@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009584, author = {植田, 明照}, month = {Feb}, note = {車両、エレベータや各種産業分野の機械装置、ポンプ、ブロワなどの駆動には電動機が多く用いられている。車両には、直流電動機が従来より用いられてきている。直流電動機は、ブラシ、整流子の摩耗部分があって保守が必要であり、またフラッシオーバが生じるという問題を有するにもかかわらず用いられているのは、これに勝る方式が開発できなかったためと言えよう。すなわち、直流電動機に代わる交流電動機を制御するには、大容量のインバータを車載可能なように小型化しなければならないが、従来、車両を制御するのに十分な性能のデバイスを実現する事が難しかったためである。高層ビル用高速エレベータには順変換装置で直流電動機を制御する方式が、また、中・低速のエレベータには交流(誘導)電動機の一次電圧制御が用いられてきた。これらの方式は、電源力率や効率が悪いなどの短所があり、改善が望まれてきた。また、他の産業用電動機駆動システムにおいても同様の状況にある。電動機駆動用の電力変換装置に用いられる電力用半導体デバイスとしては、主としてサイリスタが用いられている。サイリスタはゲー卜信号により導通関始時点(点弧)を制御できるが、導通終了(消弧)はゲート信号では制御できない。このため、サイリスタを用いた電力変換装置では、インバータの出力周波数を50Hz程度以上にする事は難しい。また消弧のための転流回路が必要であるため、その構成要素であるコンデンサ、リアクトル、転流補助サイリスタなどにより装置が大型化する。また出力波形の高調波成分が大きい。さらに、交流電源側変換装置にサイリスタを用いると、位相制御のために電源力率(電源からみた入力カ率)が低下することや電源高調波(入力電流の高調波成分)が大きいなどの問題がある。すなわち、従来のサイリスタを用いた電力変換装置では、交流の一サイクルに一回の動作を基準とする、いわゆる方形波型が専らで、これはデバイスの性能の限界から来る、やむを得ない制約であった。しかし、このような方法では、電源力率の向上や高調波の低減は困難である。最近、電力変換装置を用いた電動機駆動システムが多く用いられるのに伴い、環境保護上の理由や省エネルギーの観点から、電源力率の向上や高調波の低減の要求は非常に強くなってきている。ところで、最近になって自己消弧能力のあるゲートターンオフサイリスタ(GTOサイリスタ)のデバイス技術が著しく進歩し、大容量、高性能のデバイスの制作が可能になった。電力変換装置にGTOサイリスタを用いると、転流回路が省略できるため、装置の小型化、軽量化が可能となる。また、スイッチング周波数を高くできるため、出力電圧・電流波形の改善効果が期待できる。さらに、電源側変換装置にGTOサイリスタを用いると、電源力率の改善や電源高調波の低減が期待できる。このような観点から、車両駆動用や各種産業用途における電力変換装置は、今後GTOサイリスタを応用した新しい型のものが適用されていくものと考えられるので、これらの用途に適した電力変換装置の開発が不可欠である。しかし、その実現のためには多くの技術課題がある。主要な課題は、GTOサイリスタのデバイス利用技術として、ゲート駆動回路、スナバ回路、デバイス並列接続技術など、また、変換装置制御技術としてのパルス幅変調(PWM)制御技術、電圧・電流制御技術などの開発である。これらの技術課題を解決して、車両駆動用大容量電圧形GTOインバータ、誘導電動機駆動用正弦波出力電流形GTOインバータ、PWM制御GTOコンバータ(順変換装置)を新たに開発した。第1章は緒論で、車両駆動用や各種産業分野における電力変換装置の国内外の状況、ならびにそれらを踏まえた本研究の動機と目的について述べる。第2章は大容量電圧形GTOインバータの開発について述べる。はじめに、電車駆動においてGTOインバータの開発が必要とされた経緯について、小型地下鉄計画の概要にふれ、次に、本応用に関して開発された技術について述べる。まず、大容量GTOサイリスタの動特性を回路技術との関係において評価し、適用上の問題点を摘出してその解決をはかった。特に、ターンオフ動作の解明において回路インダクタンスの影響を明らかにし、インダクタンスを低減することでGTOサイリスタのターンオフ動作責務を軽減し、安全にターンオフさせた。