@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009607, author = {森上, 敦}, month = {Jun}, note = {F_1ATPaseは酸化的リン酸化の最終反応をつかさどりADPと無機燐酸からATPを合成するF_1FoATPaseの可溶性画分である。この酵素は動物・植物・真菌類のミトコンドリア、細菌形質膜、葉緑体に存在し、その構造や発現についての解析が細菌や動物の酵素を中心に行われているが、植物のF_1ATPaseの研究はこの酵素の重要性にも関わらず遅れている。そこで、本研究では植物ミトコンドリアに存在するF_1ATPaseについて、サブユニットの構造とサブユニット遺伝子発現の二つの見地から研究を行った。【F_1ATPaseサブユニット遺伝子の発現】植物のF_1ATPaseを構成するサブユニット遺伝子は核とミトコンドリアの両ゲノムに分かれているので、それぞれの発現調節機構の解析が必要であるが、本研究ではミトコンドリア支配であるαサブユニット遺伝子の構造やその領域の発現についての解析をおもに行った。エンドウ植物ミトコンドリアF_1ATPaseαサブユニット遺伝子の構造と発現エンドウのミトコンドリアF_1ATPaseのαサブユニット遺伝子の単離を大腸菌と葉緑体のF_1ATPaseαサブユニット遺伝子をプローブとして行ったところ、αサブユニット翻訳領域を含む遺伝子が4種単離された。この4種の遺伝子の制限酵素地図の作成とその比較を行うと、αサブユニット翻訳領域の一部を反復配列として、その上流に2種、その下流に2種の配列が存在し、これが組合わさることにより4種の遺伝子が生じていることが明らかになった。植物ミトコンドリアゲノムには反復配列が存在し、それを介した相同組換えによりミトコンドリアゲノムの再編成が行われることが知られている。今回の結果はαサブユニットの翻訳領域の一部がエンドウミトコンドリアゲノムの相同組換えに関わる反復配列となっていることを示すものと思われた。組換えが生じることにより、4種の遺伝子のうち2種についてはαサブユニット全翻訳領域が存在するが、後の2種の遺伝子についてはC末端領域がαサブユニットの配列とは別の配列に置きかわった遺伝子となっていた。これらの遺伝子の発現を調べるとαサブユニットの全翻訳領域を含む遺伝子の発現は認められたが、C末端側が別の配列におきかわった新規な遺伝子の産物は検出できなかった。エンドウミトコンドリアF_1FoATPaseαサブユニットーサブユニット9遺伝子領域の転写地図αサブユニット遺伝子の転写産物の解析の途上、2種のαサブユニット遺伝子の上流域に由来する転写産物が多量に存在することを見いだしたので、この領域の全塩基配列の決定を行った。その結果、F_1FoATPaseサブユニット9遺伝子がαサブユニット遺伝子の上流逆鎖に存在することが明らかになった。そこで、αサブユニットとサブユニット9両遺伝子の転写産物についての解析をノーザンプロットハイブリダイゼーション、S1マッピング法、プライマー伸長法を用いて行った。αサブユニット遺伝子の転写産物は4種類存在するが、転写産物の5'末端は2カ所に限られた。4種の長さの転写産物が存在するのは3'末端の違いによると思われる。サブユニット9遺伝子の転写産物は3種類存在し、それぞれ5'末端の位置が異なっていた。サブユニット9遺伝子の翻訳領域下流にはGAGG配列の後に2重のステムーループ構造をとり得る配列が存在し、この2番目のステムのすぐ下流に全てのサブユニット9遺伝子転写産物の3'末端が存在した。このステムーループ構造は転写終結に働くのか、RNAの安定性に関わっているのかわからないが、非常によく似た二次構造が他の植物ミトコンドリア遺伝子の翻訳領域下流にも存在した。αサブユニットとサブユニット9遺伝子の併せて5種の転写産物の5'末端近傍の配列の比較を行ったが、共通な配列は見つけることができなかった。 