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微粒子の研究にメスバウアー効果が用いられるようになったのは,1960年代後半からであるが,それらの内,物理的な研究の大部分は格子振動と磁性に関する研究である. 本研究においても,この2つの内容を含んでいる. 微粒子の格子振動については,初期のX線回折の研究や理論的研究から,超微粒子はバルクに比べてかなり柔らかい(ソフト化)と予想されていた. 多くのメスバウアー効果による研究からも2,3の例外を除くと,微粒子の格子振動のソフト化を支持する結果が得られた. これらのメスバウアー効果の結果には,微粒子の格子振動の他,微粒子全体としての振動が影響していると指摘する人もあったが,この指摘はあまり重要視されていなかった. そこで,本研究は微粒子全体としての振動を十分に考慮した実験をすることにより,微粒子がソフト化しているかどうかを明らかにする目的で始めた. それと同時に,微粒子全体としての振動がメスバウアー効果に及ばす影響についても調べた. その後,金属微粒子焼結体と液体ヘリウム間のカピッツア抵抗の問題に関して,微粒子全体としての振動の重要性が指摘されたため,金属微粒子焼結体の振動の研究をメスバウアー効果を用いて行なった. 微粒子の格子振動と全体としての振動については,それぞれ論文の第Ⅲ章と第Ⅳ章に書いた. 微粒子の磁性に関する研究は,強磁性微粒子やフェリ磁性微粒子が磁気記録媒体として広く用いられるようになったこともあり,応用を中心として盛んに行われている. また,基礎的な研究も,超常磁性の研究が1949年にNéelにより始められてから注目されるようになった. 超常磁性の測定手段として,メスバウアー効果は最も適している. というのは,超常磁性による吸収線はスペクトルの中心に位置する一本のローレンツ形曲線かあるいは二重線として現れるからである. メスバウアー効果による研究から,超常磁性になる前段階として集団磁気励起による内部磁場の減少があることがわかってきた. ただし,超常磁性と集団磁気励起に関する初期の理論は,孤立した微粒子に対するものであった. ところが,鉄微粒子の内部磁場の温度変化,鉄及び鉄微粒子の表面酸化層のメスバウアースペクトル,互いに接触した酸化鉄微粒子のメスバウアースペクトルなどのように,孤立した微粒子に対する超常磁性と集団磁気励起の理論では説明がつかないことが多くでてきた. 本研究の磁性に関する研究は,これらのことがらを解明することを目的として行なった. 微粒子の磁性については論文の第Ⅴ章に書いた. 以下に簡単に各章の内容をまとめる. 各章の内容 第Ⅰ章は微粒子に関する研究の歴史とメスバウアー効果で何がわかるかについて述べた章である. 第Ⅱ章は微粒子について一般的な作成方法と本研究で用いた方法を述べた章である. 本研究では(γ-Fe_20_3微粒子以外は)主にガス蒸発法を用いた. 第Ⅲ章第1節では,これまでに行われた微粒子の格子振動に関する理論的研究やX線回折による研究などについて述べた.第2節では,ガス蒸発法で作った鉄微粒子(粒径130Å,66Å)がソフト化しているかどうかをメスバウアー効果で調べた結果を述べた.鉄微粒子の表面酸化層とそれに接するα鉄表面の一原子層程度を除いた部分の無反跳分率とその温度変化は,微粒子の振動を抑えてしまえばバルクの鉄の値と異ならない. 従って,鉄微粒子の表面酸化層とそれに接するα鉄表面の一原子層程度を除いた部分はソフト化していないと結論できる. 第Ⅳ章第1節では,微粒子の振動がメスバウアー効果に及ぼす影響を考察し,様々な密度に圧縮した鉄微粒子集合体について実験を行った. その結果,次のことが明らかになった. 微粒子の振動数がメスバウアー核の第一励起準位の緩和時間の逆数と同じ程度の大きさの場合には,振動がないときに比べてスペクトルの吸収線の幅が広くなるがその面積強度は変わらない. また,微粒子の振動数がこの緩和時間の逆数よりはるかに高い場合には,面積強度は小さくなるがスペクトルの吸収線の幅は変わらない. 第2節では,金微粒子と金合金微粒子焼結体にスペクトルの吸収線の幅が広くなるがその面積強度は変わらないような振動モードを見出したことを述べた. この振動数は,前節での考察により,^197Auの第一励起準位の緩和時間の逆数(5.29×10^8Hz)と同じ程度の大きさであると結論できる. 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以上の結果から,微粒子をどの程度小さくするとその本質的な物性がバルクの物性と異なってくるかという問題に対して,ある程度の答えが得られた. 