@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009417, author = {石原, 一彰 and Ishihara, Kazuaki}, month = {Mar}, note = {高度な立体選択性を要求される現在の有機合成化学において、実用性と一般性を兼ね備えた立体化学制御法の開発は今日の中心課題である。この観点から、有機金属反応剤を駆使すればカルボニル基の保護基としても合成等価体としても使い分け可能なアセタールに注目した。そこで、アセタールの特性を様々な有機反応の立体化学制御にうまく利用し、高度な立体選択的反応の開発及びその反応機構についての詳細な研究を行ったのでその成果について述べる。1.キラルアセタールの立体選択的還元型開裂反応―α、β-アルキニルケトンの不斉還元― アセタールの求核置換反応はカルボニル基の求核付加の合成等価型反応と言える。そこで、不斉水酸基の合成等価体としてキラルアセタールを用いて立体化学を制御するというキラルシントン法の概念に基づき、光学活性2,4-ペンタンジオールとα、β-アルキニルケトンから誘導したキラルアセタールの立体選択的還元型開裂反応を開発した。このキラルアセタールにアルミニウムヒドリト反応剤(DIBAH、${\rm Br_{2}AlH}$)を作用させるとR体のα、β-アルキニルアルコールが高い選択性でしかも高収率で得られた。一方、Lewis酸(${\rm TiCl_{4}}$)と金属ヒドリト(${\rm Et_{3}SiH}$)反応剤を組み合わせて用いるとS体のα、β-アルキニルアルコールが得られた。2.双環式アセタールの立体選択的還元型開裂反応―立体特異的なヘテロ環骨格構築の新手法― 酸素を含むヘテロ環骨格は天然に広く分布しているばかりかポリエーテル系抗生物質の主要な骨格を構築する等、多くの合成的興味が持たれている。双環式アセタールはその特異な構造から環状エーテルの出発原料になると考えられる。そこで、双環式アセタールに先の反応剤系を用いた立体選択的還元型反応の研究を行い、トランス体の環状エーテルとシス体の環状エーテルをそれぞれ作り分けることに成功した。3.アセタールテンプレートの立体効果によるジアステレオ選択的アルドール型反応 アルドール反応のジアステレオ選択性はアルデヒドとエノラート反応剤の面調和によって決定されることが既に知られている。しかしながら、アセタールを用いたアルドール型反応のジアステレオ選択性についてはほとんど研究されていない。そこで、Lewis酸存在下、アセタールとシリルエノールエーテルのアルドール型反応に注目し、アセタール基の立体効果によりアルドール型反応のジアステレオ選択性を制御することを検討した。その結果、アセタールの立体構造の違いだけでジアステレオ選択性が全く変化することがわかった。4.ピナコールのアセタールを用いたジアステレオ選択的アルドール型反応 Lewis酸存在下、α-キラルアルデヒドとエノールシリルエーテルの反応では、Cram選択性は高いがシンプルジアステレオ選択性は一般的に低い。そこで、3の研究で得られた知見を基に、2-フェニルプロパナールのカルボニル基を非常にかさ高いピナコールのアセタール基に変換し、四塩化チタン存在下、シリルエノールエーテルと反応を行った。その結果、99%以上のCram選択性で2つのエリトロ付加体が得られ、シンプルジアステレオ選択性も期待どうり95:5に向上した。またこの反応は後処理前に反応温度を0℃に上げることにより、立体選択性を損なうことなくピナコール転位が起こり、アルドール体が直接得られた。5.アセタールのアルドール型求核置換反応のメカニズム アセタールの求核置換反応ではLewis酸と有機珪素反応剤の組み合わせのように通常立体反転で反応が進行する場合は${\rm S_{\rm N}}1$と${\rm S_{\rm N}}2$の両方のメカニズムが考えられ曖昧になっている。そこで、アセタールのアルドール型反応に注目し、求核置換反応のメカニズムに関する詳細な研究を行なった。その結果、環状アセタールの反応の場合はオキソカルベニウムイオン対経由の${\rm S_{\rm N}}1$であることがわかった。一方、非環状アセタールの反応は全般的にはフリーオキソカルベニウムイオンもしくはイオン対経由の${\rm S_{\rm N}}1$の傾向が強く、ただし1級アルコールのアセタールに限っては${\rm S_{\rm N}}2$が一部起こっているらしいことがわかった。6.ヒドロキシビニルエーテルの立体特異的分子内環化反応の開発及び天然物合成への応用 既に、当研究室では光学活性ペンタンジオールのアセタールをトリイソブチルアルミニウムで脱プロトン化することにより、ラセミ体のケトンの速度論的分割及びメソ体ケトンの非対称化に成功している。そこで、この方法により得られたヒドロキシビニルエーテルを過剰のN,N-ジイソプロピルエチルアミン存在下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を用いて立体特異的に分子内環化させる反応を開発した。生成した二環性ヘミアセタールは容易に大環状ラクトンに導くことができる。またこの手法をエキザルトリド、(+)-レシフェイオリド、(-)-ラードリュアの全合成を行なった。7.キラルアセタールの高立体選択的アルキル化による開裂反応 光学活性ペンタンジオールのアセタールに、トリアルキルアルミニウムを用いてアルキル化反応を行ってもアルミニウムヒドリド反応剤による還元型開裂反応のような高い選択性は得られない。ところが、トリアルキルアルミニウムとペンタフルオロフェノールの1:1の複合反応剤を用いると反応性、選択性共に向上した。8.キラルアセタールの立体選択的還元型反応―Meerwein-Ponndorf-Verley型還元―光学活性ペンタンジオールのアセタールにジエチルアルミニウムフルオリドとペンタフルオロフェノールの1:2の複合反応剤を作用させることにより立体選択的にヒドリドが転位しβ-アルコキシケトンが得られた。生成したケトンは塩基処理するだけで光学活性アルコールに変換できる。9.キラルアセタールをテンプレートとして用いた不斉Grignard反応剤の開発 2-ハロベンズアルデヒドと光学活性ペンタンジオールから誘導したキラルアセタールにtert-ブチルリチウム、続いてマグネシウムブロミドを加えることにより不斉Grignard反応剤を調製した。この反応剤を種々のカルボニル化合物との付加反応に試したところ、芳香族アルデヒドに対し高い立体選択性を示した。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:工学博士 (課程) 学位授与年月日:平成3年3月25日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {Studies on Stereoselective Reactions of Acetals}, year = {1991} }