しかし、サブユニット9遺伝子のいちばん長い転写産物の5'末端近傍の配列は最近明らかにされた植物ミトコンドリア遺伝子のプロモーターのコンセンサス配列に一致していた。よってサブユニット9遺伝子のいちばん長い転写産物はプロセッシングを受けていない一次転写産物であると推定された。転写産物地図からαサブユニット遺伝子の一番長い転写産物とサブユニット9遺伝子の1番長い転写産物は互いに同じ遺伝子領域の逆鎖を転写していることが明らかになった。重複している部分は705塩基であった。またαサブユニットの一番長い転写産物の5'末端はサブユニット9遺伝子の2番目に長い転写産物と4塩基分だけ相補的に重なっていた。しかしこの様に相補的なRNAが存在することがRNAのプロセシングにどのように関わっているかについては明らかではない。【植物のF_1ATPaseを構成するサブユニットの構造】細菌・葉緑体・動物や酵母のミトコンドリアより単離されたF_1ATPaseは5つのサブユニットからなっていることから、一般にF_1ATPaseは5サブユニット構造を取っていると考えられてきた。しかし双子葉植物のミトコンドリアから単離されたF_1ATPaseは他生物のF_1ATPaseよりサブユニットが一つ多い6種類のサブユニットからなっていた。そこで木村らがサツマイモミトコンドリアF_1ATPaseのマイナーサブユニットγ、δ、δ'、εサブユニットのタンパク質を単離し、そのN末端アミノ酸配列の決定を行ったところ、γ、εサブユニットはそれぞれ動物のF_1ATPaseのγ及びεサブユニットと相同なサブユニットであることが判明した。また、δサブユニットは動物のF_1F_oATPaseのF_o画分に存在するOSCP(oligomycin sensitivity-conferring protein)と相同性があることが明らかにされた。しかしサブユニットのN末端アミノ酸配列35残基に相同なアミノ酸配列は動物のF_1F_oATPaseを構成するサブユニットの中には見いだせなかった。そこで、筆者らはサツマイモのδ'サブユニットのアミノ酸に対応するオリゴヌクレオチドプローブを用いて、δ'サブユニットのcDNAの単離を行った。単離されたcDNAの塩基配列から推定されるアミノ酸配列を他生物のF_iATPaseのサブユニットのアミノ酸配列と比較を行うとδ'サブユニットは動物・菌類ミトコンドリアのF_iATPaseδサブユニットと31-36%の相同性が見られ、細菌・葉緑体CF_1のεサブユニットとは14-25%の相同性があることが明らかになった。サツマイモのδ'サブユニットのアミノ酸配列は他の相同なサブユニットのものよりも若干大きなタンパク質でδ'サブユニットには他の相同なサブユニットにはない33残基から49残基のアミノ酸配列がN末端に存在した。δ,サブユニットのN末端アミノ酸配列を他生物のF_iATPaseサブユニットと比較を行ったときに相同なサブユニットが見つけられなかったのはこれが理由である。今回の結果より、6サブユニットからなる双子葉植物のミトコンドリアF_1ATPaseは動物のミトコンドリアF_1ATPaseの5種のサブユニットに動物ではF_iFoATPaseの膜画分Foに分画されるOSCPが加わった形をしていることが明らかになった。これ以外に、N末端のアミノ酸配列はわかっているが、全一次構造が決定されていないγ及びεサブユニットのcDNAの単離も行い、構造の決定をおこなった。塩基配列から推定されるアミノ酸配列をウシのミトコンドリアのγサブユニット及びεサブユニットと比較を行うとそれぞれ37%と36%の相同性が見られた。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(農学) (論文) 学位授与年月日:平成5年6月30日}, school = {名古屋大学, NAGOYA University}, title = {植物ミトコンドリアF_1F_0ATPaseサブユニット遺伝子の構造と発現}, year = {1993} }