WEKO3
アイテム
{"_buckets": {"deposit": "1fc48f8c-e0ba-4987-9ddd-3726ec6e5666"}, "_deposit": {"id": "9612", "owners": [], "pid": {"revision_id": 0, "type": "depid", "value": "9612"}, "status": "published"}, "_oai": {"id": "oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009612", "sets": ["607"]}, "author_link": ["29205"], "item_12_biblio_info_6": {"attribute_name": "書誌情報", "attribute_value_mlt": [{"bibliographicIssueDates": {"bibliographicIssueDate": "1994-01-31", "bibliographicIssueDateType": "Issued"}}]}, "item_12_date_granted_64": {"attribute_name": "学位授与年月日", "attribute_value_mlt": [{"subitem_dategranted": "1994-01-31"}]}, "item_12_degree_grantor_62": {"attribute_name": "学位授与機関", "attribute_value_mlt": [{"subitem_degreegrantor": [{"subitem_degreegrantor_language": "ja", "subitem_degreegrantor_name": "名古屋大学"}, {"subitem_degreegrantor_language": "en", "subitem_degreegrantor_name": "Nagoya University"}], "subitem_degreegrantor_identifier": [{"subitem_degreegrantor_identifier_name": "13901", "subitem_degreegrantor_identifier_scheme": "kakenhi"}]}]}, "item_12_degree_name_61": {"attribute_name": "学位名", "attribute_value_mlt": [{"subitem_degreename": "博士(工学)", "subitem_degreename_language": "ja"}]}, "item_12_description_4": {"attribute_name": "抄録", "attribute_value_mlt": [{"subitem_description": "近年,強震計の普及により,大地震が発生すると非常に多くの地震記録が得られるようになってきた。これらの記録は,震源のメカニズムや地震動の距離減衰特性などの地震工学的な研究とともに,表層地盤の影響を考慮した地震力の設定という面で耐震設計や地震防災の研究にも利用され始めている。一般に,地表面上で得られた地震動の加速度波形のスペクトル特性は,①震源の特性,②震源から基盤上面までの距離減衰特性,③基盤上から地表面上までの表層地盤の特性の3つに分離して考えることができる。この中で,表層地盤の特性は各地域の地震力を設定する際には最も重要なものであるが,敷地周辺の地下構造が水平方向に連続していると仮定して1次元的に評価される場合がほとんどである。しかし,構造物が多く建設される堆積平野では,堆積層と基盤との内部境界面は,ある傾斜角を持って自然に堆積層が薄くなる,断層で急激に厚さが変化するなど,水平方向に幾何学的な不規則性を有している。そのため,鉛直下方から上昇してきた地震波はこの傾斜面で屈折して斜め方向に平野内に入り込むことになり,このような地盤の振動特性を把握する場合には,水平方向の不規則性の影響を考慮できる2次元あるいは3次元的な取り扱いが必要になる。一般に,不整形地盤は「水平方向に地形的及び地質的に不規則な地盤」と定義され,不整形さを有する部分に着目して,①崖地形や谷地形のように地表面形状が不規則な地盤,②沖積谷や埋立地のように表層地盤と基盤との内部境界形状が不規則な地盤,③斜面地形での切り盛り造成地のように地表面形状と内部境界形状の両方に不規則性を有する地盤の3つのタイプに分類できる。本論文の目的は,実地盤や構造物の常時微動観測による実証的な方法と2次元境界要素法による理論解析的な方法を用いて,①不整形地盤の振動特性と②不整形地盤上に建てられた構造物の振動特性を総合的に解明することである。不整形地盤の振動特性を実証的に解明するために,山斜面の一部を削り谷を埋めて造成された実在する埋谷地盤を対象として,地盤の特徴的な断面で多地点の常時微動観測を実施した。次に,この地盤を2次元境界要素法によりモデル化して,鉛直下方からのSH波入射に対する地表面や地盤内の定常応答特性を求めて1次元解析結果との比較・分析を行った。最後に,実証的な結果と理論的な結果を併せて,埋谷地盤の振動特性を内部境界形状の不規則性と関連させて総合的に解明した。