@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009602, author = {佐藤, 憲史}, month = {Feb}, note = {次世代の光通信方式と目されるコヒーレント光伝送方式や波長分割多重光伝送方式は,半導体レーザの狭スペクトル線幅化をはじめとするレーザ性能の向上を必要としている.半導体レーザの高性能化のためには,材料となる半導体結晶の品質向上,レーザの設計・作製技術の開発が不可欠である.本論文は,有機金属化学気相成長(MOVPE)法で作製された結晶の評価に関する研究と,1.55μm帯分布帰還型(DFB)レーザの作製法の研究,さらに,DFBレーザの狭スペクトル線幅化およびアレイ化の研究をまとめたもので,次の章からなっている.第1章は序論で,半導体レーザ研究の歴史と半導体レーザの動作原理について概説した.また,光ファイバ通信におけるDFBレーザの役割と要求される課題をふまえ,本研究の位置づけと目的を明確にした.第2章では,MOVPE法によるInGaAsP系結晶を半導体レーザに適用する立場から,その結晶品質の評価について述べた.強励起ホトルミネッセンス(PL)法により,PL特性とレーザ特性との強い相関が得られることを示した.また,DFBレーザにおいて重要となる回折格子を内蔵したInGaAsP/InP 二重ヘテロ構造(DH)ウェハにおいて発生する結晶欠陥を明らかにした.2.1節では,結晶評価の意義と第2章の目的を述べている.2.2節では,MOVPE法によるレーザ用DHウェハの作製法と評価法を概説した.また,酸化膜ストライプレーザを作製し,得られたしきい値電流密度と外部微分量子効率が理論的な概算値と一致し,良好な値であることを示した.2.3節では,結晶品質を評価する有力な手段である強励起PL測定法を取り上げ,MOVPE法によるDHウェハを評価した結果について述べた.PL測定における励起強度とキャリア密度の理論的な解析に基づき,レーザ発振時と同等なキャリア密度の強励起状態を実現するため,高出力YAGレーザを励起光源に用いたPL評価法について述べた.本評価法により,PL強度の弱いDHウェハを用いて作製したレーザでは,発振しきい値電流密度が高いという強い相関関係が得られることを示した.この相関関係を解析し,結晶品質を反映するキャリア寿命が重要なパラメータであることを明らかにした.2.4節では,回折格子上にMOVPE法により成長させた結晶の欠陥を評価した結果について述べた.DFBレーザ用DHウェハの構造と作製法を概説し,回折格子の形状を保存する結晶成長法について述べた.作製したDHウェハの結晶品質を,透過型電子顕微鏡観察により評価した.回折格子が形成されたInP基板上DH結晶では,回折格子の凹部から成長方向である[001]方向に伸びる欠陥が発生し,この欠陥は,回折格子高さが40nm以上のとき,発生が顕著になることを示した.また,この欠陥発生は,レーザ特性を著しく劣化させることを明らかにした.InGaAsP回折格子上に成長させたInP結晶では,{111}面に沿った欠陥が発生することを示した.これらの回折格子上欠陥は,MOVPE法により成長させた結晶に特有であり,凹凸のある基板上での結晶成長機構の解明という視点から,欠陥発生機構を考察した.2.5節で,第2章の結果をまとめた.第3章では,DFBレーザの設計法と作製法を述べ,その基本特性を示した.MOVPE法による結晶を用いたレーザとして,セルフアライン法による簡便なリッジレーザの作製法を開発し,活性層内におけるキャリアの拡散により,しきい値電流の低減に限界があることを明らかにした.また,ドライエッチング加工を導入したMOVPE法による埋め込みレーザの作製法を確立し,低しきい値電流,高出力のレーザ特性が得られることを示した.これらのレーザの強度変調特性を評価し,埋め込みレーザでは埋め込み部分の浮遊容量の除去により高速化が可能であることを示した.3.1節では,DFBレーザ研究の意義と第3章の目的を述べている.3.2節では,DFBレーザ作製において重要となる結合定数の設計と発振波長の設計について述べた.回折格子の光帰還強度を表わす結合定数は,近似的に回折格子高さに比例して増大することを実験的に示した.