{"created":"2021-03-01T06:15:51.344616+00:00","id":9104,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"a360a34c-9996-44b4-a366-6caf7574c2cd"},"_deposit":{"id":"9104","owners":[],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"9104"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009104","sets":["320:606:607"]},"author_link":["25536","25537"],"item_12_biblio_info_6":{"attribute_name":"書誌情報","attribute_value_mlt":[{"bibliographicIssueDates":{"bibliographicIssueDate":"1996-03-25","bibliographicIssueDateType":"Issued"}}]},"item_12_date_granted_64":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"1996-03-25"}]},"item_12_degree_grantor_62":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_language":"ja","subitem_degreegrantor_name":"名古屋大学"},{"subitem_degreegrantor_language":"en","subitem_degreegrantor_name":"Nagoya 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電力機器の超伝導化に関しては、超伝導発電機や超伝導ケーブルなど数多くの試作器によって活発な検討が行われてきた。近年では、酸化物超伝導体の応用も注目されている。しかしながら、通電容量や巻線化の問題などにより、超伝導技術の電力応用に関しては、現時点ではNbTiやNb_3Sn等の金属超伝導体が主体となっている。このような金属超伝導体においては、液体ヘリウム温度の冷却が不可欠である。液体ヘリウム冷凍機の運転には非常に大きな電力を必要とする。このため、その運転電力を考慮に入れる場合、超伝導電力機器は従来機器と比較して必ずしも高効率ではなくなる可能性がある。したがって、電力機器を単に超伝導化したもので置き換えるだけでは、従来機器に対するメリットを見いだせない場合があると考えられる。 超伝導ケーブルは、非常に高密度で大容量の送電能力を有する。このような送電能力は、従来技術では得難いものである。したがって、従来ケーブルを単に超伝導ケーブルでリプレースするだけではなく、その巨大な送電容量を最大限に活用できれば、超伝導ケーブルが導入された将来の電力系統の構成は、従来のものとは大きく変化する可能性があると考えられる。 そのような場合、超伝導電力機器の評価においては、機器単体レベルの視点からでは不十分であると考えられる。すなわち、個々の機器に関する技術的検討に加えて、それらが導入された電力系統の構成や運用方式にまで視点を拡大し、超伝導電力システムとして評価していくことが必要である。しかも、大容量超伝導電力システムと従来型電力系統との協調をとることにより、電力系統全体が従来系統には存在しない新しい機能を持つことになれば、超伝導電力システムの導入可能性をさらに高めることができる。 このような観点から、本論文の前半では、特に液体ヘリウム冷却の超伝導ケーブルに着目し、それが導入された次世代大都市電力システムについて、システム全体の送電損失、無効電力・電圧特性などを定量的に評価した。また、超伝導ケーブルが大容量の電力伝送を行う場合の系統構成の特徴を拡大することにより、都市中心部における瞬時電圧低下が低減し、情報機器のシステムダウン発生回数が減少する可能性があることを指摘した。 さらに、このような大容量超伝導送電に伴う種々のメリットを超伝導変圧器や超伝導限流器など他の超伝導機器を含めて考える場合、一貫超伝導送電システムの形態をとることが望ましいと考えられる。一貫超伝導送電システムとは、電力系統の基幹送変電機能を一つの大きな送変電ユニットとみなし、それを各種の超伝導電力機器によって構成するものである。本論文の後半では、このような構想の技術的可能性を実証することを目的として、一貫超伝導送電システムのプロトタイプを設計・試作し、その運転特性について実験的検討を行った。以上のように、本研究は、ソフトウェア面とハードウェア面の両方のアプローチにより、超伝導電力システムの導入可能性について評価を試みた点に特徴がある。本論文は6章からなり、各章の内容は以下の通りである。 第1章は諸論であり、次世代電力系統へ大容量地中送電システムを導入する必要性が大きくなることを示すとともに、その有力候補として超伝導ケーブルを採り上げている。また、超伝導ケーブルを基幹とする電力系統の場合、その構成は従来と大きく異なる可能性があることを示している。さらに、そのような系統構成の変化にまで視点を拡大し、超伝導電力システムを評価すべきであることを指摘するなど、本研究の目的と内容について述べている。 第2章では、超伝導ケーブルが導入された大都市電力系統全体の送電損失を算出し、従来送電線のみで構成する系統の送電損失と比較している。液体ヘリウム冷却の金属超伝導体を利用した交流超伝導ケーブルの場合、1回戦あたり数百万kW以上の送電容量が実現可能と考えられる。しかしながら、液体ヘリウム冷凍機の運転には非常に大きな電力を必要とする。この運転電力は一種の送電損失と見なすことができ、在来送電線群における送電損失と同様に取り扱うことができる。このような評価においては、超伝導ケーブルの送電損失は従来機器と比較して非常に大きくなると考えられる。一方で、在来系統に超伝導ケーブルを導入する場合、その巨大な送電容量を積極的に利用すれば、大都市周辺の大容量発電所、例えば湾岸火力発電所などで発生する電力を直接都市中心部の拠点変電所まで供給することが可能となる。これにより、従来の電力系統において長距離の外輪線を経由していた電力潮流が軽減することになる。このため、超伝導ケーブルの導入により、在来送電線群における送電損失が大幅に低減すると考えられる。