@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00008309, author = {三輪, 富生 and Miwa, Tomio}, month = {Mar}, note = {近年の道路交通計画においては,厳しい予算制約の下で如何に効果的かつ効率的な代替案を選定するかが重要なテーマとなっており,分析対象となる交通行動や交通施策も多様化している.ハード的な交通施策に対する厳密で精緻な評価はもとより,ソフト的な交通施策による既存ストックの有効活用を前提としたTDM 施策や,ドライバーへのリアルタイム情報提供等のITS 技術の開発・導入に関する分析が盛んに進められている.このため,より詳細な交通流の調査が,今後検討されるべき交通計画において重要な項目の一つとして注目を集めている.ソフト的な交通施策に向けた分析を行うにあたっては,実際の道路ネットワーク上を流れる交通流を,より精緻に表現することが可能なデータの収集とモデルの構築が必要不可欠である.しかし,道路ネットワーク上を移動する自動車や歩行者は,各々の持つ起終点,利用経路や移動者の個人属性など,そのほとんどが把握されていない.このような交通行動をすべて把握し,モデルによって完全に再現することは困難であるものの,管理者側からの適切な交通情報提供によりネットワーク利用者各々の交通行動を誘導することで,利用者全体にとって最適なネットワーク交通流の実現を目指すシステムを構築することは,今日の交通工学の主要な課題の1つといえる.このような背景の下,より詳細な交通行動を調査することが可能で,かつハード的な設備投資を必要としない調査手法が求められ始めた.プローブカー(Probe-Car)システムは,GPS 車載機を搭載した車両を現実の道路ネットワーク上を移動するセンサーとして捉え,走行速度や位置情報等を収集することにより,交通流動等の道路交通情報を生成するシステムである.従来のOD データが平均的な1 日を対象とし,トラフィックカウンターデータ等の断面交通量データが道路ネットワーク上の主要区間を対象としているのに対して,プローブカーシステムでは,実験期間中に車両が走行したすべての道路区間で経験した走行速度や停止回数など,時間的,空間的な制約の少ない,より動的な情報を収集することができる.さらに,プローブカーの走行軌跡は,ドライバーが選択した経路に関する情報を直接的に分析者に伝えることができ,これまでは収集が困難であった経路選択実績データを,容易にしかも十分なデータ量を確保することが可能となる.しかし,プローブカーが提供する車両の走行軌跡は連続する位置座標情報であり,これを交通行動分析に用いるためには走行経路を特定する作業が必要となる.連続する車両位置座標から走行経路を特定する作業はマップマッチングと呼ばれ,これにより経路上に存在する全ての道路区間の旅行時間情報を利用することが可能となり,また経路選択行動分析用データとしての利用も可能となる.そこで本研究では,プローブカーの走行軌跡情報を道路ネットワーク上の走行経路情報へと変換する技術の開発を行うことを目的の一つとする.本研究で開発されたマップマッチングアルゴリズムでは,車両位置座標のみからでは走行経路特定が困難な,都市高速道路と一般道路が立体的に配置した区間を有するOD ペアにおいても,車両の走行速度情報を用いることにより,94%程度の精度で走行経路を正しく特定することが可能となることが示された.マップマッチング処理により走行経路データへと変換されたプローブカーデータは,従来の交通データよりも広範囲にわたる旅行時間情報として利用可能である.このため本研究では,従来の交通データからは困難であった,より柔軟な旅行時間予測手法を開発する.ここで開発される手法は,起点において出発後の交通状況の変化を考慮した最適経路を提供するものである.出発時刻の交通状況のみを用いる予測手法では,交通状況の変化の激しい時間帯において予測された旅行時間や経路に含まれる予測誤差が大きく,交通状況の変化をあらかじめ予測することで,予測旅行時間の精度が大きく向上することが示された.しかし,予測された旅行時間情報は,トリップ開始後の交通状況が平均的に変化することを前提としており,さらには,情報提供の対象となるドライバーが平均的な走行を示すことをも前提としている.