さらに,数値解析的な方法によって,一般的な沖積谷地盤の振動特性を解明するために,沖積谷と基盤とのせん断波速度比,沖積谷の幅と深さの比,基盤の傾斜角を様々に変化させたパラメ一夕ー解析を実施した。そして,これらの結果から各々の要因が沖積谷上の振動特性に及ぼす影響について解明した。次に,不整形地盤上の構造物の振動特性に対する実証的な研究では,前述の埋谷地盤上に建てられた①埋土部と切土部をまたぐ建物と②埋土部を完全にまたぐ建物の2つのRC造学校建築を対象とした。地盤上と建物内の多地点常時微動観測を実施して,主に切土上を基準点としたスペクトル比から建物各部の振動特性を把握した。次に,この不整形地盤-構造物系を2次元境界要素法によりシミュレーション解析を実施して,得られた地盤や建物各地点の応答倍率特性を微動観測結果と比較することによって,不整形地盤が構造物の振動特性に及ぼす機構を総合的に解明した。さらに数値解析的な研究として,この埋谷地盤上に建てられる構造物の建設位置や形状を変化させたパラメーター解析を実施して,各々の要因が構造物の振動特性に及ぼす影響について解明した。第1章では,過去の地震被害と不整形地盤との関係を調査・分析して,①盛土地盤上,②崖縁,③硬質地盤と軟弱地盤の境界部,④基盤の傾斜角が急変する地域,などで構造物の被害が集中することを指摘した。さらに不整形地盤の振動特性に関する既往の研究を調査して,理論解析的な研究に比較して,地震観測や現地実験・模型実験などの実証的な研究が非常に少ないことを指摘した。第2章には,不整形地盤の振動特性を実証的に把握する方法として利用した微動観測について記述してある。微動は,その支配的な周期成分が①1秒以下の常時微動と②1秒以上の長周期微動の2種類に分類できる。はじめに,これら2種類の微動の既往の研究を調査・分析して,沖積層や堆積層が厚い地盤上での微動は,卓越周期が長くなるとともにスペクトルの卓越するピーク数が増加する特徴があることを指摘した。次に,足柄平野で実施された微動観測を例にして,微動の種類,観測する時間帯による変化,表層地盤の影響などに対する微動波形やスペクトルの特徴を指摘した。その際,波形解析法の一つである平均フーリエスペクトルは,従来のParzenウインドウ等により平滑化されたスペクトルに比較して,長周期域や人工的な外乱が多い場合でのピークを鮮明に得ることができることを強調した。さらに,微動の振動数特性は入力彼の特性と表層地盤の増幅特性に分離できることを具体的に示すために,長さの相似比が1/50のシリコン地盤模型上で常時微動観測を実施した。そして,模型の基盤上を基準点とした微動のスペクトル比によって得られた地盤模型の振動特性は,振動台加振実験による結果と良い一致を示すことから,常時微動は表層地盤の振動特性を十分に反映していることを強調した。第3章には,不整形地盤の振動特性を理論解析的に把握するために利用された境界要素法の概要と,2次元SH波場問題に対する解析手順を詳細に記述してある。そして,この間題に対して境界要素法を適用すると,散乱波を容易に考慮でき,自由度が非常に少なくてすむ,などの長所が十分に生かせられるために非常に有効であることを強調した。また,濃尾平野を対象として実施された数値解析例を紹介して,基盤の傾斜角と平野上の振動特性を関連させて,以下のようにまとめた。(1)基盤傾斜角が約4°と非常に緩やかに変化する地表面上の増幅特性は,直下の地下構造を仮定した1次元解析による結果と良く対応する。(2)基盤の傾斜角が90°に近い断層付近の地表面上では,①卓越振動数を示すピーク数が増大し,②全体的な卓越振動数がやや高めに推移し,③局所的な増幅率が1.5倍程度まで大きくなる。第4章では,不整形地盤の振動特性と構造物に及ぼす影響を実証的に把握するために実施された常時微動観測とその結果の分析について記述してある。はじめに,前述の埋谷地盤上で実施された多地点の常時微動観測について示し,埋谷地盤の振動特性を把握するために,造成工事前の自然地盤での観測結果や切土上で基準化されたスペクトル比が利用された。その結果,谷筋方向と谷筋直角方向の振動で基盤傾斜が及ぼす影響が大きく異なり,特に谷筋方向では両側の基盤が内側に傾斜するために,鉛直下方から上昇する波の焦点化によって地表面上に局所的な増幅が生じることを明らかにした。次に切土部と埋土部をまたぐように建てられた2つの学校建築を対象とした微動観測を示し,建物の建設工事毎の観測結果や前述のスペクトル比を利用して,埋谷地盤の振動性状が構造物に及ぼす影響について分析した。その結果,硬質な切土部と軟弱な埋土部にまたがる構造物はねじれ振動が励起されるために構造物内部には局所的に水平方向の歪が生じるが,埋土部を完全にまたいだ構造物にはその影響はかなり小さくなることが明らかにされた。第5章では,より一般的な沖積谷地盤の振動性状とその機構を解明する目的で行われた2次元境界要素法による数値解析結果とその分析について記述してある。はじめに沖積谷地盤を規定する量として,①基盤と沖積谷のせん断波速度比,②沖積谷の幅と深さの比,③基盤の傾斜角を選定して,それぞれをパラメトリックに変化させて平野上各地点の振動特性を数値解析的に求めた。次に,この結果を1次元解析による結果と比較・検討して,各々の要因が沖積谷地盤の振動特性に及ぼす影響について以下のようにまとめた。(1)基盤の傾斜による影響は,入射波の振動数が谷の最大深さの1次卓越振動数より低い場合には相対的に小さいが,これより高い振動数域で顕著になる。