また,DFBレーザでは活性層のもつ利得分布に対する発振波長の設定が重要であり,利得ピーク波長に対する発振波長のデチューニングを考慮した設計法を明確にした.3.3節では,リッジ導波路DFBレーザのセルフアライン法による簡便な作製法を開発し,得られた特性について述べた.しきい値電流のリッジ幅依存性についての実験結果は,活性層におけるキャリア拡散を考慮した解析により説明できることを示した.この解析により,キャリア拡散長は約3μmであり,リッジ幅の減少によるしきい値電流の低減には限界があることを指摘した.3.4節では,結晶成長に膜厚制御性の優れたMOVPE法を用い,また,共振器構造の形成に高精度の微細加工が可能なドライエッチング法を導入した埋め込みDFBレーザの作製法について述べた.その結果,20mA以下の低しきい値電流,20mW以上の高出力DFBレーザが得られることを示した.3.5節では,レーザの光通信への応用上重要である強度変調特性を評価し,埋め込みレーザでは,埋め込み部分の浮遊容量を除去することにより10GHz近傍まで高速化できることを実験的に明らかにした.3.6節で,第3章の結果をまとめた.第4章では,第3章で確立したDFBレーザの設計・作製技術に基づき,コヒーレント光伝送方式への応用を目指し,DFBレーザのスペクトル純度向上について述べた.DFBレーザの長共振器化,活性層の薄層化により狭スペクトル線幅が得られることを,理論的,実験的に示した.4.1節では,コヒーレント光通信開発の意義を述べ,第4章の目的と概要を示した.4.2節では,半導体レーザにおけるスペクトル線幅の理論的な定式化と測定法を概説した.4.3節では,DFBレーザのスペクトル線幅を低減し,かつ高出力動作を達成するためには,共振器内光損失の低減が重要であり,そのため長共振器化及び活性層の薄層化が有効であることを理論的に明らかにした.また,第3章で確立した埋め込みレーザにおいて,共振器を1.2mmと長く,活性層を0.07μmと薄層化したDFBレーザを作製し,光出力20mWにおいて1MHzの狭線幅が得られることを示した.4.4節では,DFBレーザを多電極化することにより,狭線幅を保持し,波長可変特性と平坦な周波数変調特性が得られることを実験的に示した.4.5節で,第4章の結果をまとめた.第5章では,波長分割多重光伝送用DFBレーザアレイについて述べた.光通信の大容量化を目指した波長分割多重分割方式において必要な,波長の異なるDFBレーザのアレイ化のため,Ⅹ線露光による回折格子作製法を導入し,波長間隔10Åで単一モード発振する20波長DFBレーザアレイを実現し,さらに熱クロストークの問題を検討した.5.1節では,レーザアレイ研究の意義を述べ,第5章の目的と概要を示した.5.2節では,単一モード発振が保証されるλ/4 シフトDFBレーザを用いたレーザアレイの基本設計について述べた.5.3節では,DFBレーザの発振波長を高精度に制御するため,Ⅹ線露光技術を導入した回折格子作製法を概説した.5.4節では,作製したDFBレーザアレイの特性の評価結果を述べた.波長間隔10Åと高密度で,単一モ-ド発振する20波長DFBレーザアレイを実現し,Ⅹ線露光による回折格子作製技術とMOVPE法によるDFBレーザ作製技術が高い可能性をもつことを示した.5.5節では,DFBレーザアレイにおける発振波長ばらつきの決定要因を解析した.DFBレーザの発振波長ばらつきは,主に活性層の膜厚と活性層幅の作製上のばらつきに起因することを示した.5.6節では,レーザアレイにおける熱的な干渉による発振波長変動を評価し,熱クロストークのレーザ間隔依存性,およびダイヤモンドヒートシンクのもつ高い熱伝導率による熱クロストーク低減効果を実験的に明らかにした.熱クロストークはレーザ間隔の増大に伴って減少するが,相対的に離れたレーザ間ではヒートシンクやステム等の実装部品での温度上昇による熱クロストークが支配的になることを指摘した.5.7節で,第5章の結果をまとめた.第6章は,本論文の総括で,DFBレーザの高性能化という本研究の目的にそって,得られた結果をまとめて示した., 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:工学博士 (論文) 学位授与年月日:平成4年2月4日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {長波長帯分布帰還型半導体レーザの高性能化に関する研究}, year = {1992} }