@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009689, author = {東海, 彰吾}, month = {Mar}, note = {コンピュータ・グラフィックス(以下,CGと略す)は計算機により画像を合成する技術の総称であるが,従来のCGにおける表現対象は建造物や工業製品などの人工物が中心であり,自然界の対象を扱うことは計算機能力などの面からも難しいものであった.しかし,近年のCG画像生成のためのハードウェアの性能向上によってより複雑な対象を扱うことが可能となってきたこと,また,最近注目されるバーチャルリアリティなどにおける表示物として人間の身近な対象である自然物や自然現象を扱うことへの要求の高まりにより,CGにおいて表示可能な対象の拡充が求められている.さらに,自然現象に関してネットワークなど通じて多くの情報が比較的容易に入手可能となってきたが,これらを一つのCG映像としてまとめ,インタラクティブな操作で現象を観察することによって現象に関する総合的な理解が期待できる.また,CG映像が新しいメディアの視覚的な部分を担うことから,得られた情報をCG映像に加工してメディアに還元するということが重要になると考えられる.そこで,本研究では従来は表現の手法が報告されていなかった自然物を対象とし,その表面の凹凸の模様に着目した表現手法の開発,および,自然現象をCGアニメーション映像によって可視化し,対話的に視点変更や時間軸変更を行いながら現象を映像化し,利用者の現象理解を助けるシステムの開発を行った.CGにおいて自然物の表現を行う場合,自然物の持つ複雑さや多様さをいかに扱うかが問題である.自然物はCGにおける物体表示に必要な形状,動き,質感などの表現要素が人工物よりも複雑であり規則的な性質と不規則な性質が混在している.この様な表現要素を人間が手入力で設定するには大変な労力を要し,さらに,自然物らしさを損なうことが少なくない.そこで,自然物の持つ表現要素を計算機を用いて半自動的に設定することが有効であり,表現要素に対して実物の持つ特徴に基づいたモデル化を行い,これを用いた各要素の算出が行われるようになりつつある.しかし,現在報告されているのは実際に存在する自然物のごく一部分であり,これらの対象だけではCGにおける表現対象としては不十分である.そこで,これまで扱われてこなかった新しい対象に対する表現手法の開発が必要である.本研究では特に自然物の外観の特徴として重要と考えられる表面の凹凸テクスチャを扱う.基本的なテクスチャ生成の処理手順は,(1)基準点の配置,(2)基準点の移動,(3)図形の発生である.基準点の配置では,テクスチャが表面全体にほぼ一様であることを考慮し,平面上の格子点上にテクスチャ生成の基準点を配置する.次に,この規則的な基準点の並びを乱数を用いて平面上で移動して不規則な性質を付加する.この基準点をもとにして対象となる自然物の特徴を反映した図形を発生し凹凸テクスチャとする.この手順は幾何学的なものであり,この処理の適切な部分にフラクタルを用いた揺らぎを付加することにより,自然な印象を持つテクスチャの生成を行う.生成されたテクスチャを,別に設計した物体形状にバンプマッピングと呼ばれる凹凸の張り付けを行い,最終的な表示結果を得る.本論文では,具体的な対象として爬虫類皮革と柑橘果実を取り上げ,そのテクスチャを生成する手法を示し,最終的なCGによる表示結果を示す.爬虫類皮革の特徴は立体的なウロコの並びによる模様である.具体的な手順は,前述の基本手順における図形発生において,領域を最近傍則により分割するボロノイ分割と,ベジェ曲線により設定したウロコの断面形状を用いてテクスチャ生成を行う.本研究では爬虫類の中でも皮革製品によく利用されるワニ皮革を中心に扱い,実際のワニ皮革の持つ特徴を表現できる立体的なテクスチャの生成を行った.また,生成された皮革テクスチャを皮革製品を想定した物体形状に張り付けて表示することにより,皮革製品デザインなどへの応用の可能性も示した.実際に生成した爬虫類皮革テクスチャと皮革製品の表示例を図1に示す.柑橘果実表面の特徴は,果実全体が小さなくぼみで覆われていることである.このくぼみの形状と分布に注目し,図形生成において2次元のガウス型の確率密度関数によって定義された3次元的なくぼみ形状を平面上に分布してテクスチャを生成する.