(2)沖積層と基盤とのせん断波速度比と基盤傾斜の影響には密接な関係があり,その比が1:1.5以下の場合には局所的な増幅はほとんど生じないが,それ以上になると影響は顕著になる。(3)沖積谷地盤の深さに対して幅を広くすると応答倍率特性と位相特性は全体的には1次元解析による結果に接近するが,倍率特性に生じる小さなピークの個数は増加する傾向にある。第6章では,2章から5章までの研究結果を統合させて,本論文の目的である不整形地盤の振動特性について以下の4つの特徴を指摘した。(1)地盤の伝達特性は,成層地盤を仮定した1次元解析結果と比較して,卓越振動数を示すピーク数が増加するために複雑になる。(2)地盤上の局所的な増幅率は,成層地盤のインピーダンス比から求められる値より増大する。(3)基盤が平坦な地盤の卓越振動数は,1次元解析結果と比較して高めに推移する。(4)地盤の位相特性は,成層地盤を仮定した1次元解析結果と比較して,急激に変化する頻度が多くなるために非常に複雑になる。さらに,このように複雑な不整形地盤の振動特性を求めるために微動観測を利用することは,観測方法が非常に簡便であり,上記の特徴を大略的には良く捕えることができるため,有効な手法であることを指摘した。", "subitem_description_language": "ja", "subitem_description_type": "Abstract"}]}, "item_12_description_5": {"attribute_name": "内容記述", "attribute_value_mlt": [{"subitem_description": "名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (論文) 学位授与年月日:平成6年1月31日", "subitem_description_language": "ja", "subitem_description_type": "Other"}]}, "item_12_dissertation_number_65": {"attribute_name": "学位授与番号", "attribute_value_mlt": [{"subitem_dissertationnumber": "乙第4540号"}]}, "item_12_identifier_60": {"attribute_name": "URI", "attribute_value_mlt": [{"subitem_identifier_type": "HDL", "subitem_identifier_uri": "http://hdl.handle.net/2237/11409"}]}, "item_12_select_15": {"attribute_name": "著者版フラグ", "attribute_value_mlt": [{"subitem_select_item": "publisher"}]}, "item_12_text_14": {"attribute_name": "フォーマット", "attribute_value_mlt": [{"subitem_text_value": "application/pdf"}, {"subitem_text_value": "application/pdf"}]}, "item_12_text_63": {"attribute_name": "学位授与年度", "attribute_value_mlt": [{"subitem_text_value": "1993"}]}, "item_access_right": {"attribute_name": "アクセス権", "attribute_value_mlt": [{"subitem_access_right": "open access", "subitem_access_right_uri": "http://purl.org/coar/access_right/c_abf2"}]}, "item_creator": {"attribute_name": "著者", "attribute_type": "creator", "attribute_value_mlt": [{"creatorNames": [{"creatorName": "今岡, 克也", "creatorNameLang": "ja"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "29205", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}]}, "item_files": {"attribute_name": "ファイル情報", "attribute_type": "file", "attribute_value_mlt": [{"accessrole": "open_date", "date": [{"dateType": "Available", "dateValue": "2018-02-20"}], "displaytype": "detail", "download_preview_message": "", "file_order": 0, "filename": "ot4540-1.pdf", "filesize": [{"value": "420.5 