また、GTOサイリスタを並列接続して用いる場合について、電流平衡用リアクトルの漏れインダクタンスの影響とその低減法を明らかにした。さらに、GTOインバータを応用した電車制御方式について述べ、また、GTOインバータの実用化において重要な、過電流時の保護方式について述べる。最後に、以上を総合した性能を検証するために、等価試験および実車走行試験を実施し、目標性能が達成されていることを確認した結果について述べる。第3章は正弦波出力電流形インバータの開発について述べる。はじめに、従来の電動機駆動用インバータの問題点と新たに自己消弧形デバイスを適用した高性能のインバータが要求されるに至った状況について述べる。次に、従来難しいとされていた電流形インバータに自己消孤形デバイスとPWM制御を適用し、新たに開発したPWM制御電流形GTOインバータで、正弦波出力を得るための、基本的な主回路構成、制御方式について述べる。高調波成分が極めて少ない正弦波出力を得るための、PWMのパルス数や変調率の決め方、さらにそのための具体的な制御方法および回路を明らかにする。また、電流形インバータ特有のスパイク電圧が本方式でも生じる事を述べ、その特性を解明し、その低減方法について明らかにする。これらの結果、出力波形が正弦波化できることを解析と実験の両面から示し、さらに本方式のインバータによる電動機駆動特性がすぐれていることを実証した実験結果を示す。第4章はPWM制御GTOコンバータの開発について述べる。はじめに、直流電動機制御用変換装置の状況と、高力率コンバータが必要とされるようになった背景について述べる。次に、3相ブリッジ結線の6アームのサイリスタのうち3アームをGTOサイリスタに置き換えたコンバータで、等パルス幅制御を行って、高力率で、かつ直流出力電圧の制御性が良いコンバータを開発した結果について述べる。特に、GTOサイリスタのターンオフ時に過電圧が発生する現象があり、その発生原因を解明し、これを抑制する制御法を明らかにした。開発したコンバータの特性について実験した結果を示し、また、エレベータ制御に応用した結果、電源力率が改善され、電源設備容量や消費電力低減の効果が大きいことが確認された。つづいてPWM制御正弦波入力電流形GTOコンバータについて述べる。インバータとの組み合わせ運転用や直流電動機制御用として、電源力率改善のみでなく、電源高調波が少ない高性能コンバータが必要とされる状況について述べ、次に、PWMパルスの発生法により、入力電流の高調波を低減し、波形をほぼ正弦波にするとともに、出力電圧制御と入力電流波形の正弦波化を両立する制御法を開発した結果について述べる。このような入力電流波形の正弦波化を、きわめて小さい入力フィルタ(コンデンサ)で達成可能とするとともに、コンバータの特性に大きな影響を与える電源側インピーダンスとの関係を明らかにした。さらに、このコンバータを前述の正弦波出力電流形インバータと組み合わせて、電流形インバータシステムとして特性を評価し、その結果、入出力いずれの波形も正弦波化でき、交流電動機の四象限運転に用いるのに好適なインバータシステムであることを述べる。第5章は、以上の研究を総括して結論としてとりまとめている。以上述べた開発の成果は、現在実用化が進みつつある。すなわち、第2章の電圧形GTOインバータは、私鉄および地下鉄の十数路線において、合計約120両が運行中であり、その良好な加減速特性、小型軽量の利点、および直流機と比べて保守が軽減されることなどが極めて好評を得ている。また、第3章と第4章で述べた電流形インバータとコンバータは、両者を組み合わせたインバータシステムとして高速エレベータ制御に応用され、現在約20台が稼働中である。この方式は、入力および出力の電圧、電流が正弦波化できるため、エレベータの騒音低減、乗り心地向上に好都合であり、また電源力率が良く、電源高調波が小さいなど多くの利点があり、好評を得ている。以上のようにこれらの方式はまだ実用化の初期段階ではあるが、その高性能ゆえにきわめて好評であり、今後ますます応用が拡がって行くものと期待されている。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:工学博士 (論文) 学位授与年月日:平成1年2月7日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {GTOサイリスタ応用電力変換装置の開発に関する研究}, year = {1989} }