@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009613, author = {奥宮, 正洋}, month = {Mar}, note = {本研究において、気体と固体の界面における反応を利用した鋼中への炭素、窒素侵入に際して発生する各種特異組織の発生条件を明確にし、特異組織発生メカニズムの解明、および特異組織を発生させず、鋼中へ炭素、窒素を高効率に侵入させる方法についての研究を行った。この論文は10章から構成されており、それぞれの要旨を以下に示す。第1章は序論であり、鋼への炭素、窒素侵入に対するこれまでの研究状況を述べ、明確になっていない研究分野を示して、本研究の位置づけを行っている。第2章では供試材に純鉄および低炭素鋼の箔を用い、ガス浸炭窒化する際の炉内雰囲気制御を露点と炉内アンモニアにより行い、鋼中の炭素、窒素量を変化させ析出する各種特異組織発生限界の温度依存性を検討した。析出した特異組織はボイド、セメンタイトおよび黒鉛である。さらに各種特異組織の析出メカニズムについて、鋼中炭素および窒素の役割を検討した。両鋼種とも、ボイド析出限界線は処理温度が上昇すると、また処理時間が長くなると低窒素側へ移動する。セメンタイトおよび黒鉛析出限界線は処理温度が上昇すると高炭素側へ移動するが、セメンタイトおよび黒鉛析出限界炭素濃度は処理時間によらず一定である。またセメンタイト析出限界炭素濃度は鋼中窒素濃度に影響を受けない。同一処理条件では、純鉄と低炭素鋼のセメンタイトおよび黒鉛析出限界線に差はないが、低炭素鋼のボイド析出限界線は純鉄に比べ常に低窒素量側に存在する。これは低炭素鋼は非金属介在物を含有し、また結晶が微細なためである。両鋼種とも鋼中窒素量が約0.1mass%以上となる浸炭窒化処理の場合にのみ黒鉛が析出している。ここで、黒鉛析出時には必ずセメンタイトが存在し、黒鉛はセメンタイトの内部または近傍に多く認められるが、セメンタイトから離れた鋼の内部にも存在する。また、鋼中に侵入した窒素は、黒鉛の析出を助けることを示した。第3章では、低合金鋼の棒材をメタンと水素の混合ガス中でプラズマ浸炭し、試料近傍ガスをピストンとシリンダにより採取し、浸炭ガス中のメタン濃度をガスクロマトグラフィーを用いて測定し、処理温度、プラズマのエネルギと真空ポンプの排気速度が残留メタン濃度に与える影響について検討した。その結果、メタンの分解速度が遅いため浸炭中のメタン分圧は理論平衡分圧よりもはるかに大きかった。メタンは加熱により分解し、残留メタン濃度は高温ほど低い。さらに、残留メタン濃度はプラズマエネルギにより分解する。また、排気速度を上昇させると浸炭ガスの炉内滞留時間が短くなり、炉内残留メタン濃度が増加する。つぎに、残留メタン濃度、処理温度、圧力、時間、排気速度が試料の表面炭素濃度に与える影響について検討した。その結果、試料の表面炭素濃度は、1203-1373Kの温度範囲では残留メタン濃度により決定され、残留メタン濃度が増加するほど増加する。安定なグロー放電下では、チャンバ内圧力が高いほど、排気速度が大きいほど、処理時間が長いほど、試料の表面炭素濃度が増加する。さらに、試料に侵入した炭素原子数は、プラズマ発生により分解したメタンから放出された炭素原子数と一致することを示した。第4章では、プラズマ浸炭における試料寸法、炉内メタン濃度と処理時間が試料炭素濃度および組織に与える影響について検討した。供試材には厚さ0.25mmの低炭素鋼箔および0.06mmの工業用純鉄箔を用いた。プラズマ電圧を一定に保つと、プラズマ電流は、試料寸法に正比例し、電流密度と炭素濃度は一定となった。最大炭素濃度に到達するのに要する時間は、炉内メタン濃度が高いほど短く、さらにプラズマ浸炭を続けると、炭素濃度は、僅かに減少し、試料表面近傍にフェライト層が発生する。これらの試料の炭素濃度は、炉内メタン濃度と処理時間に関係なく低炭素鋼においては1.1mass%となり、工業用純鉄においては0.7mass%となる。これは試料表層に発生するフェライト層の厚さが試料によらず一定であるため、試料厚さの薄い工業用純鉄の方が低炭素鋼より炭素濃度が低い結果となる。煤が試料表面に発生している試料にのみ脱炭が発生する。これは、煤発生により試料表面に形成される炭素皮膜が試料中への炭素供給を妨害し、プラズマにより活性化されていない処理雰囲気ガスに試料がさらされるためである。第5章では、プラズマ浸炭における処理時間、プラズマ電流、電圧が侵入炭素濃度に与える影響について、供試材に短時間で試料内部の炭素濃度が一定となる、厚さが0.25mmの低炭素鋼箔を用いて調査した。プラズマ電流、プラズマ電圧および処理時間の増加は試料中の炭素濃度を増加させる。