kB"}], "format": "application/pdf", "future_date_message": "", "is_thumbnail": false, "licensetype": "license_note", "mimetype": "application/pdf", "size": 420500.0, "url": {"label": "ot4540-1.pdf 要旨", "objectType": "abstract", "url": "https://nagoya.repo.nii.ac.jp/record/9612/files/ot4540-1.pdf"}, "version_id": "786a02e2-5225-4225-82f8-2ecaa3363c59"}, {"accessrole": "open_date", "date": [{"dateType": "Available", "dateValue": "2018-02-20"}], "displaytype": "detail", "download_preview_message": "", "file_order": 1, "filename": "ot4540.pdf", "filesize": [{"value": "11.1 MB"}], "format": "application/pdf", "future_date_message": "", "is_thumbnail": false, "licensetype": "license_note", "mimetype": "application/pdf", "size": 11100000.0, "url": {"label": "ot4540.pdf 本文", "objectType": "fulltext", "url": "https://nagoya.repo.nii.ac.jp/record/9612/files/ot4540.pdf"}, "version_id": "e8f2dd2d-7cfd-4d72-8d5c-aa28b60eb191"}]}, "item_language": {"attribute_name": "言語", "attribute_value_mlt": [{"subitem_language": "jpn"}]}, "item_resource_type": {"attribute_name": "資源タイプ", "attribute_value_mlt": [{"resourcetype": "doctoral thesis", "resourceuri": "http://purl.org/coar/resource_type/c_db06"}]}, "item_title": "不整形地盤の振動特性に関する研究", "item_titles": {"attribute_name": "タイトル", "attribute_value_mlt": [{"subitem_title": "不整形地盤の振動特性に関する研究", "subitem_title_language": "ja"}]}, "item_type_id": "12", "owner": "1", "path": ["607"], "permalink_uri": "http://hdl.handle.net/2237/11409", "pubdate": {"attribute_name": "PubDate", "attribute_value": "2009-04-10"}, "publish_date": "2009-04-10", "publish_status": "0", "recid": "9612", "relation": {}, "relation_version_is_last": true, "title": ["不整形地盤の振動特性に関する研究"], "weko_shared_id": -1}
不整形地盤の振動特性に関する研究
http://hdl.handle.net/2237/11409
http://hdl.handle.net/2237/11409349deee2-e905-4cce-8112-deabdd605674
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
---|---|---|
![]() |
|
|
![]() |
|
Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
公開日 | 2009-04-10 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 不整形地盤の振動特性に関する研究 | |||||
言語 | ja | |||||
著者 |
今岡, 克也
× 今岡, 克也 |
|||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | open access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||
抄録 | ||||||
