@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009614, author = {伊東, 孝}, month = {Nov}, note = {ひずみ局所化に伴って、地下空洞や橋梁基礎等の地盤構造物が進行性破壊を起こす現象は、山はねやすべり破壊を典型的な例として良く知られている。大深度地下の公共利用や超伝導電力貯蔵施設が計画されているおり、これら地盤構造物の安定性を適正に評価することは工学的にも重要な課題となっている。ひずみ局所化理論は構造物の局所的な破壊が全域的なせん断破壊を引き起こす際の鍵となる概念である。しかしながら、ひずみ局所化問題に内包される有限弾塑性理論、地盤材料の構成則および安定性判定条件の各項目は、いずれをとってみても理論的に解決困難な問題である。これらの諸問題を解明するために理論的・実験的両側面から盛んな研究が行われているが、現状ではひずみが局所化したせん断帯の発生・進展のメカニズムに関しては、まだ不明な点が多く残されている。例えばは堆積岩(主に砂岩)よりなる岩盤中に発生したせん断帯の写真である。この図で見られるように局所的なせん断帯の方向と全体破壊を引き起こすせん断帯の方向は明瞭に異なる。この現象は、Chang and Asaroの単結晶のアルミニウムの一軸引張り試験によっても確認されている。この場合の局所的なすべり面(coarse slip bands)と全域的なせん断帯(macroscopic shear bands)のなす角は4 ~6°と報告されている。この全域的なせん断帯の発生・進展の条件が、一般的に安定性判定条件によって求められ、したがって構造物の全体破壊を引き起こす条件が、これによって導かれると考えられているわけである。従来、岩盤基礎、トンネル、斜面およびダムのような岩盤工学の典型的な問題を見た場合、変形の問題と安定性の問題が分離され、別体系の解法が適用されている。斜面および基礎構造物では、円弧すべり面法やTerzaghiの支持力理論に基づいた設計・施工管理を行っている。ここで抱えている問題点は、微小でも変位が生じた場合は破壊に到ってしまうのか、また、どの程度の変位量までなら許されるのか等、施工中の変位の管理が不可能であるということが挙げられる。さらに、変位が発生した場合の補強設計が過大になってしまい、抑止工を行うタイミングや場所などが決定できず、適切な抑止工の設計が困難になるという問題もある。このように現実の現象は崩壊、すなわち破局的な大変形に到るまで、変形が増大していく過程をたどるのであるから、崩壊に到るまでの変形過程を追従し得る解析法を確立することは重要な課題である。有限要素解析は変形解析にはその威力を十分に発揮し数多くの成果を挙げてきているが、安定問題のような極限状態を対象とするような問題にはあまり適さないと言われている。このことは、弾塑性理論を適用して安定問題の解析を行う場合、この安定性の判定条件としてDruckerの安定条件を用いているからである。この条件では、塑性仕事が零になったときが変形の安定性が崩れる状態であり、弾塑性マトリックスの正定値性が崩れる状態、言い換えれば弾塑性マトリックスが零の固有値を持つ状態となる。この状態は有限要素解析では非常に不安定な状態であり、実質的には、解析不可能となったときがこの状態であろうと判定して極限耐荷力を算定しているのが実体である。しかし、Rudnicki& Riceは塑性変形が不安定になり、変形が集中したせん断帯が形成される条件は弾塑性マトリックスとある方向ベクトルとから決まることを明らかにした。この条件は局所化条件と呼ばれ、弾塑性構成則の楕円条件から直接的に得られ、境界条件は考慮されておらず、解の唯一性が崩れる上界値の一つであるといえる。本研究は、この局所化条件を有限要素解析に適用するものであり、さらに、この条件に構成則を適用し提案する構成則の有効性を検討するものである。解析手法には大きく分けて微小ひずみ有限要素解析と大変形有限要素解析手法を用いている。微小ひずみ有限要素解析では、局所化条件の判定を行い、局所破壊の位置とその方向を知ることにより全域的な破壊の形態の検討を行う。大変形有限要素解析では、尖り点効果を考慮できる構成則として多重応答理論を用いて、せん断帯の形成を試みている。本研究の目的は、以上のような手法により、破壊に到る変形過程までをも含めて、岩盤構造物の破壊形態及び極限耐荷力の検討を行うことにある。