@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009603, author = {加鳥, 裕明}, month = {Oct}, note = {連続体の力学は、一般的に偏微分方程式で表わされる場の支配方程式と境界条件、初期条件によって記述される。従来、連続体の解析は、その支配方程式を導き、解析的に解くことに主眼がおかれ、研究が行われてきた。しかし、問題の領域の形状が複雑になると数値的解法を用いざるをえない。連続体の問題を数値的解法を用いて解析する場合、その解法のいかんにかかわらず解析過程の中で離散化による近似が行なわれる。その数値解析法としては、差分法(FDM)、有限要素法(FEM)や境界要素法(BEM)が多用され、その有用性は広く認められている。このうち差分法は最も古くから用いられている数値解析法であって、現象を直接支配する微分方程式を差分近似し、差分格子点における未知量に関する連立1次代数方程式に帰着させ、これを解くものである。これに対して、有限要素法は解析の対象となる領域を多数の有限要素に分割し、要素節点において定義される未知量に関する連立1次代数方程式で近似して解く方法である。よく知られているように有限要素法は、航空宇宙工学の分野で開発された数値計算技術である。この有限要素法は重み付き残差法の出現により、変分原理の必ずしも存在しない物理や工学の分野にまで適用範囲が広がり、理工学諸問題の数値解析に対する最も有力な手法として、不動の地位を確保するに至った。差分法や有限要素法では、解析すべき領域全体を格子または要素に分割して近似計算を行なうので、しばしば領域型解法と呼ばれる。この領域型解法で大規模な実用問題の解析を行なう場合、計算コストおよびコンピュータの記憶容量の両面から制約が課せられることになる。特に3次元問題や非線形問題などにおいては切実である。このような状況において、計算コストの低減などの面において境界要素法の有用性が注目されることになってきた。境界要素法は支配微分方程式を境界積分方程式に変換したのち、これを有限要素法と同じ離散化を行なって数値解を求めるものである。境界積分方程式を離散化すればよいので、考えている問題の次元を一つだけ下げて取り扱うことができる。また、境界表面上の節点における未知量に関する連立1次代数方程式を解く問題に帰着する。このために領域全体を離散化する差分法や有限要素法に比べて、入力データ数や解くべき方程式の元数が少なくなり、計算時間を大幅に減少させることができる。連続体の各種の物理現象の解析法として広く用いられている有限要素法および境界要素法は、相異なる特徴を持っており与えられた問題に応じて両者を使い分けることにより、それぞれの特徴を生かした効率的な解析が可能となる。コンピュータおよびこれを用いた構造解析の最近の発達はめざましいものがあり、離散化解析すなわち離散化モデルを対象とする構造解析が広く実用化されている。有限要素法や境界要素法に基づく構造解析は、コンピュータによる数値実験あるいは数値シミュレーションとして、多額の経費と労力および時間を必要とする実験、危険を伴う実験や実際の構造物で実験が行えない場合などに取って変わりつつある。そして、このような解析手法は構造物の設計においてはもはやなくてはならないものとなっており、解の信頼性、精度、計算時間や計算費用などへの要求も高まってきている。構造解析に数値解法を適用する場合、はり理論や平板理論に基づく定式化が行われている。しかし、従来のBernoulli-Eulerの仮定に基づくはり理論およびKirchhoffの仮定の基づく平板理論では、せん断変形の効果が含まれておらず、これらの理論を実際の構造解析に適用する場合問題になることがあり、その問題を解決することによって理論の一段の精密化と適用範囲の拡大が期待できることは明らかである。そのような状況の中で、はり理論のせん断変形に関する研究に着手した。この種の問題に関する研究としては、はりの3次元せん断変形解析法が、川井・藤谷によって提案されているが、その解析はかなり複雑化していることはいなめない事実である。そこで、実用性を考慮しながら、はり理論の精密化に関する研究を行い、その手法の有用性を調べた。さらに、はり理論の精密化を考える場合せん断変形のみならず、断面変形の影響も考慮に入れなければならない。そこで、管断面の有限変形を解析する実用的方法を提案した。