@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009669, author = {王, 志剛}, month = {Mar}, note = {最近,高精度で高付加価値を有する製品の需要量が急増し,それらの製造の経済性が要求されるようになってきた.例えば,複写機の普及により,その中心部品である感光ドラムの最終仕上げのダイヤモンド切削工程を無くし,塑性加工法のみで製作しようというニーズが出てきている.このような背景で,本研究は,塑性加工法による平滑表面(Rmax=0.1~0.2μm)の形成の最適条件,形成機構及び平滑化の限界を基礎的に究明することを目的としている.塑性加工法による表面平滑化では,材料変形による表面荒れ,工具・材料間の相対すべりに起因する焼付きおよび潤滑油の封じ込めによるオイルピットの残存が問題となる.これらを検討すると工具と同程度の仕上げ面が得られる工具一材料の接触状態として2通りがある.一つは,材料と工具との相対運動をほとんど無くして焼付きの発生を抑制し,転写条件である無潤滑あるいは低粘度油潤滑の条件を課す接触状態である.他の一つは材料と工具との間に相対運動を許すが,焼付き抑制のための潤滑油は材料面全体に均一に,工具面粗さと同程度の油膜厚みで面を覆う状態である.表面平滑化の課題をこのように整理してみると,この2種類の接触状態が一つの加工プロセスにおいて同時に異なった2箇所で実現できるしごき加工が表面形成機構を把握するための代表的加工法として注目される.しごき加工の表面問題に関する研究は,これまでほとんど実験的なアプローチからなされてきており,焼付きの発生およびその抑制や平滑面の形成条件に限っても多数見られる.これらの研究により,加工パラメータの変動による最終製品表面性状の変化が明らかになったものの,これに表面形成過程・形成機構ひいては平滑化の限界に関する立場から基礎的に取り組んだ研究はこれまでほとんど無い.塑性加工における表面形成機構の考察では,面圧,相対すべり量,母地変形量および潤滑油の挙動などの影響因子の把握が重要となる.そこで,本研究の第一段階として,しごき加工における表面平滑化過程に関する理論解析を行った.解析法として,塑性域内の応力やひずみ速度を得ることができ,加工条件の変化に対応した加工過程の変化を正確に予測することができる特徴を有するすべり線場法を用いた.すべり線場の形状はマトリックス演算子法を用いてコンピュータにより算出し,その場を用いて表面平滑化の主影響因子である面圧,相対すべり速度および表面層ひずみ量の変形域における分布と加工パラメータの変化に伴う変動を求めた.これらの結果を基にして,しごき面及びしごき裏面における表面平滑化過程の特徴を明らかにした.すなわち,しごき面では,表面性状は,ダイスの出入口においてひずみの集中により大きく変化し,接触界面においてはすべり線場のタイプによって変化程度が異なる.一方,しごき裏面では,表面性状は,塑性変形開始前の接触区間において面圧の増加により少し修正され,両圧のピーク位置に塑性変形の集中により大きく変化し,その後の接触区間において相対すべりがなくなるので保持される.次に,しごき加工実験における表面平滑化過程を詳細に観察し,上述した理論解析の妥当性を確認するとともに,巨視的な変形解析では予測し得ない微視的な挙動についても検討を加えた.工具・材料間に相対運動がほとんどないしごき裏面に関しては,以下のことを明らかにした.1)ビッカース圧痕のように比較的大きな表面凹部は母地塑性変形なく面圧のみでほとんど修正されないが,絞りカップのような細かい粗さを有する表面が面圧のみでもかなり修正され,また,いずれの場合も面圧下で母地塑性変形に伴い表面が大きく修正される。2)相対すべりがないため,表面凹部から油の引出しが生じ難く,油の適用により表面平滑化は著しく遅れ,平滑面形成には無潤滑に近い潤滑条件が最適である.3) 初期表面の粗さレベルによって平滑化に必要なしごき率が異なり,Rmax1.0μm程度では,しごき率約30%で工具面と同程度の製品表面が得られ,平滑化の限界に達した.4)上述した諸現象は,すべり線場理論で充分理解できるものであった.一方,しごき面では,相対すべりが大きいため焼付き防止の潤滑油を適用しなければならず,力学的影響因子と絡んで,潤滑油の挙動が平滑面形成にとって最重要な点となり,特に油の流出現象に着目すると以下のことが認められた.a)表面層に塑性ひずみを生じてから油は流出する.b)圧痕に油がトラップされる場合,圧痕は周囲の表面層材料と同一に伸ばされる.C)油の流出量は油が高粘度ほど,ひずみが大きいほど多い.d)油の流出方向は摩擦せん断応力方向である.これらの観察結果に基づいて,しごき面の接触状態モデルを提案し,潤滑機構・平滑化機構を明らかにした.それによると,平滑面を形成するために最適なしごき率と潤滑油粘度が存在すること,平均摩擦応力の最小値が現れる加工条件で最も平滑な表面が形成されることが予測される.このような潤滑機構の妥当性を検証するために,摩擦挙動を定量的に評価できる装置を開発した.摩擦係数と製品表面粗さに及ぼすしごき率,油の粘度などの影響を調べた結果,上述したモデルによる予測傾向と比較したところ,両者には非常に良い一致が得られた.また,初期粗さRmax=2.0μm程度では,しごき率約45%,P4潤滑で工具面と同程度の製品表面が得られた.以上の結果より,得られた平滑面の限界はしごき表・裏面の両者とも工具面と同程度であり,実用化に際しては両者にはそれぞれ長短があり,実際の要求に応じて選ぶ必要がある.本研究で提案した潤滑・平滑化機構は,塑性加工法の全般に適用でき,今後塑性加工法による精密加工を考える上で指針になるものと思われる., 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:工学博士 (課程) 学位授与年月日:平成4年3月25日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {しごき加工における表面形成機構に関する研究}, year = {1992} }