高プラズマ電流では処理時間の増加にともない炭素濃度の増加率が小さくなる。浸炭処理中のプラズマ電流および処理時間を一定とすると、炭素濃度はプラズマ電圧の一次式で近似される。任意のプラズマ電圧と処理時間における炭素濃度は標準プラズマ電圧を用いた近似式により計算可能である。この式を用いることにより、処理条件から実際にプラズマ浸炭を行う前に予め炭素濃度を推定することが可能である。第6章では、浸炭ガスにプロパンを、供試材に低炭素鋼箔を用い、処理時間、プラズマ電流、プラズマ電圧が試料炭素濃度に与える影響について検討を行った。導入ガス中の炭素原子数を同一として処理を行うと、プロパンを用いた浸炭ではメタンを用いた浸炭の2.6倍の試料炭素濃度が得られる。これはプロパンがメタンより分解し易いためである。プラズマ電流、プラズマ電圧が大きく、処理時間が長いほど試料炭素濃度が増加する。全ての導入プロパン濃度において、試料炭素濃度は処理時間の増加にともなって増加し、一定値に収束する。この試料炭素濃度が一定となる値はメタンの場合と同じである。浸炭処理中のプラズマ電流を一定とすると、試料炭素濃度は処理時間、平均プラズマ電圧、標準プラズマ電圧によって表される。この式を用いることにより、処理条件に対する試料炭素濃度の予測ができることを示した。第7章では、純鉄および低炭素鋼箔を供試材に用い、ガス浸炭窒化における炉内残留アンモニアの増加速度が、ポイド発生および鋼中窒素量に与える影響について検討した。従来のガス浸炭窒化法では窒素濃度が約0.4mass%に到達すると表面層に直ちにボイドが発生し、窒素濃度が急激に減少する。本章では、ボイドを発生させずに高窒素濃度を得る、新しい残留アンモニア増加法という処理法を確立した。純鉄のボイド発生臨界窒素量、および低炭素鋼のボイド発生臨界窒素量は、処理時間の対数関数式で表される。ボイドが発生する残留アンモニア増加速度は、ポイド発生臨界窒素量の指数関数式で表される。例えば処理時間が1.8ksでは、アンモニア増加法において、純鉄ではボイド発生臨界窒素量は従来法の約1.5倍の0.78mass%となり、低炭素鋼では従来法の約2倍の約0.81mass%となる。第8章では低炭素鋼、中炭素鋼、および低合金クロム鋼を用い、特異組織が機械的性質に及ぼす影響を調査するとともに、残留アンモニアを増加させたガス浸炭窒化で処理した中炭素鋼材の耐摩耗性および疲れ強さについて検討した。セメンタイト析出により焼き付き面圧が多少向上するものの、ボイドは摩擦係数を上昇させて焼付きを起こりやすくし、ボイドの発生は摩耗量を増加させ、セメンタイトの発生は僅かであるが摩耗量を減少させる。アンモニア増加法で処理した中炭素鋼材の耐摩耗性は、従来のガス浸炭窒化法で処理した際の約3倍であった。これは焼戻し軟化抵抗の向上と摩耗試験中に残留オーステナイトがマルテンサイト変態し、表面硬さが上昇したためであった。アンモニアー定法でガス浸炭窒化した中炭素鋼は、処理時間が短く有効硬化深さが0.37mmと小さい場合も、864MPaの疲れ強さが得られる。よって、合金鋼に比べ中心部の焼入性に制約があるが、小物部品では合金鋼より低価格な中炭素鋼の使用が可能である。また、アンモニアー定法でガス浸炭窒化処理した鋼材の疲れ強さは侵入窒素主に影響をうけ、最大の疲れ強さを得るには、ボイドを発生させず許しうる限り多くの窒素を侵入させる処理が有効である。アンモニア増加法で処理した中炭素鋼材の疲れ強さは、従来のガス浸炭窒化法で処理した際と変わりがなかった。亀裂の発生と伝播を阻止していた残留オーステナイトが疲労試験中にマルテンサイト変態していた。第9章では、オーステナイト状態における気体/固体闇の反応により炭素および窒素を侵入させた隙の特異組織発生を防止しつつ、高効率的に炭素、窒素を侵入させるプロセスのエ業的応用について検討した。例えば、炉内残留ガス濃度およびプラズマ電圧、プラズマ電流による炭素濃度制御法が高濃度浸炭に利用可能である。また、炉内残留ガス濃度およびプラズマ電圧、プラズマ電流による炭素濃度制御法を用いると、目標とする炭素濃度プロファイルを得ることが可能となる。一方、アンモニア増加法によるガス浸炭窒化処理は、生産型の炉であるオールケース型バッチ炉に炉の改造なく利用することが可能であり、処理後のオーステナイト量およびその形態を制御することにより、耐摩耗性、または耐疲れ強さの向上が行えることを示した。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (論文) 学位授与年月日:平成6年3月2日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {鋼への炭素、窒素侵入の高効率化に関する研究}, year = {1994} }