@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009420, author = {石原, 卓 and Ishihara, Takashi}, month = {Mar}, note = {自然界には、物理量が非常に薄い領域で激しく変化する現象が多数存在する。衝撃波や火炎面などはその例である。厚さ無限小の極限でそれらの領域は物理量の不連続面とみなすことが出来る。そのような面のダイナミクスの理解は、これらの現象の理解のために重要である。しかしながら一般に、自由界面の運動は非線形で、解析は困難であることが知られている。渦面は、渦度が局在する現象(物を過ぎる高速流れ、混合層のある流れなど)の数学的モデルである。面の上下で流体の速度の接線成分が不連続となる。渦面は、流れ方向の摂動に対して不安定であり、その摂動の増幅率が摂動の波長の逆数に比例することが知られている。またこの不安定性に起因して渦巻状の空間パターンを形成することも渦面の重要な特徴として知られている。このような空間パターンは、現象が局在しているため、数値的差分法ではうまく捕らえることができない。そこで、局在する渦のみに着目するという方法が用いられる。流れが2次元的な場合について、1939年にローゼンヘッドは、渦面を点の集まりとして近似した数値計算(渦点法)を最初に行った。その計算により、渦面の巻き上がりが確認された。しかし、渦点法による渦面の近似は点を細かくすると、予想に反して数値解の挙動が不規則になることがバーコフ等により1956年に指摘された。一方、解析的には1979年にムーアにより、初期に滑らかな渦面が有限時間Tcで自発的に滑らかさを失い、面の解析性が破れることが示された。この結果は、後に数値計算による研究等で確認された。その中のひとつである、1986年のクラスニーの渦点法による渦面の特異性の研究によって、上述の数値解の不規則な挙動の原因が明らかにされ、渦点法は渦面に特異性が現れる時刻Tc以降の計算には使えないことが示された。また、Tc以降の渦面巻き上がりの計算は、2次元的渦面の近似方程式を解くことにより可能であることも、クラスニーにより1986年に示された。この計算法は、伴流や境界のある流れ等、現実の流れをよく再現できることも後に明かにされた。以上のように、2次元的渦面については、すでに多くの知見が得られ、今や応用の段階である。しかし、実在する流れの多くは3次元的であること、また3次元では渦度の伸びがあり、3次元的な渦面は2次元的な渦面とは本質的に異なるダイナミクスに支配されていることを考慮すれば、3次元的渦面の研究の必要性は自明である。しかしながら、3次元的な渦面の運動の研究は、その解析の困難さの理由で、2次元的なものに比べ、ほとんどなされていない。また、渦面の発展における3次元性または渦度の伸びの役割についても、よくわかっていない。近年、金田、カフリッシュは、3次元的な渦面方程式のラグランジュ的表記に成功した。その表式では、渦度の発展が簡潔に表現され、解析及び数値計算が著しく簡単化される。本研究は、この3次元的な発展が2次元的なものと異なる点を明らかにすることを目的として行った。本論文第一部では、渦面の3次元性がその発展に与える影響を理解するための第一歩として、ムーアの解析を3次元的流れに拡張し、3次元的渦面に現れる特異性を解析的に捕らえることを目的としている。解析的に解くために、問題を弱非線形な条件に限ったが、3次元的な渦面の特徴を見いだすことができた。なお、このような渦面の3次元的解析は、これまでに全くなされていない新しい成果である。次に、本論文第二部では、上記制約を外した強非線形な場合において渦面の3次元性がどう反映されるかを見るために、3次元的渦面の数値計算を行った。数値計算には、2次元で成功したクラスニーの方法を3次元に応用した。これにより3次元的な渦面の巻き上がりを見ることができた。第一部で問題にした渦面に現れる特異性と渦面の巻き上がりは密接に関係している。そこで、ここでは特に渦面の渦度密度の時間発展に着目し、渦度集中領域の3次元的構造を観察した。第一部 1979年のムーアの解析では、平らで、渦度分布が一様な渦面(定常解)に対して流れ方向に単波長の周期的な摂動を与え、その発展を扱っている。渦面は、ラグランジュ的局面座標を基にフーリエ級数として表現され、フーリエ係数の発展方程式は、2次元的渦面方程式のラグランジュ表記から導かれている。ムーアは、フーリエ係数の時間依存性の漸近的な振る舞いを調べた。その結果、初期には、波数の増大につれて指数関数的に減小していたフーリエ係数が、ある有限時刻で代数関数的にしか減小しなくなり、その代数的減少の指数が-5/2であることが示された。