@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009644, author = {米田, 雅彦}, month = {Jan}, note = {ヒアルロン酸はD-ダルクロニルーβ(1-3)-N-アセチルーD-グルコサミニルーβ(1-4)二糖単位の繰り返しより成る多糖である。その分子量は数千から数百万に及ぶ多分散性を示す。ヒアルロン酸が発見されて50年になりながらその生合成のメカニズムは未知の点が多い。ヒアルロン酸は細胞と細胞の間を埋めている細胞外マトリックスの主成分の一つであり、多量の水と結合して多孔性の水和ゲルをつくる。この性質にもとづいてヒアルロン酸の機能は強く外圧のかかる組織の構造物成分として圧縮や張力に対する緩衝体として働くとか、電解質をはじめいろいろな栄養物との弱い結合、離脱によって細胞の生理環境を整えるものと考えられてきた。一方、細胞増殖や細胞移動といった重要な生命現象に関わっているという多くの報告があるが、その作用機構は想像の域を出ていない。本研究は、マウス真皮線推芽細胞の培養系を用いてヒアルロン酸が細胞増殖の制御に直接かかわることを確かめるとともに、その作用機構の一部を次のように明らかにした。すなわち、培地に添加したヒアルロン酸は細胞が造る細胞外マトリックスのコンドロイチン硫酸プロテオグリカンと結合して、細胞外マトリックスに取り込まれる。これが引金にとなって細胞外マトリックスの構築に変化が起こる。最初に観察されるのはへパラン硫酸プロテオグリカンの減少であり、これにつづいてDNAの合成が開始される。さらにこの後に続いて起こる様々な細胞外マトリックスの変化により、ヒアルロン酸による細胞増殖の刺激は停止する。一方、ヒアルロン酸生合成に関しては、他のグリコサミノグリカンのようにコアタンパク質をプライマーにして合成されるのか、それとも別のメカニズムによって合成されるのか定説はない。新しいメカニズムが提唱され、合成酵素も単離したという報告があるがどちらも生合成機構の全容を明らかにするものとはなっていない。本研究は生合成プライマーとしてのコアタンパク質の有無をはっきりさせることが生合成機構解明にとって重要であるという観点から始められた。しかし、マウス真皮線推芽細胞が生産するヒアルロン酸の構造解析はプロテオグリカンのコアタンパク質のような構造は存在しないことを示した。それに代わってヒアルロン酸と非共有結合で会合し、強いタンパク質変性剤や界面活性剤でも解離しない分子量85000のタンパク質(85kDaタンパク質と名付ける)が発見されることとなった。[3H]ロイシン、[35S]メチオニンあるいは14C-アミノ酸混合物を用いる代謝標識実験はこのタンパク質は細胞自らが合成するものではなく、培地に含まれる牛胎児血清由来であるという意外な結果を導いた。このタンパク質は調べた限りヒアルロン酸以外のポリアニオン(例えばコンドロイチン、コンドロイチン硫酸、へパラン硫酸、デキストラン硫酸、DNAなど)とは結合せずリガンドに対する高い横道特異性を示した。85kDaタンパク質とヒアルロン酸との結合はヒアルロン酸由来の10糖によって阻害されるが8糖以下のものでは阻害されないことから、両者の結合反応には少なくとも10糖(繰り返し単位5つ)の構造単位が必要であることが明かとなった。85kDaタンパク質はオクチルセファロースと結合し、それを遊離するには界面活性剤を必要とする点から、このような疎水性により培地中の85kDaタンパク質は細胞膜に結合するものと推定される。事実85kDaタンパク質に対する抗血清を用いた免疫組織学的観察により、培養マウス真皮繊維芽細胞などの表面周辺にこのタンパク質が集中分布していることが示された。したがってヒアルロン酸の細胞表面への結合をこのタンパク質が仲介している可能性が強い。興味深いことに、85kDaタンパク質を血清から除去すると細胞によるヒアルロン酸合成速度が低下する。85kDaタンパク質がヒアルロン酸合成をどのようにして調節するのかは今後の興味ある研究課題である。また以上のことは細胞のヒアルロン酸生合成が体中をめぐる血液によって制御されている可能性を示唆している。85kDaタンパク質を用いヒアルロン酸合成を増減させ細胞活性の変化を調べるという新しいヒアルロン酸生理機能の研究への道が開かれるかもしれない。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:理学博士 (課程) 学位授与年月日:平成1年1月28日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {ヒアルロン酸の生理機能と生合成に関する研究}, year = {1989} }