本研究で行なった最も小さい微粒子は,格子振動に関しては平均粒径66Åの鉄微粒子であり,磁性に関しては粒径20~30Åのγ-Fe_20_3微粒子である. これらについての実験結果は,格子振動と磁性に関する限り,微粒子の物性は表面を除いてバルクの物性と本質的には異なっていないということを示している. 例えば,微粒子とバルクの無反跳分率の値の違いのすべては,微粒子全体としての振動に原因があると考えられるし,磁気的性質(又はメスバウアースペクトルの形)の違いに関しても,集団磁気励起と超常磁性を考えることにより,すべて説明がつく. 表面効果は表面第一層目だけか,多くても二層目迄で,それより内部には及ばないと考えられる. しかし,実際に作成される微粒子の大部分は,周りの微粒子や他の物質と相互作用しているから,微粒子の全体としての振動や磁化方向の揺らぎ,そして,微粒子の集合体としての性質もまた重要である. これらのことに関しては,微粒子全体としての熱的な振動モードや,集団磁気励起(磁化方向の熱的揺らぎ)が重要であることがわかった.", "subitem_description_language": "ja", "subitem_description_type": "Abstract"}]}, "item_12_description_5": {"attribute_name": "内容記述", "attribute_value_mlt": [{"subitem_description": "名古屋大学博士学位論文 学位の種類:工学博士 (論文) 学位授与年月日:平成2年7月6日", "subitem_description_language": "ja", "subitem_description_type": "Other"}]}, "item_12_dissertation_number_65": {"attribute_name": "学位授与番号", "attribute_value_mlt": [{"subitem_dissertationnumber": "乙第3806号"}]}, "item_12_identifier_60": 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メスバウア-効果による微粒子及びその集合体の研究
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2009-04-01 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | メスバウア-効果による微粒子及びその集合体の研究 | |||||
言語 | ja | |||||
著者 |
田村, 一郎
× 田村, 一郎 |
|||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | open access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||
抄録 | ||||||
内容記述 | 微粒子の研究は戦後,ガス蒸発法による微粒子の作成方法が確立したことにより盛んになった. 微粒子に対する素朴な興味は,どの程度の大きさ,即ち微粒子を構成する原子数がどの程度あれば固体としての性質が現われるか,また,それは構成原子数が多くなるに従って,どのように変化して固体の物性となるかということにある. 例えば,金属原子が数個集まっても金属ではないが,数十万個集まれば明かに金属である. 微粒子の大きさの定義は決まっていないが,本研究で対象とするのは,粒径数10Åから数1000Åの微粒子であり,超微粒子とも呼ばれている. 即ち,分子として考えるには大きすぎ,固体(バルク)として考えるには小さすぎる大きさである. 一方,メスバウアー効果で直接得られる情報は,核(メスバウアー核)の位置での電場勾配,電子密度,内部磁場,そして核の重心の振動(格子振動)の平均2乗振幅である. これらの情報の内,内部磁場と格子振動の平均2乗振幅については,それぞれNMRとX線回折からも得られる. しかし,メスバウアー効果では,他の実験手段と違い,試料にメスバウアー核がなくてはならない. このことは,測定できる試料が限られるという欠点がある反面,試料のある部分(例えば表面)だけにメスバウアー核を入れることにより,その部分のみの情報が得られるという利点がある. そのため,表面(界面)磁性の研究に用いられることが多い. また,物性物理学の他,生化学,分析化学,核化学,化学反応などの分野の研究に広く用いられている. 微粒子の研究にメスバウアー効果が用いられるようになったのは,1960年代後半からであるが,それらの内,物理的な研究の大部分は格子振動と磁性に関する研究である. 本研究においても,この2つの内容を含んでいる. 微粒子の格子振動については,初期のX線回折の研究や理論的研究から,超微粒子はバルクに比べてかなり柔らかい(ソフト化)と予想されていた. 