@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009619, author = {沢田, 善秋}, month = {Oct}, note = {本論文は,高密度磁気記録媒体である鉄超微粒子を大量かつ安価に製造することを目的に,沸点が低くしかも穏やかな条件で熱分解するFe(CO)_5を出発原料とし,磁場中気相化学反応により鉄超微粒子を作製し,その優れた磁気特性について研究した結果をとりまとめたものであり,7章より構成されている。第1章は,序論であり本研究の背景と目的を述べ,本論文の構成を概説している。さまざまな分野で超微粒子への関心,要求が高まっており,また高密度磁気記録分野での安価な超微粒子磁性体製造の要求がある。その中でFe(CO)_5は強磁性体金属のカルボニル化合物でありながら,1)低沸点,2)有機溶媒に可溶,3)穏やかな条件で熱分解が可能など他の有機化合物には見られない特異な性質を有する。これらは,分子レベルからの設計を必要とする今後の超微粒子磁性体や高分子複合材料を形成する原料として好ましい性質を有している。また,Fe(CO)_5はレッぺ反応を利用した化学工業で大量に用いられており,工業的に大量かつ安価生産が可能である。本研究では,安価で特異な性質をもつFe(CO)_5に着目し,それを出発原料とする高密度磁気記録用鉄超微粒子の製造に関する研究を行った。まず,Fe(CO)_5を出発原料とする高密度磁気記録用鉄超微粒子製造の可能性を探索した後,連続安定生産設備の開発,一次粒子径,二次粒子長さおよび形状の制御,磁気特性などについて研究を行なった。以下に本研究の概要についてそれぞれの章ごとにまとめて述べる。 第2章では,新たに開発したFe(CO)_5を原料とする磁場中気相化学反応による鉄超微粒子の生成について検討を行った。Fe(CO)_5が,有機金属化合物であるにもかかわらず沸点が103℃と低く,しかも100℃以下の低温領域で分解を開始する特異な性質を有することに着目し,Fe(CO)_5を原料とする磁場中気相熱分解による鉄超微粒子生成プロセスを提案した。超微粒子生成条件の検討を行い,その結果に基づいて反応器を製作し熱分解実験を行った。その際,反応器内の温度分布,磁束密度分布を実測し,また得られた粒子の形状を電子顕微鏡で観察するとともに,比表面積および磁気特性を測定した。また,反応器入口ガスの質量分析を行い粒子生成機構について考察した。その結果,原料濃度が0.2~1.0mol%,反応温度300~500℃の範囲で一次粒子径が15~20nm,で0.2~1.0mμmの二次粒子長さをもつ連結鎖状の鉄超微粒子を作製できた。これら粒子は,30~50m^2・g^{-1}の比表面積を有し表面の細孔分布が少なく,また粒子内部には,脱離したCOに起因するFe_3Cか存在することを確認した。。本生成粒子は,123~131kA・m^{-1}の保磁力と120~140Am^2・kg^{-1}の飽和磁化を有し高密度磁気記録材料として応用できることを見いだした。第3章では,連続安定生産のための反応器の形式について検討した。Fe(CO)_5を原料とする気相法鉄超微粒子の製造において,反応管外壁からの加熱によリFe(CO)_5を熱分解すると,管壁への粒子付着,管閉塞が生じ連続生産が困難となる。そこで反応方式の検討に先だって,可視化実験により原料の混合状態を検討した。さらに,付着を防止する手法として,予備分解の実施,反応器出口部および予備分解部での付着防止について検討した。その結果,原料の混合方式として,原料Fe(CO)_5をあらかじめ希釈した後ノズルから噴霧し,それに30℃の角度で主希釈窒素を円錐方向に衝突させる方式が最も付着が少ないことを見いだした。また,熱の供給方式は,外部から加熱するより希釈窒素を400~500℃に加熱して内部から与える方式が,瞬間的かつ大量に熱供給できるために反応濃度を大幅に増加でき,生産性を飛躍的に向上させることができた。原料Fe(CO)_5を20~30%予備分解させることによって,反応系での付着を皆無にでき,長時間安定に運転ができた。原料Fe(CO)_5を反応管へ導くノズルを2重管にし,外側に常温のシールド窒素を流すことによってノズル先端およびノズル内でのFe(CO)_5の分解を防ぐことができた。また,ノズル先端部でのクエ-ク渦による付着,閉塞を防止するためにCu数を2以下に抑える条件の設定およぴノズル先端部の面積を極力少なくするために,ノズル先端部を鋭利にすることによリウェーク渦の影響を回避できた。