@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009685, author = {犬塚, 勝美}, month = {Mar}, note = {従来、直流モータ(以下DCMと略記)は制御が容易で高精度であるため、広く使用されているが、ブラシを有するため定期的な保守が必要であること、ブラシから発生する火花の電磁雑音による周辺電子回路の誤動作などの諸問題を解決する要求が高まっている。このため、ブラシレス構造でメインテナンスフリー、単純構造、堅牢、低価格等の特長をもつかご形誘導モータ(以下IMと略記)をDCMに置き換える動きが広がっている。この場合、IMのロータの滑りによる制御性能の低さが問題であったが、近年のサイリスタやパワートランジスタを用いるインバータやマイクロプロセッサによるパワーエレクトロニクスの発展により、ベクトル制御などの手法によりIMの制御性能をDCM並に近づけられるようになった。このベクトル制御法(1968年)は、IMの二次磁束をベクトルとして検出し、IMの状態量として制御回路に取り込み、一次電流のトルク電流成分と励磁電流成分とを独立に制御することによってIMの可変速制御やトルク制御を高精度に行う方法である。このベクトル制御法は、二次磁束ベクトルを演算によって推定する滑り周波数型ベクトル制御法と二次磁束ベクトルを直接検出して制御を行う磁束検出型ベクトル制御法とに大別される。これらのベクトル制御法により、すでに可変速制御のACサーボモータが実用化されているが、トルク制御系を構成する場合に次のような問題点が指摘されるようになった。すなわち、滑り周波数ベクトル制御法では温度変動によるIMの二次抵抗の変化によって制御精度が劣化すること、磁束検出型ベクトル制御法では高信頼性の磁束センサが未開発であることである。磁束検出をサーチコイルと積分器とによって検出する場合はIMの停止、始動など超低速運転において検出誤差が大きいことなどが知られている。これらの諸問題を直接解決する方法はIMの二次磁束または二次電流を高精度、高安定に検出するセンサを開発することであり、センサ内蔵の制御系を構成する方法である。本論文はかかる観点から、センサヘッドをIMのエンドリング近傍に設置して、二次電流を非接触検出する方法により二次抵抗の温度変動の影響を受けないトルク制御法を確立したものであり、次の5章より構成されている。第1章では、従来のIMの制御法(特にベクトル制御法)を述べ、その間題点を整理して本研究の目的と意義とを明らかにした。第2章では、本研究の基本となるIMの二次電流センサについて述べた。すなわち、アモルファスワイヤニ磁心マルチバイブレータに負帰還を施した高安定の磁界センサを新たに構成した。本センサの特徴をまとめると以下の通りである。(1) 微小寸法の磁気センサヘッド(2mm径、7mm長)であるため、IMのエンドリング近傍の狭い空間に設置することが可能である。(2) 磁気センサヘッドの環境温度が-196(℃)~200(℃)と大幅に変動しても磁界検出感度が一定であり、高安定である。(3) マルチバイブレータの発振周波数を数(MHz)程度と高くすることができるので、インバータ制御による二次電流の高調波成分まで十分検出することができ、高速応答、高精度の非接触電流検出ができる。(4) 強靭磁性体の零磁歪アモルファスワイヤを用いるため、耐衝撃性、耐振動性、耐食性が高く、高信頼性の電流検出ができる。本章では、センサの回路構成と動作原理、磁界検出の基礎特性を述べ、さらに磁気インピーダンス効果による新たな磁界センサについても述べる。第3章では、IMの二次電流の検出におけるヘッドの配置およびヘッドの数の効果について述べている。また、このセンサを用いたIMの新しい定常トルクの検出および、センサの出力電圧に含まれる低周波数によるロータの振動の解析およびこの周波数の振幅と定常トルクとの関係について考察を行い、以下の結果を得た。すなわち、単一ヘッドとしてはロータの種々の振動モードが検出でき、滑り周波数および回転周波数と滑り周波数との和、差の周波数などが検出された。8カ所のヘッド配置(ロータ両側)により励磁周波数をもち、振幅が二次電流に正比例することが分かった。8カ所のヘッドの配置によるセンサ出力に一次電流成分が混入する場合は、一次電流センサの出力によって一次電流分を相殺することで、二次電流を正確に検出できることを明らかにした。また、回転周波数と滑り周波数との和、差の周波数の発生原因はロータの歳差運動であることが明らかになった。さらに、その差周波数の振幅はIMの定常トルクに正比例していることも明らかになった。第4章では、製鉄の圧延機や製紙の巻き取りに用いられるモータには定常トルクの高精度制御が要求されている状況から、二次電流センサの出力を帰還したIMの新しい定常トルク制御系を構成した結果を述べている。そして、この制御系の帰還信号である二次電流センサ出力によるIMの回転速度の推定、二次抵抗の温度補償に関する解析を行った。このトルク制御系は、V/fを一定とする汎用インバータを駆動電源とした簡素な制御系である。二次電流センサの出力と二次電流指令値との差を積分することによってIMの回転速度が推定され、その推定値と滑り周波数指令値との和によってIMの励磁周波数指令値が得られ、インバータに出力される。また、このセンサ出力には二次抵抗の温度による変動分も含まれているため、二次抵抗の変動に対する温度補償が可能である。この結果、二次電流帰還方式により、IMの長時間定格負荷運転による自己発熱(100(℃))においても二次抵抗の変動(約27(%))の影響を受けず、制御誤差として5(%)以内の高精度制御ができることを明らかにした。また状態フィードバックを施すことにより、制御系の応答速度を向上させ、約2倍の高速応答性を得た。第5章では、二次電流センサ出力を帰還して二次磁束を直接検出する磁束検出型ベクトル制御法によるIMの瞬時トルク制御系を構成した。すなわち、この制御系は、回転速度センサを不要とし、制御系の制御アルゴリズムにはIMの一次抵抗や二次抵抗の値を用いないため、現在議論されている抵抗値の温度補償回路、補償アルゴリズムなども不要となり、簡素な制御系として構成されることを示した。以上のように、本研究は、IMに内蔵可能、IM内の温度変動や振動などの環境に耐えうる磁界センサの開発、そのセンサ出力を帰還した新しいIMのトルク制御系の構成を行い、理論解析、実験、シミュレーションによりその有用性を得たものであり、IMの動作の解析・設計法およびIMのトルク制御系の実用化に大きく寄与するものと考えられる。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (課程) 学位授与年月日:平成7年3月27日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {アモルファス磁気センサによるかご形誘導電動機の二次電流計測とトルク制御系に関する研究}, year = {1995} }