多くのメスバウアー効果による研究からも2,3の例外を除くと,微粒子の格子振動のソフト化を支持する結果が得られた. これらのメスバウアー効果の結果には,微粒子の格子振動の他,微粒子全体としての振動が影響していると指摘する人もあったが,この指摘はあまり重要視されていなかった. そこで,本研究は微粒子全体としての振動を十分に考慮した実験をすることにより,微粒子がソフト化しているかどうかを明らかにする目的で始めた. それと同時に,微粒子全体としての振動がメスバウアー効果に及ばす影響についても調べた. その後,金属微粒子焼結体と液体ヘリウム間のカピッツア抵抗の問題に関して,微粒子全体としての振動の重要性が指摘されたため,金属微粒子焼結体の振動の研究をメスバウアー効果を用いて行なった. 微粒子の格子振動と全体としての振動については,それぞれ論文の第Ⅲ章と第Ⅳ章に書いた. 微粒子の磁性に関する研究は,強磁性微粒子やフェリ磁性微粒子が磁気記録媒体として広く用いられるようになったこともあり,応用を中心として盛んに行われている. また,基礎的な研究も,超常磁性の研究が1949年にNéelにより始められてから注目されるようになった. 超常磁性の測定手段として,メスバウアー効果は最も適している. というのは,超常磁性による吸収線はスペクトルの中心に位置する一本のローレンツ形曲線かあるいは二重線として現れるからである. メスバウアー効果による研究から,超常磁性になる前段階として集団磁気励起による内部磁場の減少があることがわかってきた. ただし,超常磁性と集団磁気励起に関する初期の理論は,孤立した微粒子に対するものであった. ところが,鉄微粒子の内部磁場の温度変化,鉄及び鉄微粒子の表面酸化層のメスバウアースペクトル,互いに接触した酸化鉄微粒子のメスバウアースペクトルなどのように,孤立した微粒子に対する超常磁性と集団磁気励起の理論では説明がつかないことが多くでてきた. 本研究の磁性に関する研究は,これらのことがらを解明することを目的として行なった. 微粒子の磁性については論文の第Ⅴ章に書いた. 以下に簡単に各章の内容をまとめる. 各章の内容 第Ⅰ章は微粒子に関する研究の歴史とメスバウアー効果で何がわかるかについて述べた章である. 第Ⅱ章は微粒子について一般的な作成方法と本研究で用いた方法を述べた章である. 本研究では(γ-Fe_20_3微粒子以外は)主にガス蒸発法を用いた. 第Ⅲ章第1節では,これまでに行われた微粒子の格子振動に関する理論的研究やX線回折による研究などについて述べた.第2節では,ガス蒸発法で作った鉄微粒子(粒径130Å,66Å)がソフト化しているかどうかをメスバウアー効果で調べた結果を述べた.鉄微粒子の表面酸化層とそれに接するα鉄表面の一原子層程度を除いた部分の無反跳分率とその温度変化は,微粒子の振動を抑えてしまえばバルクの鉄の値と異ならない. 従って,鉄微粒子の表面酸化層とそれに接するα鉄表面の一原子層程度を除いた部分はソフト化していないと結論できる. 第Ⅳ章第1節では,微粒子の振動がメスバウアー効果に及ぼす影響を考察し,様々な密度に圧縮した鉄微粒子集合体について実験を行った. その結果,次のことが明らかになった. 微粒子の振動数がメスバウアー核の第一励起準位の緩和時間の逆数と同じ程度の大きさの場合には,振動がないときに比べてスペクトルの吸収線の幅が広くなるがその面積強度は変わらない. また,微粒子の振動数がこの緩和時間の逆数よりはるかに高い場合には,面積強度は小さくなるがスペクトルの吸収線の幅は変わらない. 第2節では,金微粒子と金合金微粒子焼結体にスペクトルの吸収線の幅が広くなるがその面積強度は変わらないような振動モードを見出したことを述べた. この振動数は,前節での考察により,^197Auの第一励起準位の緩和時間の逆数(5.29×10^8Hz)と同じ程度の大きさであると結論できる. この値は金属微粒子焼結体と液体ヘリウム間のカピッツァ抵抗の異常から予想されている値と同じ程度の大きさである. 第Ⅴ章第1節では,微粒子の磁性に特有な緒現象について述べた. 第2節では,メスバウアー効果で調べた鉄微粒子の内部磁場とその温度依存性を述べた. 単磁区構造の鉄微粒子の内部磁場は低温でバルクの値より数kOe大きく,温度が上昇すると粒径が小さい微粒子ほど急に減少する. これらの実験結果は,鉄微粒子の反磁場と双極子磁場とともに集団磁気励起を考えることにより説明できる. 特に,粒径100Å以下の鉄微粒子の集団磁気励起では,微粒子間の融着の効果が重要であることがわかった. また,小さい粒径を持つ鉄微粒子の内部磁場と大きい粒径を持つ鉄微粒子の内部磁場を比較することにより,互いに連なった鉄微粒子に対する単磁区構造と複磁区構造との境界粒径は,約450Åであることを確認した. 