@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009687, author = {早川, 邦夫}, month = {Mar}, note = {一般的な工業材料では,外力の作用によって巨視的な変形だけでなく不可逆な微視的内部構造変化を伴うことが多く,これが材料の物理的非線形性の主な原因となる.このような微視的内部構造変化のうち,材料中の微視的空げきの発生・成長は,単に巨視的き裂の発生と最終的な破断を引き起こすだけでなく,破壊に至る過程において,引張り強度,剛性,靭性の低下,あるいは残存寿命の減少などのような材料の劣化,すなわち材料損傷の原因となる.また,このような微視的空げきの発生・成長は一般には応力の作用方向に依存し,材料損傷は顕著な異方性を示す.連続体損傷力学は,このような材料損傷による材料劣化,微視的き裂の発生から最終破壊に至る過程を,統一的に取扱うことのできる解析手法として大きな発展を遂げてきた.しかし,従来の大部分の研究では,損傷の発展式は変形の構成式とは独立に先験的な仮定によって定式化しており,その理論的基礎は必ずしも明確ではない.したがって,損傷力学による定式化を一層精密化するためには,損傷材料に対する構成式と損傷発展式の系統的な定式化のための理論的枠組みの確立が不可欠である.現在の非線形連続体力学では,非弾性変形を統一的に記述するための最も合理的な枠組みとして,内部状態変数を用いた不可逆熱力学構成式理論が提案されており,多くの研究がなされている.一方,連続体損傷力学における損傷変数は微視的空げきによる材料の内部構造変化を力学的に記述するための巨視的変数であるから,不可逆熱力学構成式理論における内部状態変数に他ならない.したがって,材料の内部状態変化である損傷を適切な内部状態変数で表現し,さらにその熱力学ポテンシャルと熱力学的共役力空間における散逸ポテンシャルを適切に規定することにより,損傷材料に対する統一的定式化が可能となる.また,損傷以外の内部状態変化を同時に考慮することにより,損傷と弾塑性,粘弾塑性,疲労などの連成をより系統的に扱うことが可能となる.しかし,従来の不可逆熱力学理論による損傷力学では,特に損傷発展式に対する熱力学的定式化およびその理論を裏づける実験的検討が十分行われているとは言い難い.本研究では,損傷力学における不可逆熱力学構成式理論の適用の可能性とその限界を検討するため,種々の特徴的な材料に対する損傷・変形過程のモデル化と実験的検討を行った.本論文は7章からなる.以下に各章の概要を示す.第1章は緒論であり,本研究の目的,背景,方針とともに,本論文の主な内容について述べる.このとき,特に本研究の理論的基礎として,損傷力学とそれへの不可逆熱力学構成式理論の適用についての従来の研究を展望し,その可能性,意義,問題点などを明らかにした.第2章では,本研究の展開のための理論的枠組みとして,不可逆熱力学構成式理論の概念,理論的基礎,可能性ならびに限界と,連続体損傷力学へのその応用の可能性を概説した.ここでは特に,これまでに提案されてきた熱力学理論に基づく損傷力学理論を展望し,損傷発展式の定式化に対しては必ずしも熱力学的制約を満足しているとは言えない理論が多いことを指摘した.第3章では,コンクリート,岩石等のように,弾性領域内で損傷が進行し,塑性変形を生ずることなく最終破断に至る弾性一脆性材料に対して,不可逆熱力学と損傷力学理論による構成式理論を展開した.このとき内部状態変数として,応力の作用方向に依存した微視的き裂による異方的な損傷状態を2階対称損傷テンソルDで記述するとともに,損傷材料に対するHelmholtzの自由エネルギーを,弾性ひずみテンソルε^eおよび損傷テンソルDの等方スカラー値関数として表現した.また,微視的き裂の開・閉口の影響を考慮するため,Helmholtzの自由エネルギーに修正ひずみテンソル\barε^eを導入することによってこの効果を表現した.一方,損傷発展を規定する散逸ポテンシャルは,損傷テンソルDに対する共役カテンソルYの2次同次式によって表現した.得られた構成式および損傷発展式の材料定数を,高強度コンクリートの単軸単調圧縮試験から決定した.導かれた式は,損傷の発達に伴う材料の剛性低下の様子をよく記述するとともに,圧縮と引張りにおける損傷状態の違い等を適切に表現できることがわかった.さらに,いくつかの異なる組合せ応力経路に村する損傷解析を行い,損傷の発達の応力経路依存性ならびにせん断応力の引張りひずみに対する連成効果も明らかにした.次に,第4章では不可逆熱力学構成式理論に基づく前章の損傷理論を弾塑性一損傷材料に拡張した.内部状態変数には,損傷テンソルDのほかに塑性変形による等方硬化を表現するスカラー変数rおよび引き続き生ずる損傷を規定するスカラー変数βを導入し,塑性挙動と損傷の非連成を仮定してHelmholtsの自由エネルギーおよび散逸ポテンシャルを規定した.