河変動の研究の多くは、現地観測データによる精度検証や補正を行なっていないのが実状である。こうした背景のもと、本研究ではネパール東部のクンブ地方において2 回の現地観測を実施し、その観測データを用いて衛星データの精度検証及び補正を行なった上で、氷河変動量を高精度で復元することを目的とした。ネパール東部のクンブ地方において、2004 年秋にはクンブ氷河、2007 年秋にはクンブ地方の広域を対象にDGPS (Differential GPS) 測量を行った。エベレスト南西面から流れ下るクンブ氷河においては、これまでも1978 年、1995 年、1999 年にそれぞれ氷河の消耗域に設定した4 ヶ所の対象区域において現地測量が行われている。2004 年秋の調査はそれらの測量データを更新し、最新の氷河変動量を明らかにすることを目的として行った。ただし、氷河消耗域の一部では測量作業が危険であったため、対象区域4ヶ所の内、最上流側と最下流側の2ヶ所のみで実施した。中間に位置する2ヶ所は、Terra 衛星搭載のASTER (Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection Radiometer) センサにより、現地観測と同時期に計測されたDEM (Digital Elevation Model) を用いた。DGPS による現地測量データとASTER-DEM の標高値に生じる差は、両者それぞれの固有の誤差に加えて、ASTER-DEM がGCP(Ground Control Point) を使用せずに衛星の軌道位置情報のみによって決定されていることに起因する。そこで本研究では、まず現地でのDGPS 測量にもとづく最上流側と最下流側の2 ヶ所の標高値を用いて、ASTER-DEM の精度評価及びバイアス補正値を求め、これにもとづいて、残りの2 ヶ所の地形データを算出した。以上の手法により、クンブ氷河の消耗域における最新の氷河変動量を明らかにした。一方、2007 年の調査ではクンブ地方広域(東西30 km、南北25 km、標高3400-5500 m) において、DPGS 測量を行なった。そしてこの結果を用いて、クンブ地方における1992 年の空中写真測量によるDEM、2000 年のSRTM (Shuttle Radar Topography Mission) DEM、2001 年から2008 年までの13シーンのASTER-DEM の計15 時期のDEM について精度検証及びバイアス補正を行ったうえで、氷河表面の高度変化速度を求めた。氷河表面の高度変化速度は重み付け最小二乗法(WLS: weighted least squares) による線形回帰モデルにより求めることによって、補正済みのDEM に残っている誤差の影響を抑えることができた。解析の結果、1992 年から2008 年までのクンブ地方全体での氷河表面の高度変化速度は、-0.45±0.57 m a^-1 w.e. (water equivalent) と求められた。また、氷河表面のデブリの有無別に見ると、デブリ域は-0.63±0.38 m a^-1 w.e.、裸氷域は-0.35±0.68 m a^-1 w.e. となり、これまで表面デブリ層による断熱効果で氷河の融解が抑制されていると考えられていた氷河消耗域のデブリ層の厚い部分でも、氷河の表面低下が大きいことが明らかとなった。また、氷河表面の高度変化速度の空間分布を、クンブ氷河について現地観測の結果と比較したところ、表面低下量の分布は整合的であり、本研究で行った複数時期のDEM 解析による氷河表面高度の変化速度を見積る手法とその結果が妥当であることが確認された。クンブ地方に存在するデブリ氷河にて、デブリ被覆域の氷河縦断方向の傾斜と表面低下速度の比較の結果、傾斜の緩やかな大型デブリ氷河では表面低下速度が大きく、傾斜の急な小型デブリ氷河では表面低下速度が小さい傾向が見られた。このような大型デブリ氷河の傾斜の緩やかなデブリ域における表面低下は、氷河湖形成の兆候を示していると考えられる。本研究では、高度変化速度をWLS 線形回帰モデルを用いて求めることにより、現地観測データによる補正済みのDEM においても取り除けない誤差の影響を抑えることができた。また、本研究の結果は、高標高の雪氷域での低コントラストにおけるステレオ生成DEM の精度上限界があることを示しており、今後は高標高域での氷河表面高度の変化を見るためには、レーザー測量法などによるアプローチが望ましいと思われる。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類 : 博士(理学)(課程) 学位授与年月日:平成23年3月25日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {GPS測量で補正したデジタル標高データによるネパールヒマラヤ・クンブ地域の氷河変動}, year = {2011} }