内容記述 | 近年,強震計の普及により,大地震が発生すると非常に多くの地震記録が得られるようになってきた。これらの記録は,震源のメカニズムや地震動の距離減衰特性などの地震工学的な研究とともに,表層地盤の影響を考慮した地震力の設定という面で耐震設計や地震防災の研究にも利用され始めている。一般に,地表面上で得られた地震動の加速度波形のスペクトル特性は,①震源の特性,②震源から基盤上面までの距離減衰特性,③基盤上から地表面上までの表層地盤の特性の3つに分離して考えることができる。この中で,表層地盤の特性は各地域の地震力を設定する際には最も重要なものであるが,敷地周辺の地下構造が水平方向に連続していると仮定して1次元的に評価される場合がほとんどである。しかし,構造物が多く建設される堆積平野では,堆積層と基盤との内部境界面は,ある傾斜角を持って自然に堆積層が薄くなる,断層で急激に厚さが変化するなど,水平方向に幾何学的な不規則性を有している。そのため,鉛直下方から上昇してきた地震波はこの傾斜面で屈折して斜め方向に平野内に入り込むことになり,このような地盤の振動特性を把握する場合には,水平方向の不規則性の影響を考慮できる2次元あるいは3次元的な取り扱いが必要になる。一般に,不整形地盤は「水平方向に地形的及び地質的に不規則な地盤」と定義され,不整形さを有する部分に着目して,①崖地形や谷地形のように地表面形状が不規則な地盤,②沖積谷や埋立地のように表層地盤と基盤との内部境界形状が不規則な地盤,③斜面地形での切り盛り造成地のように地表面形状と内部境界形状の両方に不規則性を有する地盤の3つのタイプに分類できる。本論文の目的は,実地盤や構造物の常時微動観測による実証的な方法と2次元境界要素法による理論解析的な方法を用いて,①不整形地盤の振動特性と②不整形地盤上に建てられた構造物の振動特性を総合的に解明することである。不整形地盤の振動特性を実証的に解明するために,山斜面の一部を削り谷を埋めて造成された実在する埋谷地盤を対象として,地盤の特徴的な断面で多地点の常時微動観測を実施した。次に,この地盤を2次元境界要素法によりモデル化して,鉛直下方からのSH波入射に対する地表面や地盤内の定常応答特性を求めて1次元解析結果との比較・分析を行った。最後に,実証的な結果と理論的な結果を併せて,埋谷地盤の振動特性を内部境界形状の不規則性と関連させて総合的に解明した。さらに,数値解析的な方法によって,一般的な沖積谷地盤の振動特性を解明するために,沖積谷と基盤とのせん断波速度比,沖積谷の幅と深さの比,基盤の傾斜角を様々に変化させたパラメ一夕ー解析を実施した。そして,これらの結果から各々の要因が沖積谷上の振動特性に及ぼす影響について解明した。次に,不整形地盤上の構造物の振動特性に対する実証的な研究では,前述の埋谷地盤上に建てられた①埋土部と切土部をまたぐ建物と②埋土部を完全にまたぐ建物の2つのRC造学校建築を対象とした。地盤上と建物内の多地点常時微動観測を実施して,主に切土上を基準点としたスペクトル比から建物各部の振動特性を把握した。次に,この不整形地盤-構造物系を2次元境界要素法によりシミュレーション解析を実施して,得られた地盤や建物各地点の応答倍率特性を微動観測結果と比較することによって,不整形地盤が構造物の振動特性に及ぼす機構を総合的に解明した。さらに数値解析的な研究として,この埋谷地盤上に建てられる構造物の建設位置や形状を変化させたパラメーター解析を実施して,各々の要因が構造物の振動特性に及ぼす影響について解明した。第1章では,過去の地震被害と不整形地盤との関係を調査・分析して,①盛土地盤上,②崖縁,③硬質地盤と軟弱地盤の境界部,④基盤の傾斜角が急変する地域,などで構造物の被害が集中することを指摘した。さらに不整形地盤の振動特性に関する既往の研究を調査して,理論解析的な研究に比較して,地震観測や現地実験・模型実験などの実証的な研究が非常に少ないことを指摘した。第2章には,不整形地盤の振動特性を実証的に把握する方法として利用した微動観測について記述してある。微動は,その支配的な周期成分が①1秒以下の常時微動と②1秒以上の長周期微動の2種類に分類できる。はじめに,これら2種類の微動の既往の研究を調査・分析して,沖積層や堆積層が厚い地盤上での微動は,卓越周期が長くなるとともにスペクトルの卓越するピーク数が増加する特徴があることを指摘した。次に,足柄平野で実施された微動観測を例にして,微動の種類,観測する時間帯による変化,表層地盤の影響などに対する微動波形やスペクトルの特徴を指摘した。その際,波形解析法の一つである平均フーリエスペクトルは,従来のParzenウインドウ等により平滑化されたスペクトルに比較して,長周期域や人工的な外乱が多い場合でのピークを鮮明に得ることができることを強調した。さらに,微動の振動数特性は入力彼の特性と表層地盤の増幅特性に分離できることを具体的に示すために,長さの相似比が1/50のシリコン地盤模型上で常時微動観測を実施した。そして,模型の基盤上を基準点とした微動のスペクトル比によって得られた地盤模型の振動特性は,振動台加振実験による結果と良い一致を示すことから,常時微動は表層地盤の振動特性を十分に反映していることを強調した。第3章には,不整形地盤の振動特性を理論解析的に把握するために利用された境界要素法の概要と,2次元SH波場問題に対する解析手順を詳細に記述してある。そして,この間題に対して境界要素法を適用すると,散乱波を容易に考慮でき,自由度が非常に少なくてすむ,などの長所が十分に生かせられるために非常に有効であることを強調した。また,濃尾平野を対象として実施された数値解析例を紹介して,基盤の傾斜角と平野上の振動特性を関連させて,以下のようにまとめた。(1)基盤傾斜角が約4°と非常に緩やかに変化する地表面上の増幅特性は,直下の地下構造を仮定した1次元解析による結果と良く対応する。