@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00007979, author = {浅井, 啓輔 and Asai, Keisuke}, month = {Mar}, note = {国際熱核融合実験炉ITERでの確実かつ効率的な自己点火条件の達成,およびその長時間維持のためのプラズマ燃焼制御において,中性子発生量とプラズマ中の燃料比(重水素(D), 三重水素(T)比)は外部加熱系,燃料注入系に対して極めて重要な情報となる.本研究ではDT核融合炉の燃焼制御のための先進的中性子発生量計測システムおよび燃料比測定システムについて,ITERへの適用を想定したシステムの基本的核設計と適用性評価を行った. 中性子発生量計測系については,トカマク装置真空容器外に減速型中性子検出器を取り付ける手法に着目し,モンテカルロシミュレーションに基づき要求されたダイナミックレンジを満足するシステム設計案を具体化した.またDT運転のみならずDD運転も重要な役割を果たすITERの運転シナリオを考慮し,その特性に適したその場較正実験手法を提案し,期待される測定精度を評価した.  DTプラズマ中の燃料比は周辺プラズマと中心プラズマでのモニタリングに分類される.プラズマ中心付近のモニタリングには中性子の高い透過性を利用し,中性子スペクトロスコピー,すなわちDD反応,DT反応によって発生するそれぞれのエネルギーの中性子強度比測定に基づく手法が適用可能であり,その測定システムの有力候補は二結晶型飛行時間中性子スペクトロメータである.本研究ではDT高出力燃焼プラズマでのDD中性子検出に特化した新しい飛行時間中性子スペクトロメータ概念を提案した.本システムは,飛行時間を測定する結晶対の前にDT中性子よりもDD中性子に対して大きな弾性散乱断面積を有する中性子散乱体を挿入することで,結晶対に入射する中性子スペクトル中のDD/DT中性子強度比を上げ,DD中性子検出のSNR(Signal-to-Noise Ratio)の向上を狙うものである.本論文ではシステムの試作と基礎実験によって,本中性子スペクトロメータ概念の成立を示し,さらに重水素加速器DT中性子源からDT中性子と共に僅かに(~1%)発生するDD中性子の検出を実証した.またITERへの適用を想定したシステム設計検討と実機への設置場所を選定し,期待される測定精度,時間分解能および適用範囲を明らかにした.以下に各章の内容をまとめる. 第一章 序論  本章ではITERでのDTプラズマ燃焼制御の基本となるアルゴリズムの一例を提示し,外部入力加熱および燃料注入率の制御には,中性子発生量とプラズマ中の燃料比(重水素-三重水素イオン密度比nD/nT)のリアルタイム計測が重要な役割を担うことを述べた.またトカマク装置での中性子発生量計測,燃料比計測の現状と問題点を整理し,本研究は両モニタリングシステムについて,ITERへの適用を想定した核設計を行うことを目的とすることを記した. 第二章 真空容器外中性子発生量モニタリングシステムの核設計  核燃焼プラズマからの中性子発生量モニタリングシステムとして,トカマク装置真空容器外に減速型中性子検出器を設置する手法に着目し,ITERでの要求性能を満たし得る検出器モジュールの基本的核設計を行った.図1にその基本構造を示すが,異なる感度を有する235UO2核分裂電離箱数本を黒鉛またはベリリウム減速材,ガンマ線遮蔽用に鉛,熱中性子遮蔽用にカドミウムで取り囲むことでモジュールを構成している. 減速材の厚みは検出効率のエネルギー依存性を可能な限り抑えるように最適化されているが,ベリリウム減速型検出器モジュールは黒鉛減速型に比べ減速領域が薄い構造であり,狭隘空間への設置に有利となっている.また信号処理回路にパルスモードとキャンベルモードを採用することで,各検出器のダイナミックレンジを9桁まで拡張可能である. 第三章 検出器モジュールのITERへの設置とその場較正実験手法の検討  本研究では第二章で設計したモジュールを図1のように,実機水平ポートにプラズマから距離の異なる場所に計3台(検出器6本)設置することを提案する.中性子輸送モンテカルロ計算コードMCNP-4C2 (中性子断面積データENDF/B-VI)を用いたシミュレーションにより,その場較正実験から最大出力運転までの11桁以上の広い領域を各検出器のダイナミックレンジの十分なオーバーラップと冗長性を備えつつカバーできることを示した.  