本論文の構成を各章に分けてまとめると、つぎのようになる。第2章では、塑性変形の不安定現象、すなわち変形が集中しせん断帯を形成する条件について述べた。基本概念が異なる次の二つの理論、すなわち、変形過程の安定性に基づいて変形の局所化現象を与える理論および不連続面の幾何学的適合条件に基づいて変形の局所化現象を与える理論から局所化条件を導き、塑性変形の安定性との関連についての考察を行い、また、局所化条件の物理的な解釈を与えることにより、局所化の変形モードの分類ができることを示した。さらに、局所化条件式より、弾塑性構成則を適用して変形の安定性を判定する際に、発生した局所破壊面の方向が得られる。様々な構成則を適用した場合に得られる不連続面の方向について検討を行い、応力状態や材料定数によって得られる破壊面の方向が変化すること、さらに、Mises材料の一軸圧縮状態では材料定数に関係なく55度の角度が得られることを示した。第3章では、地盤材料の支持力解析に有効な解析手法の一つとして、8節点セレンディピティ要素に4点ガウス求積法(次数低減積分)を適用する手法が挙げられる。この章では、完弾塑性体にこの手法を適用した結果について理論解との比較検討を行った。また、硬化型構成則を用いた解析においては、第2章で導いた変形の局所化条件式の判定を行い、局所破壊面の発生を逐次捉えることにより、極限支持力の推定および破壊面の推定に対する局所化条件の有効性の検討を行った。剛基礎直下は、現実的にも非常に局部破壊が起こりやすいところであり、一方、すべり面は全体破壊の際に発生するものである。これらのことを考え合わせると、変形局所化条件がある点で満たされるとその点は局部破壊してしまう可能性といくつかの点が集まって一つの面を形成し、拘束のない状態にまで広がった時点で全体破壊を生じる可能性が考えられる。本研究では、地盤構造物の地表面から地表面に局所化条件を満たす点がつながった時に、その面に沿った全体破壊が生じるものとして、地盤構造物の最終耐荷力の評価方法を提案している。なお、本章の有限要素解析では、有限要素網最適化を施した。この最適化は有限要素解析から得られる解の誤差を評価し、要素間の誤差の差を最小にするように節点を移動させる方法を採用し、得られる解の信頼性の向上を計っている。第4章では、地盤材料のような異方性破壊を示す材料の弾塑性挙動を表現するために、降伏関数にLode角成分を付加した多重応答理論を大変形弾塑性理論に拡張したモデルを提案し、その場合の局所化条件式を導いた。ここで言う有限弾塑性理論は、Hillによって導入されたもので、超弾性体の構成別から誘導される弾性体の速度形構成則を弾塑性体の場合も同一の形で表すことができるという考え方である。この際、流れ則を用いた構成則との比較をコンプライアンスマトリックスのランクに着目しながら概説している。一軸圧縮および三軸応力下における解の分岐を考察することにより、多重応答理論の局所化問題への適用性の検討を行い、流れ則を用いた場合よりも低い分岐条件を与えることが確認された。第5章では、大変形有限要素法の定式化を行い、第4章で局所化解析への有効性が確認された多重応答理論を構成則として適用した大変形弾塑性解析プログラムを開発した。このプログラムを用いて、純せん断問題の解析を行いプログラムの検証を行った。客観性を持った応力速度として本研究ではJaumannの応力速度を用いているが、この速度には大変形域において応力解が振動を起こす特性がある。地盤材料の弾塑性解析においては、この振動が生じるほどの変形が生じずJaumann速度を用いても問題ないことを示した。大変形解析手法には、基準となる座標系をどこにとるかでTotalLagrange 法とUpdated Lagrange法の二つの方法があるが、本研究では後者の手法を採用した。支持力問題の大変形弾塑性解析を行い、せん断帯の発生をシミュレートし、要素のゆがみによりせん断帯を表現した。また、ひずみ分布からもひずみの局所化が表現できていることを確認した。第6章では、本研究で得られた成果の総括を行うとともに、今後の課題について述べる。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (論文) 学位授与年月日:平成6年11月4日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {変形局所化理論を適用した岩盤構造物の安定解析に関する基礎的研究}, year = {1994} }