しかし,日々の交通状況は平均的な交通状況のまわりを変動しており,またすべてのドライバーが平均的な走行速度を示すとは限らない.プローブカーデータは,トリップ開始後にドライバーが経験した交通状況や,ドライバーが示す走行特性に関する詳細な情報を有している.そこで本研究では,トリップ中にドライバーが経験した交通状況の平均とは異なる変化や,ドライバーの平均とは異なる走行特性を考慮して,適切に残り区間の旅行時間を更新するための手法を開発する.本研究で開発された予測旅行時間更新手法は4 種類であるが,それらは蓄積されたプローブカーデータを非集計的に扱う手法と集計的に扱う手法に大別される.前者は,蓄積データに含まれる各データと対象トリップの走行データを一対比較することで,類似度の高い蓄積データを抽出して残り区間の予測旅行時間を更新する手法であり,後者は蓄積データを集計し,統計的手法を用いて残り区間の予測旅行時間を更新する手法である.本研究における分析により,前者と後者では予測更新精度が異なることを示し,特に蓄積データ数が少ない場合においては,蓄積データの非集計的な取り扱いがより高い予測更新精度を導くことを示した.またプローブカーデータが提供する走行軌跡は,ドライバーの経路選択行動に関する情報であり,この情報を用いれば現在一般的に用いられている経路選択モデルや,これまでに開発された様々なモデルについてその再現性を検証することが可能となる.そこで本研究では,現実の交通状況を記述する概念として最も一般的な交通均衡状態について,その成立の可否についての検証を行った.この結果,現実のドライバーは交通状況に関する十分な知識を有しておらず,現実の交通状況は交通均衡状態に達していない可能性を示した.さらに,より詳細な経路選択行動を分析するために,これまでに開発された経路選択モデルについて概説した後,プローブカーデータに対して大規模な経路選択肢集合に対しても適用可能な幾つかのモデルを適用した.この結果,ドライバーの認知する旅行時間情報は非常に精度が低く,出発後の交通状況の変化を考慮していない可能性や,複数経路の重複による経路間の相関を考慮することでモデル適合度が上昇することを示した.また,終点までの距離の変化による経路選択行動の変化を表現するための方法として,トリップ距離が短くなるほどドライバーの経路効用に対する認知誤差が小さくなると捉え,経路効用の誤差項の標準偏差がOD 間距離に比例するとしてスケールパラメータを構造化することで,トリップ長によらず同一のモデルを適用する従来の経路選択モデルと比較して大きく適合度が向上することを示した.また,これまで一般的に行われてきた経路選択行動分析は,ドライバーはOD間距離がどれほど長い状況下でも起点において終点までの詳細な経路を一度に決定するとしている.そこで,名古屋都心部の交通混雑の激しいエリアを対象として,トリップ中の意思決定発生の可能性を分析した結果,ドライバーはトリップ中の停止回数やネットワーク形状により意思決定を発生させ,また走行中に経験した速度が高いほど意思決定を発生させにくいことを示した.この結果を踏まえ,動的な経路選択行動を適切に表現可能な意思決定時点内生化モデルを開発し,名古屋都心部の主要経路に適用した.この結果,起点のみもしくは到着交差点ごとに意思決定を行うと仮定した従来の経路選択モデルが,より現実的な枠組みを背景として大きく改善可能であることを示した.最後に今後の課題として,プローブカーデータのより効率的な利用を目指したリアルタイムマップマッチングアルゴリズムの開発が必要であり,さらには経路選択に際して有用な情報を提供するための,適切な代替経路探索方法の開発が必要であること,また動的な経路選択行動を内包した交通シミュレータの開発を行い,交通全体をより最適な状態へと導くための情報提供タイミングや,交通情報提供の効果について分析を行う必要があることを述べた., 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学)(課程) 学位授与年月日:平成17年3月25日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {プローブカーデータを用いた道路ネットワーク上の交通行動分析}, year = {2005} }