(2)基盤の傾斜角が90°に近い断層付近の地表面上では,①卓越振動数を示すピーク数が増大し,②全体的な卓越振動数がやや高めに推移し,③局所的な増幅率が1.5倍程度まで大きくなる。第4章では,不整形地盤の振動特性と構造物に及ぼす影響を実証的に把握するために実施された常時微動観測とその結果の分析について記述してある。はじめに,前述の埋谷地盤上で実施された多地点の常時微動観測について示し,埋谷地盤の振動特性を把握するために,造成工事前の自然地盤での観測結果や切土上で基準化されたスペクトル比が利用された。その結果,谷筋方向と谷筋直角方向の振動で基盤傾斜が及ぼす影響が大きく異なり,特に谷筋方向では両側の基盤が内側に傾斜するために,鉛直下方から上昇する波の焦点化によって地表面上に局所的な増幅が生じることを明らかにした。次に切土部と埋土部をまたぐように建てられた2つの学校建築を対象とした微動観測を示し,建物の建設工事毎の観測結果や前述のスペクトル比を利用して,埋谷地盤の振動性状が構造物に及ぼす影響について分析した。その結果,硬質な切土部と軟弱な埋土部にまたがる構造物はねじれ振動が励起されるために構造物内部には局所的に水平方向の歪が生じるが,埋土部を完全にまたいだ構造物にはその影響はかなり小さくなることが明らかにされた。第5章では,より一般的な沖積谷地盤の振動性状とその機構を解明する目的で行われた2次元境界要素法による数値解析結果とその分析について記述してある。はじめに沖積谷地盤を規定する量として,①基盤と沖積谷のせん断波速度比,②沖積谷の幅と深さの比,③基盤の傾斜角を選定して,それぞれをパラメトリックに変化させて平野上各地点の振動特性を数値解析的に求めた。次に,この結果を1次元解析による結果と比較・検討して,各々の要因が沖積谷地盤の振動特性に及ぼす影響について以下のようにまとめた。(1)基盤の傾斜による影響は,入射波の振動数が谷の最大深さの1次卓越振動数より低い場合には相対的に小さいが,これより高い振動数域で顕著になる。(2)沖積層と基盤とのせん断波速度比と基盤傾斜の影響には密接な関係があり,その比が1:1.5以下の場合には局所的な増幅はほとんど生じないが,それ以上になると影響は顕著になる。(3)沖積谷地盤の深さに対して幅を広くすると応答倍率特性と位相特性は全体的には1次元解析による結果に接近するが,倍率特性に生じる小さなピークの個数は増加する傾向にある。第6章では,2章から5章までの研究結果を統合させて,本論文の目的である不整形地盤の振動特性について以下の4つの特徴を指摘した。(1)地盤の伝達特性は,成層地盤を仮定した1次元解析結果と比較して,卓越振動数を示すピーク数が増加するために複雑になる。(2)地盤上の局所的な増幅率は,成層地盤のインピーダンス比から求められる値より増大する。(3)基盤が平坦な地盤の卓越振動数は,1次元解析結果と比較して高めに推移する。(4)地盤の位相特性は,成層地盤を仮定した1次元解析結果と比較して,急激に変化する頻度が多くなるために非常に複雑になる。さらに,このように複雑な不整形地盤の振動特性を求めるために微動観測を利用することは,観測方法が非常に簡便であり,上記の特徴を大略的には良く捕えることができるため,有効な手法であることを指摘した。 | |||||
言語 | ja | |||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | ||||||
内容記述 | 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (論文) 学位授与年月日:平成6年1月31日 | |||||
言語 | ja | |||||
内容記述タイプ | Other | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源 | http://purl.org/coar/resource_type/c_db06 | |||||
タイプ | doctoral thesis | |||||
書誌情報 |
発行日 1994-01-31 |
|||||
学位名 | ||||||
言語 | ja | |||||
学位名 | 博士(工学) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||
学位授与機関識別子 | 13901 | |||||
言語 | ja | |||||
学位授与機関名 | 名古屋大学 | |||||
言語 | en | |||||
学位授与機関名 | Nagoya University | |||||
学位授与年度 | ||||||
学位授与年度 | 1993 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 1994-01-31 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 乙第4540号 | |||||
フォーマット | ||||||
application/pdf | ||||||
フォーマット | ||||||
application/pdf | ||||||
著者版フラグ | ||||||
値 | publisher | |||||
URI | ||||||
識別子 | http://hdl.handle.net/2237/11409 | |||||
識別子タイプ | HDL |