反応器出口での熱泳動沈着は,出口部に旋回流窒素を流すことにより回避できた。また,蒸発部での付着は蒸発部分と予備分解部分とを分離しコイル式分解管を用いて低温でゆるやかに分解させることによって実用上支障のない範囲まで改善できた。これら装置的工夫を加えることによって,従来超微粒子合成における難点であった付着,閉塞等の問題を解決し連続安定生産を実現した。第4章では,粒子生成機構と一次粒子径に影響を与える因子について検討した。Fe(CO)_5を原料とする気相法鉄超微粒子の製造において,一次粒子径と原料濃度,反応温度,および滞留時間との関係について調べ,これとUlrichの凝集成長モデルとを比較した。本法で得られた粒子は,粒子径が揃っており対数正規分布で近似でき,その幾何標準偏差は1.2~1.4であった。反応機構としては,主反応器の原料供給ノズル近傍では,核発生・析出成長機構が支配的であり,反応器中・後段部においては,凝集・成長機構が支配的であることを明らかにした。また原料濃度,滞留時間,原料の予備分解率が一次粒子径の制御に最も効果的であることを見いだした。印加磁場強度の一次粒子径への影響はないことを確認した。第5章では,二次粒子長さおよび磁気特性に影響を与える因子について検討した。Fe(CO)_5を原料とする気相法鉄超微粒子の製造において,二次粒子長さと一次粒子径および原料濃度,反応温度,および滞留時間との関係について調べた。また,二次粒子の粒子形状の定量化の指標としてフラクタル次元を導入し,試作テープあるいはフロッピーディスクの磁気特性との関係について考察した。さらに,粉体特性と磁気特性との関係を調べ,本法における最適な一次粒子径ならびに二次粒子長さの制御範囲について検討した。二次粒子長さは,対数正規分布を示しその幾何標準偏差は1.3~1.9であリー次粒子径の幾何標準偏差1.2~1.4より大きかった。一次粒子径は,磁場強度に影響されなかったが,二次粒子長さは外部磁場の増大とともに長くなリ0・15T以上の外部磁場で一定の長さとなることを確認した。本法で得られた粒子は,一次粒子径によらずほぼ一定の厚さと考えられる酸化皮膜の存在のため,比表面積の増加とともに飽和磁化が減少することを確認した。二次粒子長さは一次粒子径と相関があり,一次粒子径が大きいほど,二次粒子長さが長いことを見いだし,二次粒子長さは,一次粒子径と同様に原料濃度,滞留時間,原料の予備分解率で制御できることを明らかにした。また,一次粒子径が20~30nmにおいて,粉体の保磁力が最大値120kA・m^{-1}を示し,二次粒子長さが長いほど角型比が高いことを見いだした。試作した磁気テープ等の静磁気特性は,市販ゲーサイト法鉄超微粒子とほぼ同等の性能であることを確認した。本粒子にはフラクタル性があり,フラクタル次元が小さい程,角型比の高いテープが作製できることを示した。第6章では,スケールアップの影響について検討した。Fe(CO)_5の気相熱分解において,反応管径をスケールアップした際の粒子特性への影響について検討した。一次粒子径,二次粒子長さおよび粒子形状への管径および反応温度ならびに原料濃度による影響について整理した。また,フラクタル次元と反応管径,一次粒子径および保磁力との関係についても検討した。その結果,一次粒子径および二次粒子長さは,管径にかかわらず反応温度と反応濃度により制御が可能であることを見いだした。また,連続安定運転を維持しつつ,1インチ管で得られた粒子特性と同じ粒子特性を2インチ管で得るには反応濃度と反応温度を下げる必要があり,その際,2インチ管での製出量は伝熱面積の制約上,1インチ管の約2倍であることを確認した。本プロセスで得られる粒子は保磁力が最大となる20~30nmの一次粒子径の範囲において,フラクタル次元は1.5~1.7の範囲であり,市販のそれとほぼ同等であった。また,一次粒子径とフラクタル次元および粉体の保磁力との関係は反応管径に依存しないことを見いだした。 第7章は結言であり,各章で得られた結論を総括して記している。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (論文) 学位授与年月日:平成7年10月5日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {Fe(CO)_5を原料とする鉄超微粒子の作製とその応用に関する研究}, year = {1995} }