したがって、超伝導ケーブルの送電損失の評価においては、単体のみを評価するのでなく、それが導入された系統の潮流分布の変化を考慮して、系統全体の送電損失の評価を行うべきである。本論文では、わが国の約1/4世紀将来の大都市地域の電力需要を想定した大都市モデル系統を対象として、超伝導ケーブルを導入する場合と在来送電線のみで構成される場合とにおいて系統全体の送電損失を比較した。ここでは、系統の最大負荷時の送電損失だけでなく、一年間の負荷変動を考慮した年間損失電力量についても比較している。さらに、系統内の電源分布が偏在化する場合や均一化する場合など様々な系統状況を想定して検討を行った。その結果、液体ヘリウム冷却の超伝導ケーブルにおける冷凍機電力の大きさは、システム全体の送電損失からみれば、通常懸念されているほど導入に支障を来すものではないことを明らかにできた。また、系統内の電源分布が偏在化する状況において、その電源と都心需要地とを超伝導ケーブルで直結すれば、系統全体の送電損失は、従来系統に対して大幅に低減することを示した。第3章では、超伝導ケーブルが導入された大都市電力系統の電圧安定性について検討を行っている。超伝導ケーブルは架空送電線と同等かそれ以上の大きさの送電容量を持ち、しかも、そのリアクタンスは地中ケーブル並に低いと考えられる。これらの超伝導ケーブルの電気的特性は電力系統の電圧安定性に対して有効に作用すると考えられる。そこで、1電源・1負荷・1送電線の簡単なモデル系統を用いて、超伝導ケーブルが導入された系統の無効電力・電圧特性について検討した。数百万kW程度の送電においては、超伝導ケーブルのインダクタンスによる無効電力損失とキャパシタンスによる無効電力供給とが同程度になる。このため、超伝導ケーブルは単に大容量の有効電力を伝送するだけでなく、無効電力をも高効率に伝送できることがわかった。さらに、超伝導ケーブルの導入を想定した大都市モデル系統において、急激な負荷増加時における送電線の1回戦脱落を想定し、母線電圧の時系列解析を行った。ここでは、超伝導ケーブルの導入形態として次の2ケースを想定した。1.超伝導ケーブルを都市中心部の過密需要地域に直接導入する場合。2.超伝導ケーブルを近郊の大容量発電所と外輪線とを結ぶルートへ導入する場合。前者の場合には、系統全体の潮流分布が改善されるため、在来送電線部分における無効電力損失が減少し、電圧安定性が向上することがわかった。また、後者の場合には、発電所の無効電力出力を高効率に外輪線まで伝送できる。このため、急激な負担増加時においても系統全体の無効電力供給が不足することなく、電圧安定性が向上することを指摘できた。 第4章では、大都市電力系統への超伝導ケーブル導入によって得られるメリットとして、架空送電線の地絡故障に起因する瞬時電圧低下が大都市中心部において軽減される効果について述べている。地絡故障は主として架空送電線への雷撃によって生じる。大容量超伝導送電を基幹とする場合、系統構成上の配慮を払うことにより、発電端から都心部の送電系統までを地中系統下で適用することができる。すなわち、超伝導ケーブルのような大容量の地中送電路の導入により、架空送電路と地中送電路との分離を意識した系統構成が可能となる。このような系統構成においては、送端発電所から受端変電所までを自然界から完全に隔絶できる。さらに、周辺の架空送電線系統と都心部の地中ケーブル系統との電気的距離が長くなるため、瞬時電圧低下が都心において軽減される。このような瞬時電圧低下の軽減効果を送電線1線地絡故障時の対称分回路を用いて原理的に明らかにした。また、実際の電力系統の構成に即した大都市モデル系統において、上述の系統構成が実現できることを示した。そのモデル系統において10ヶ所の地絡故障点を想定し、送電線地絡故障時の母線電圧の低下量を対称座標法を用いて計算した。その結果、従来の系統構成と比較して、都市中心部における瞬時電圧低下量が大幅に低下することを定量的に示すことができた。さらに、このような効果をコンピュータ機器のシステムダウン発生の減少回数として評価し、超伝導ケーブル導入による社会的なメリットとして計上した。 第5章では、超伝導電力機器による大電力の一括送電の実現可能性を実証するために筆者らが設計・試作した「一貫超伝導送電システム:Prospective Power Transmission Model System Integrated under Superconducting Environment (通称:PROMISE)」における冷却および課電・通電特性について示している。PROMISEは、超伝導変圧器(設計目標値:周波数60Hz、電圧6/3kV、容量1,500kVA)、超伝導限流器(設計目標値:電圧6kV、限流開始電流値300A)および超伝導模擬ケーブル(設計目標値:長さ5m、電圧6kV、電流250A)を一つのクライオスタット内の液体ヘリウム中に統合するものである。クライオスタットの液体ヘリウム槽は854lであり、試作器としては大規模なものである。したがって、PROMISEにおいては、従来の小型試作器と比較して、より実際に即した特性の評価が可能である。PROMISEの各機器は液体ヘリウムを主な電気絶縁媒体としているが、無負荷試験の結果、液体ヘリウム中において目標電圧6kVの絶縁耐力を確認できた。また、電圧印加と電流通電とをそれぞれ別電源から行う合成試験においては、PROMISEの送電容量6kV – 1,000kVAを等価的に明らかにすることができた。さらに、実際の負荷に対して3.9kV – 460kVAの電力伝送にも成功した。本章では、これらの各試験結果について示している。また、クライオスタットへの侵入熱、超伝導巻線の交流損失および変圧器鉄損を実測および解析によって明らかにし、PROMISEの送電損失を評価している。その結果、液体ヘリウム冷凍機の運転電力を考慮に入れると、現在の送電損失はPROMISEの1,000kVA級の送電容量に対して13.7%に相当することがわかった。さらに、この値は今後の技術開発によって0.35%程度にまで低減できる可能性があることを指摘した。第6章は総括であり、本論文の内容をまとめるとともに、超伝導送電システムの今後の課題について述べている。","subitem_description_language":"ja","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_12_description_5":{"attribute_name":"内容記述","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (課程) 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