このことはフーリエ級数が解析的でなくなることを意味し、渦面の曲率に不連続、渦度密度にカスプが生じる場所があることを意味する。このように、特異性は巾指数で特徴付けられる。その発生時刻及び場所が決定できることも重要である。本研究は、以上の解析の3次元流れへの拡張として、流れと垂直な方向にも摂動を加え、その3次元的発展を考えた。渦面を2つのラグランジュ座標を基に2重フーリエ級数により表現し、そのフーリエ係数の発展方程式を3次元的渦面方程式から導いた。導かれた方程式より、フーリエ係数の漸近形を調べることのできる常微分方程式を導出した。渦面の特異性を見るためには、この常微分方程式の解の時刻が大きいところでの振る舞いが重要となる。そこで、その解の十分時刻がたったところでの漸近形を帰納的に求めた。nを流れ方向、mを流れ垂直方向の波数とし、各フーリエ係数のモードを(n、m)と書く。上述の解の漸近形は、流れと垂直な方向に加えた摂動が十分小さいとき、mの小さなフーリエ係数が重要であることを示唆する。そこで、(n、0)、(n、1)モード、ここで(n=±1、±2、・・・)、について、解の漸近形における時刻大での主要項を決定する漸化式を求めた。その解析の結果、どちらのモードもムーアの予告する特異性発生時刻Tcに、nについて代数巾になり、巾指数は、(n、0)モードについてはムーアの結果と同じく-5/2、(n、1)モードは-3/2であることがわかった。また、各モードのTcでの大きさの見積りから、以下のことが結論できた。[1]3次元的摂動の下でも、特異性発生時刻における渦面の形は、主にムーアにより求められた、2次元的渦面に現れる特異性によって支配されている。[2]渦面の3次元ダイナミクスを反映して、渦の伸びを表すベクトルに特異性が現れる。どちらも今回の3次元的解析により初めてわかった事実である。得られた特異性は、3次元流体中に現れる渦巻上の空間パターンを決定する際の基礎になると期待される。第二部 1986年にクラスニーは、2次元的渦面の方程式を正則化した近似方程式を数値的に解くことにより、初期に単波長の摂動を受けた、渦度分布が一定の平らな渦面が、周期的になめらかに巻き上がることを示した。その近似方程式はスムージングパラメタにより特徴付けられる。スムージングパラメタを0にすると厳密な渦面の方程式となること、0に近づける極限で、漸近的な渦面の巻き上がりの形があることが重要である。ここでは、この2次元的な巻き上がりをみせる周期的な渦面は、流れ方向に垂直な方向に単波長の摂動を加えたとき、どの様な変化が起きるかを明らかにすることを目的として、3次元的渦面の数値計算を行った。数値計算では、クラスニーの計算の3次元への一般化として、3次元的渦面方程式の近似方程式を考えた。その近似方程式もスムージングパラメタによって特徴付けされる。2重周期境界条件の取扱いには、固体統計で良く知られているエバルトの方法を用いた。離散化はラグランジュ座標空間で行い、時間発展は4次のルンゲクッタ法を用いた。計算は、同じ初期値の下、スムージングパラメターの2つの値に対して行った。どちらの値の場合でも、初期にはまず渦線がある領域に集中し、そこを中心として渦面が巻き上がることがわかった。渦面の巻き上がる場所は、ムーアの解析では渦面に特異性が現れる場所であり、渦度密度にカスプを生じることが特徴であった。渦度密度は渦線の粗密を表し、渦度集中領域の構造を見るのに適している。渦度密度の時間発展に着目して、渦度集中領域(渦面の巻き上がりの中心)の発展を見た結果、以下の事実を見いだした。[1]渦度集中が3次元局所的に起き(渦度集中領域の中で、渦度ベクトルが流れの方向と垂直になっている所)、流れに垂直な方向に広がってコアを形成していく。[2]コア形成に複数の渦線が部分的に参加していること。[3]渦度の局在化がスムージングパラメタが小さいとき顕著であること。以上の発見は、例えば、3次元乱流中で渦度集中領域が局在することのひとつの説明を与える。第一部での解析、及び第二部での数値計算をさらに進め、より一般的な流れに適用し、乱流中に存在する渦構造を解明することが今後の課題である。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (課程) 学位授与年月日:平成6年3月25日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {Dynamics of Vortex Sheet in Three-Dimensional Flow}, year = {1994} }