@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009608, author = {大野, 始}, month = {Jul}, note = {本研究では、シンビジウム生産の最大のネックとなっている夏季の高温により花序が枯死してしまう「花飛び」と呼ばれる現象について、小型シンビジウムのサザナミナミ`ハルノウミ'を剛、て、温度や植物生長調節物質の影響を主として生理学的に研究した。最初に花序の発育に及ぼす温度の影響をファイトトロンを用いて調べた。種々の発育ステージにある花序を高温(昼30℃/夜25℃)または低温(14℃/10℃)でそれぞれ20、40、60日間処理した。処理終了後、高温処理区のものは低温条件下に、低温処理区のものは高温条件下に移した。その結果、高温処理の場合、20日間ではほとんど花序に影響を与えず、開花も正常であった。40日間処理では発育の進んでいた花序で花茎伸長も花蕾の発育も起こらず枯死する典型的な花飛び現象が発生した。さらに、60日間処理では発育ステージにかかわらず大部分の花序が典型的な花飛びを起こした。一方、低温処理の場合には発育ステージが進んでいた花序ほど花茎は伸長した。しかし、20日および40日間の処理では開花には至らず、開花を誘起するには60日間の低温処理が必要であった。圃場の自然条件下(5~25℃)で10月下旬まで栽培した材料を高温条件下に移した場合にも、60日間の低温処理と同様の結果が得られた。高温ならびに低温の影響が、何れも処理時の花序の発育ステージにより大きな差異を示したことから、高温や低温に感受性のある発育ステージの存在が示唆された。そこで、花序の発育に及ぼす高温の影響を花序の発育ステージとしての花粉形成過程との関連で調べた。花粉形成は花茎の伸長とほぼ平行して進行していた。花茎の基部に着生している花蕾では、花茎長4cmまでが胞原細胞期、4~6cmが前減数分裂期、6~15cmが減数分裂前期にそれぞれ対応していた。胞原細胞期に圃場の自然条件下からファイトトロンの高湿条件下(30℃/25℃)に移すと、花茎の伸長も花蕾の発育も起こらず花序は枯死した。減数分裂前期のものは正常に開花した。胞原細胞期と減数分裂期の間の前減数分裂期のものでは、花茎伸長は誘起されたものの大部分の花蕾が開花に至らず、前減数分裂期がクリティカルステージと推定された。一方、発育初期より連続して高湿におかれた花序は前減数分裂期のDNA複製過程(S期)には入らず発生を停止し、枯死することが示された。したがって、基部の花蕾については前減数分裂期のG_1期がその花茎伸長を伴わない典型的な花飛び現象を起こすステージと推定された。花飛び現象を誘起する高温の影響と花粉形成段階との関係をさらに明らかにするため、花蕾の外花被長と花粉形成段階との相関を調べた。その結果、花蕾の着生位置によらず、減数分裂期までは両者に密接な相関のあることが明らかとなった。この高い相関を基に花粉形成過程の各段階に及ぼす温度の影響を調べたところ、胞原細胞期にあった花蕾は、高温(昼30℃/夜25℃)では減数分裂過程に入ることなく枯死し、前減数分裂期のものは減数分裂をした後、種々の段階で枯死した。花粉形成が減数分裂前期まで進んだ花蕾は、高温でも花飛びを起こさず、正常に開花した。これらの結果から、少なくとも前減数分裂期には20℃以下の低温が減数分裂細胞分化や花粉形成、花蕾の発育のために必要であることが示された。花飛び現象の二大特徴の一つである花茎伸長が起こらない原因を明らかにするため、花茎伸長における花器官および植物ホルモンの役割を調べた。全花蕾を除去すると花茎伸長は著しく抑制された。花蕾のうち、花茎基部側の2/3を除去しても花茎伸長はほとんど影響を受けなかったが、先端側の2/3を除去すると、花蕾を除去した部分の伸長が著しく抑制された。全花蕾から薪だけを除去しても、全花蕾を除去した場合と同様、花茎は伸長しなくなった。全花蕾から花被をすべて除去しても同様の結果が得られた。