また,本システムのその場較正実験手法について,DD,DTの両プラズマ実験フェーズが計画されているITERでは,その場較正実験においてもDD/DT中性子源両方を用いることが重要であることを指摘し,その具体的な手法を検討した.またシステムの測定精度に寄与する要因を整理し,実機運転中に期待される測定精度を評価した. 第四章  燃料比測定用多重散乱型飛行時間中性子スペクトロメータ プラズマ中心付近の燃料イオン比測定は,DD/DT核融合反応によってそれぞれ発生するDD中性子(2.45 MeV),DT中性子(14.1 MeV)のスペクトロスコピーに基づく手法がゆうりである.現在,飛行時間中性子スペクトロメータが有力候補とされているが,実機高出力領域での第一検出器の高事象率起因のアクシデンタルカウントがDD中性子検出のさらなるバックグラウンド成分となり,測定精度を悪化させる.そこで,本章では実機高出力領域での燃料イオン比測定用の新しい飛行時間中性子スペクトロメータを提案した.このシステムは図2のように飛行時間を測定する結晶対の前にDT中性子よりもDD中性子に対して大きな弾性散乱断面積を有する中性子散乱体を挿入し,検出器入射のDD中性子の相対強度を高めることで,DD中性子の信号-雑音比向上を目指すものである.本章では,そのシステム概念と中性子散乱体の選定について述べた.またDT中性子ビームを用いた基礎実験によって図3に示すようにDT中性子スペクトルの明瞭なピークの観測に成功し,本中性子スペクトロメータ概念の成立を示した.さらに今回用いた加速器中性子源は,重水素ビームを加速しトリチウムターゲットに照射することでDT中性子を発生させているため,DT中性子と共に僅かに(1%程度)DD中性子も発生する.そこでこの加速器DT/DD中性子ビームを用いて,本システムがDT中性子ビーム中の微量DD中性子検出が可能であることを実証した. 第五章  中性子スペクトロメータのITERへの適用検討  本章では第四章で提案した中性子スペクトロメータの実機への設置と期待される性能,すなわち,測定精度と時間分解能,適用範囲について評価した.まず,直接の測定対象はDD/DT中性子強度比であり,その測定精度評価法についてまとめた.本システムはプラズマ中心付近をモニタリングするため,プラズマに対して扇状に複数本の視線を持つコリメータアレイ(Radial Neutron Camera)の中心ライン上に設置される.そこでプラズマからの距離,すなわち中性子ビーム強度を基に実機への設置場所を選定し,その位置での中性子スペクトルをMCNP-4C2 (中性子断面積データENDF/B-VI)を用いてシミュレートした.次にそのスペクトルを用いて,測定精度と時間分解能を指標に本システムの設計パラメータの最適化に向けてのサーベイ計算を行った.その結果ITER最高出力運転フェーズにおいて,要求された20%の測定精度を最高で8.5 sの時間分解能で達成可能なシステム構成を示した.またそれ以下の出力領域および低DD中性子発生率の場合への適用性についても評価した. 第六章  結論と今後の展望  核融合炉でのDT燃焼制御のための中性子計測系について,中性子発生量計測システムと燃料イオン比計測システムに着目し,本研究で行った設計検討結果とITERへの適用性評価結果についてまとめた.中性子発生量計測システムについては,実機高出力実験フェーズに対して,要求された測定精度を達成可能なシステム構成を示した.しかしながら現時点では,DD中性子のみならずDT中性子も大量に発生するDD実験フェーズ高出力領域への適用に対して測定精度に問題が残る.また燃料イオン比計測システムに関しては,時間分解能に改善が望まれるものの,実機最高出力時に要求された測定精度を満たしうるシステム設計案を示した.それらの改善策については今後の展望にまとめた. 本設計研究の成果は初の本格的核燃焼プラズマに適用可能な先進的中性子計測系概念として,将来の商用核融合炉における核計装系開発の基盤構築に貢献するものである., 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学)(課程) 学位授与年月日:平成19年3月23日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {Nuclear Design Study on Advanced Neutron Measurement System for DT Burn Control in Fusion Experimental Reactor}, year = {2007} }