@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009670, author = {中野, 荘}, month = {Mar}, note = {ある種の気体を選んで放電すると、化学的に極めて活性なプラズマ状態が容易に得られる。この反応性プラズマは、近年、電子デバイスの製造工程であるエッチングやCVDなどに広く応用されている。しかしながら、薄膜デバイスの機能・特性に対する要求はますます厳しくなっており、これに応えるためにはプラズマプロセスの根本に立ち帰り、複雑な反応機構を十分に解明することが緊急課題となっている。プラズマ中では、高エネルギー電子がガス分子を衝突分解することによって、種々のラジカルが大量に発生する。このラジカル種がプラズマプロセスの主役を担っていることから、電子衝突による分子の解離の確率を与える解離断面積を実測することが重要な課題となっている。特に、電荷をもたない中性ラジカルヘの解離については、これを検出して計測することが極めて困難であることから、測定データが皆無に近い。このような状況の中で、反応性プラズマの理論解析やモデリングにおいてほ、最も基本となるラジカル発生率を計算するために、適当な解離断面積を仮定しながら研究が進められている。本研究では中性ラジカルに着目し、まず、中性解離の断面積を測定する新しい方法を開発している。次に、CVDやエッチングに用いられる代表的な反応性ガスに対して、この新しい測定法を適用し、電子衝突によってどのような中性ラジカル種がどの程度発生するかを電子エネルギーを変えながら詳細に調べ、中性解離の部分断面の測定に初めて成功している。本論文は以下の6章から構成されている。第1章は序論であり、プラズマ内の衝突素過程について概観し、衝突断面積の滑走に関する研究経過と現状について述べ、本研究の目的と意義を明らかにしている。第2章では、中性ラジカルヘの解離の断面積を測定する新しい方法について述べている。まず、親分子の解離イオン化のしきい値と、中性ラジカルのイオン化のしきい値の差を利用してラジカル種のみを選択的に電離する方法、すなわち、しきい値イオン化質量分析法の原理を示した。ついで、中性解離断面積を測定するために考案した二電子ビーム装置について説明している。すなわち、解離用ビームと検出用ビームを備え、それぞれ差動排気された3つのセルに高感度の四重極質量分析計を組み合わせた構成になっている。さらに、測定精度を向上させるためのデータ収録・処理方法および断面積の絶対値を較正する方法について詳述している。この新しい断面積測定法を3種類の反応性ガスに適用し、一連の中性ラジカル種へ解離過程の断面積を得ることに成功した。まず第3章では、ダイアモンド膜などのCVDに用いられるメタン(CH_4)について調べた結果を述べている。初めに、中性ラジカルの信号がメタン圧力と電子ビーム電流に比例することから、解離が一次反応であることを確認した。次にメタンから中性ラジカルCH_3,CH_2への解離が起こるしきい値エネルギーがそれぞれ9.O eV,14.O eVであることを初めて見出した。ここで得られたしきい値を理論と比較した結果、CH_2への解離反応はH_2分子ではなくH原子を生じる反応であることが示唆された。また、断面積の絶対値を評価するために、ラジカル信号の時間減衰特性を滑走してラジカルの表面損失係数を求めると共に、窒素分子の解離の実験を別に行って文献値と比較した。このようにして中性ラジカルCH_3,CH_2への部分解離断面積が初めて実測された。CH_3,・CH_2いずれの場合にも、断面積は電子エネルギーが25eV程度のときに最大値を示し、エネルギーを増すにつれて急に減少する特徴的な振舞いが明らかになった。第4章では、フロン(四フッ化炭素,CF_4)の中性ラジカルヘの解離について述べている。このガスは、SiやSiO_2 をはじめとする様々な材料のプラズマエッチングに広く用いられている。最近、電子衝突によるフロンの解離イオン化の断面積について詳細な検討が進められているが、中性解離に関してはほとんど手がつけられていない。これを明らかにするために本章では、しきい値イオン化法を駆使してフロンから各中性ラジカルCF_3,CF2_,CFへ解離する部分断面積を系統的に調べている。まず、それぞれのラジカルへ解離するしきい値エネルギーが初めて見出され、計算値との比較検討がなされた。断面積の絶対値を評価するために、解離用ビームを切った後のラジカル信号の時間減衰特性を調べて、ラジカルの表面損失係数を算出した。メタンの場合と同様な較正のプロセスを経て、フロンからCF_3,CF_2,CFへの解離の断面積の電子エネルギー依存性が初めて明らかになった。断面積は110~130eVの高いところにピークを持ち、さらにエネルギーを増すと緩やかに減少する傾向を示し、メタンとはかなり異なった結果が得られた。第5章では、シランフロライド(四フッ化ケイ素,SiF_4)の中性解離について一連の測定法果を述べている。このガスは、シリコン系材料をフロン系ガスのプラズマでエッチングするときに発生し、また、シリコン系薄膜のプラズマCVDを行う際の原料ガスとしても用いられているが、このガスの電子衝突過程の研究は極めて少ない。本研究ではメタン、フロンの場合と同様にして、しきい値イオン化質量分析法を用いて中性ラジカルヘの解離を調べると同時に、解離イオン化についても系統的に調べている。中性ラジカルに関しては、SiF_4 から各中性ラジカル種SiF_3,SiF_2,SiF,Siへの解離のしきい値と断面積の電子エネルギー依存性が明らかになった。第6章では、本研究で得られた結果を要約し、残された課題と将来の展望について述べている。以上のように、本論文は解離断面積の新しい測定法を考案・開発し、これまで未開拓であった中性解離過程の解明にこの方法が有効であることを実証し、反応性プラズマの理解と制御に不可欠なデータベースを提供するものである。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (課程) 学位授与年月日:平成5年3月25日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {電子衝突による反応性ガスの中性解離断面積の測定}, year = {1993} }