ここで,くぼみの間隔や形状などの幾つかのパラメータを調節してテクスチャの性質を制御することができる.本研究では,みかん,オレンジ,レモンの3種類の柑橘果実を扱い,個々の果実の表面の特徴の違いを表現した.さらに,みかんについては農芸の分野で報告された実測値に基づく果実の色変化モデルを用いて,より現実に近い果実の色表現の手法についても述べた.これは,時間経過に対する果実全体の平均色の変化モデルを用い,色変化にフラクタルを用いた色変化の時間差を導入した色むらを付加することにより,より現実に近いCG表現を得るものである.実際に生成した柑橘果実テクスチャを果実形状に張り付け,色変化モデルによる色むらを付加した表示例を図2に示す.本研究で提案したテクスチャ生成手法は,幾つかのパラメータの設定によって異なる性質のテクスチャ生成が可能であり,今後は他の対象への適用が課題である.一方,CGの応用分野である科学的可視化においては自然現象を扱うことが注目されている.科学的可視化は,実際に目にすることが困難な現象などをCGを用いて映像化し,その理解を助けるものであり,これまで材料力学や流体力学などの分野で利用されてきた.さらに,従来の可視化では,現象の一部分をCGアニメーションを用いて表示するのみであったが,グローブデバイスなどのバーチャルリアリティの技術と結びつけて,対話的な操作による現象観察が行われるようになりつつある.ここでは,現象観察の視点や時間軸を対話的に変化可能なシステムが望まれ,その実現によって自由な観点からの現象観察ができ,新しい現象の理解が期待される.また,最近注目されるインターネットなどを通じて,現象についての最新の情報を世界中から入手することが容易になりつつあるが,ネットワークで公開される情報は現象のごく一部を表すものが多く,実際の現象の全体像がどの様なものかを理解することは難しい.そこで,これら個々の情報をひとつにまとめ,対象となる現象を総合的に映像化することが望まれる.さらに,その映像をネットワークに還元することにより,科学的な教育や啓蒙に重要な役割を果たすことが期待され,可視化技術の新しい可能性として重視されている.本研究では,自然現象を様々な情報源から集められた関連する情報に基づいてCGアニメーション映像として可視化し,さらにマウスなどのⅠ/0デバイスを用いて対話的に視点や時間経過を変更しながら現象を観察できるようなインタラクティブ可視化システムの開発を行った.本研究における可視化システムは,基本的な機能として,ある現象についてインターネットやCD-ROMなどから収集された様々な内容・形式の情報をCG映像に反映させるために,システム内で統一的に扱うことのできる形式や座標系に変換する機能(各種データの導入・統合機能),得られたデータを基にして,グラフィックワークステーションを用いてリアルタイムのアニメーションを生成し現象を映像化する機能(CGアニメーション生成機能),I/0デバイスを用いてCG生成のためのパラメータを制御し,CGアニメーションの視点位置変更や時間軸の速度調節を対話的に行う機能(インタラクティブ操作機能)の3つの機能を有するものとして実現した.これらの機能が1つのシステム内で連係して動作することにより,対話的な操作で視点変更などを行いながら現象を観察することができる.さらに,映像化の対象となる現象に関する最新情報を導入したCG画像を比較的短時間で生成することが可能である.さらに,このシステムを1994年7月に木星に彗星(シューメーカー・レビー第9彗星)が衝突するという実際の現象に適用し,この彗星の過去からの振る舞いと衝突現象を可視化したCGアニメーション映像を製作した.CG映像の一例を図3に示す.この映像における視点などは実際に対話的な操作による設定を行い,天文学的にも大変珍しい現象を色々な観点から映像化している.また,このCG映像は現在インターネット上で公開することにより,情報をネットワークに還元しており,さらに,名古屋市科学館などでも使用され,天文の教育普及にも有用な成果となった。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (課程) 学位授与年月日:平成8年3月25日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {コンピュータグラフィックスにおける自然物および自然現象の表現に関する研究}, year = {1996} }