ここでも,微視的き裂の開・閉口効果による損傷の応力方向依存性を考慮するため,修正ひずみテンソル\barε^eをHelmholtsの自由エネルギーに導入した.塑性構成式および損傷発展式は,塑性ポテンシャルおよび損傷ポテンシャルに対する法線則によって与えられることを示した.得られた構成式と損傷発展式を球状黒鉛鋳鉄の単軸引張りならびにねじり試験に適用し,その妥当性を検討した.その結果,塑性変形に伴って発展する損傷の影響を考慮することにより,弾塑性-損傷材料の応力ひずみ関係だけではなく,損傷の発達に伴う縦弾性係数E_1,Poisson比v_12,ならびに横弾性係数G_12の変化を適切に表現することができた.さらに,修正ひずみテンソル\barε^eの導入により,ねじり試験における二つの主応力の符号の違いによるそれぞれの方向の損傷発展の違いを適切に表現できることも明らかにした.不可逆熱力学理論は,熱力学的許容な構成式および損傷発展式を定式化するための制約条件を与えるにすぎないから,具体的条件下での構成式の基本的特性の同定は実験に待たなければならない.そこで第5章では,球状黒鉛鋳鉄の薄肉円管試験片を用いて,弾塑性-損傷材料における損傷面の存在とその力学的特性に対する実験的検討を行った.すなわち,第5章では,はじめにこの材料の基本的な弾塑性一損傷挙動を調べるために,その初期等方性と単軸引張りおよび単純ねじり試験による弾塑性一損傷挙動を弾性特性の変化によって調べた.つぎに,初期および後続損傷面の存在,形状,基本的特性などを明らかにするため,引張り-ねじり組合せ応力空間における初期および後続損傷面の存在とその形状に村する実験的検討を行った.損傷の検出には,材料内部の微視的き裂の発生・成長に伴って発生するAE(Acoustic Emission)を用いた.これらの実験の結果,初期等方である球状黒鉛鋳鉄では,引張りおよびねじり負荷に伴う損傷によって縦弾性係数E_1,Poisson比v_12および横弾性係数G_12がいずれも減少し,その弾性特性は異方的となることがわかった.また,応力空間内に損傷発生の限界を規定する損傷面が存在し,その形状は応力の静水圧成分に依存しMises型の応力条件では表現できないことを明らかにした.さらに,初期損傷面上の後続負荷に対しては損傷の継続的な発生が見られるが,除荷および中立負荷に対しては損傷は発生せず,負荷,除荷および中立負荷条件が成り立つ.しかし,応力空間内における損傷面が熱力学的な散逸ポテンシャル面として取り扱うことができるかどうかは,さらに適切な実験的検討が必要である.延性破壊が生じる程度の大きな変形状態においては,損傷の発生・成長に対する静水応力依存性,塑性ひずみ依存性が現れる.また,損傷面に対する実験的検討の多くは応力空間において行われている.したがって,弾塑性一損傷材料挙動をより精密に表現するためには,損傷の発達に対する塑性ひずみの影響を考慮するとともに,上述の実験的結果を構成式に適切に反映することが不可欠である.そこで,第6章ではGibbsポテンシャルを用いた新しい不可逆熱力学構成式理論を展開し,損傷共役力Yを応力テンソルσの関数として表現した.このとき,損傷ポテンシャル面に塑性ひずみに関連する等方硬化スカラー変数rを導入した.また,修正応力テンソル\bar{σ}をGibbsポテンシャルに導入することにより,本材料の微視的き裂の開・閉口効果による損傷の応力方向依存性を表現した.第6章ではさらに,得られた構成式および損傷発展式を,前述の球状黒鉛鋳鉄薄肉円管試験片による組合せ応力空間における損傷の実験結果に村して適用した.単軸引張り試験における応力ひずみ曲線,縦弾性係数E_1およびPoisson比v_12の変化,ならびに初期損傷面を表現できるように定めた材料定数を用いて,ねじり試験におけるせん断応力ーせん断ひずみ曲線および横弾性係数G_12,引張り-ねじり組合せ応力空間における後続損傷面,ならびに最終損傷(破壊)面を計算したところ,いずれの結果も理論とよい一致を示した.また,計算によって得られた損傷変数の発達は,単軸引張り,ねじり試験ともに,静水応力と塑性ひずみに対する顕著な依存性により,ほぼ等方的な挙動を示すことを明らかにした.第7章は,結論であって,本研究で得られた知見をまとめて示した., 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (課程) 学位授与年月日:平成8年3月25日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {不可逆熱力学構成式理論に基づく連続体損傷力学の研究}, year = {1996} }