また、Mindlinの平板理論に基づくせん断変形を考慮した有限要素の定式化を行ない、その精度、有用性について調べた。本論文は以上の研究結果を中心に8章にわたって述べたものである。まず、第1章においては、はりおよび平板理論の歴史的背景について触れ、その問題点について考える。さらに、離散化モデルを対象とした数値解析法の中でも特に広く利用されている有限要素法と境界要素法について概観する。第2章においては、Saint-Venant理論に基づく任意形一様断面はりのせん断とねじりの連成問題を考え、この問題がポアソン方程式を支配方程式とする境界値問題になることを示す。この連成問題を有限要素法や境界要素法を用いて解析し、せん断剛性・ねじり剛性の行列(3×3)を求める。この行列は一般にせん断たわみとねじりの連成を表すが、非対角項を消すように座標軸を定めてせん断中心が得られる。上で得られたせん断剛性・ねじり剛性の行列を用いてせん断変形を考慮した立体骨組要素の剛性行列を求める。これは曲げ変形のみを考える通常の表現を補正する形で与えられるが、これまでは平面骨組要素の場合だけが得られていた。そして、種々の解析例を示す。第3章では、第2章で示した立体骨組要素の剛性行列では、材端でのwarpingの拘束、接続を考慮できないから、これを近似的に取り入れるため、warpingのモードをそのままにして、大きさを軸方向に変化させるWagner式の曲げねじり剛性の一般化拡張を考え、せん断変形を考慮した曲げねじり要素の剛性行列を求め、薄肉断面はりのshear-lag現象などを解析する。第4章においては、構造物の重要な部材である平板の有限要素解析について考える。平板理論は板の広がりに比べて厚さが十分に小さいいわゆる薄板を対象としている。しかし、板厚が大きくなるとせん断変形の影響が無視できなくなる。せん断変形を考慮した平板理論が、ReissnerやMindlinによって提案されているが、これらの理論に基づく平板曲げ要素がいくつか提案されている。ここでは、Mindlin理論を用いて異方性平板にも適用できる実用性の高い三角形板曲げ要素を導く。これは、三角形要素について面積座標による不完全3次式でたわみを表し、面外せん断ひずみが要素内で二方向に一定とする条件により法線回転角と結び付けると、3頂点3自由度と一定面外せん断ひずみとでたわみが表せる。これより、曲げモーメントを作り、平衡条件からせん断力を求め、せん断ひずみと面外せん断剛性により関係づければ、せん断ひずみも3頂点3自由度で表せる。あとは通常の曲げ問題と全く同じ取扱ができる。そして、種々の平板の曲げ問題を解析する。第5章では、第4章においてその実用性が認められた三角形板曲げ要素を動的問題の解析に応用する。まず、せん断変形を考慮した平板の自由振動の解析を行い、次に動的安定問題への応用として超音速パネルフラッタを考える。断面変形がはりの力学特性に大きく影響する問題の1つに、Brazier効果として知られている問題がある。それは、薄肉円管が曲げモーメントを受けると断面の偏平化につれて剛性が低下し、遂に屈服に至るという現象であり古くから解析されている。しかし、有限変位変形を厳格に取り入れる手法に困難があり、任意形状断面に適用できる実用的方法が望まれている。また、曲りはりの剛性評価においても二次応力の効果を考慮しなければならないが、更にその有限曲げおよび弾塑性曲げについてはまだ明らかにされていない。そこで、第6章では有限要素法を用い増分繰り返しの手法により、はりの有限曲げを簡便な処理によって解析する方法について述べる。この方法によれば、任意断面直線はりの屈服現象は言うまでもなく、曲りはりにおいてその中心線面内の有限曲げの他、面外曲げをも含んで容易に解析できる。各種断面形の曲りはりの有限曲げを解析し、有用性を検討する。第7章では、第6において述べた解析法を弾塑性大変形解析に拡張する。ここでは、材料の構成式には有限増分塑性理論を用い、種々断面形の薄肉曲りはりの弾塑性曲げについて検討を行う。第8章において、以上の研究結果のまとめと、本研究の総括を行なう。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (論文) 学位授与年月日:平成4年10月30日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {薄肉構造部材の離散化モデルによる高精密化解析に関する研究}, year = {1992} }