第3節では,互いに接触したγ-Fe_20_3微粒子集合体のメスバウアースペクトルの外部磁場(0~0.71T),および温度による変化について述べた. これらのスペクトルの超常磁性による二重線(内部磁場0に対応する吸収線)の強度の外部磁場依存性と温度依存性は,孤立した微粒子の場合とかなり異なっている. これらの結果から,互いに接触した微粒子集合体では,温度の上昇とともに集団磁気励起から緩やかに超常磁性になると結論できる. 第4節では,鉄微粒子の表面酸化層のメスバウアー効果について述べた. 鉄微粒子の表面酸化層はγ-Fe_20_4とFe_30_4との混合物(中間的な物質)の微結晶である. しかし,その内部磁場は低温でも集団磁気励起のためバルクの値より小さい. これらの微結晶は微粒子内部の鉄の部分から一方向異方位エネルギーを受けているため,高温で超常磁性になったとき磁化方向の反転の確率が非対称になる. 微結晶がこのような状態にあるとき,メスバウアー核の感じる平均内部磁場は微結晶の体積や一方向異方位エネルギーの分布により広く分布する. このため表面酸化層のメスバウアースペクトルは幅の広い吸収帯になっていると考えられる. 第Ⅴ章は総括である. 本研究でわかったこととその意義について述べた. 総括 以上の結果から,微粒子をどの程度小さくするとその本質的な物性がバルクの物性と異なってくるかという問題に対して,ある程度の答えが得られた. 本研究で行なった最も小さい微粒子は,格子振動に関しては平均粒径66Åの鉄微粒子であり,磁性に関しては粒径20~30Åのγ-Fe_20_3微粒子である. これらについての実験結果は,格子振動と磁性に関する限り,微粒子の物性は表面を除いてバルクの物性と本質的には異なっていないということを示している. 例えば,微粒子とバルクの無反跳分率の値の違いのすべては,微粒子全体としての振動に原因があると考えられるし,磁気的性質(又はメスバウアースペクトルの形)の違いに関しても,集団磁気励起と超常磁性を考えることにより,すべて説明がつく. 表面効果は表面第一層目だけか,多くても二層目迄で,それより内部には及ばないと考えられる. しかし,実際に作成される微粒子の大部分は,周りの微粒子や他の物質と相互作用しているから,微粒子の全体としての振動や磁化方向の揺らぎ,そして,微粒子の集合体としての性質もまた重要である. これらのことに関しては,微粒子全体としての熱的な振動モードや,集団磁気励起(磁化方向の熱的揺らぎ)が重要であることがわかった. | |||||
言語 | ja | |||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | ||||||
内容記述 | 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:工学博士 (論文) 学位授与年月日:平成2年7月6日 | |||||
言語 | ja | |||||
内容記述タイプ | Other | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源 | http://purl.org/coar/resource_type/c_db06 | |||||
タイプ | doctoral thesis | |||||
書誌情報 |
発行日 1990-07-06 |
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学位名 | ||||||
言語 | ja | |||||
学位名 | 工学博士 | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||
学位授与機関識別子 | 13901 | |||||
言語 | ja | |||||
学位授与機関名 | 名古屋大学 | |||||
言語 | en | |||||
学位授与機関名 | Nagoya University | |||||
学位授与年度 | ||||||
学位授与年度 | 1990 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 1990-07-06 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 乙第3806号 | |||||
フォーマット | ||||||
application/pdf | ||||||
フォーマット | ||||||
application/pdf | ||||||
著者版フラグ | ||||||
値 | publisher | |||||
URI | ||||||
識別子 | http://hdl.handle.net/2237/11391 | |||||
識別子タイプ | HDL |