花飛び現象を起こす高温条件では花茎が伸長しないが、NAA処理により花蕾の有無に関係なく花茎伸長が誘起された。葯除去部へNAA処理しても同様の効果が得られた。NAA処理では、いずれの場合も花蕾は開花に至らなかった。GA_3処理は花茎伸長と花蕾の発育・開花のいずれをも誘起したが、GA_3の花茎伸長作用は花蕾を除去した花茎では見られなかった。これらの結果から、シンビジウムの花茎伸長には発育中の花蕾によって供給されるオーキシンが主として関与しており、花蕾の発育や花茎伸長にとって葯が特に重要な器官であることや、GA_3が直接花茎伸長を誘起するのではなく、花蕾を正常に発育させることにより花茎を伸長させていることが示された。花飛び現象のもう一つの特徴である花蕾の発育が途中で停止し花蕾が枯死してしまう原因を明らかにするため、植物生長調節物質の影響を調べた。GA_3処理は低温の不足を補完し、減数分裂細胞分化や花粉形成、花蕾の正常な発育・開花を誘起した。これによりジベレリンが制限因子となっていることが示された。小胞子は同一葯内においてさえ、さまざまな配列型を示した。1核性小胞子と2核性小胞子とでは、各配列型の存在比率に差が見られた。前者は対照区およびGA_3処理区の花飛びを起こした花蕾で見られ、大部分が二分子で四分子の比率は低かった。後者は花飛びを起こした対照区の花蕾とGA_3処理により開花した花で見られ、四分子の比率が二分子よりかなり高かった。しかし,これらの四分子における各配列型の比率は花飛びの発生やGA_3処理により変化しなかった。花飛び現象にエチレンが関与しているかを明らかにするため、エチレン発生剤のエセフォン(500ppm)処理を行ったところ、花蕾の発育ステージに関係なく花飛び現象を誘起した。1mMST Sおよび50ppm GA_3はいずれも高温による花飛びを回避させたが、両者の作用性には顕著な差異が見られた。すなわち、STSの効果はエセフォン処理により打ち消されなかったが、GA_3の効果はエセフォン処理により消失した。 さらに、STS処理区の花序は対照区の花序より多量のエチレンを発生したが、GA_3処理区ではそのエチレン発生量は対照区よりも少なかった。以上の結果から、STSはエチレンの作用を抑制することにより、GA_3はエチレンの生成量を低いレベルに保つことにより、それぞれ花飛びを回避させたものと推察され、高湿によるシンビジウムの花飛び現象にエチレンが関与していることが示された。花飛び現象にエチレンが関与していることが明らかとなったので、花飛び現象の発生に及ぼすエチレン生合成阻害剤の影響を調べたところ、ACC合成酵素の阻害剤である250ppm AVG処理では花飛び現象の発生が抑制された。同濃度のAOAは効果がなかったが、1,000ppmおよび2.000ppmでは花飛びを抑制した。AOAは低温を受けていない花序に対しても有効であった。エチレン合成酵素の阻害剤であるAIBは0.5%の高濃度処理にもかかわらず、まったく効果を示さなかった。高温処理開始時からのGA_3処理が花飛びの回避に有効なことはすでに示されていたが、処理開始を1週間遅らせた場合にはGA_3の効果が著しく低下した。一方、AOA処理した花蕾は1週間後からのGA_3処理にもよく反応し、約半数が開花した。このことから処理時期を遅らせた場合にみられるGA_3の花飛び抑制効果の減少、すなわち花蕾のジベレリン感受性の低下もエチレンの作用によることが示唆された。エチレン生合成阻害剤を用いた結果からも、シンビジウムの花飛び現象にエチレンが関与していることが確認された。以上の結果をもとに花飛び現象の由来、その発生機構、今後の展望などについて若干の考察を行った。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(農学) (論文) 学位授与年月日:平成5年7月28日}, school = {名古屋大学, NAGOYA University}, title = {シンビジウムの花飛び現象に関する生理学的研究}, year = {1993} }