@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009703, author = {竹内, 勇剛}, month = {Mar}, note = {膨大な情報が発生し供給される情報化社会の中で人間は,これらの情報の発生を受け止めると同時に,能動的に本質的な情報の獲得を行ない,かつそれらの有効利用を計らねばならない.しかしながら,人間がこれらを自然に行なえるようにするためには解決しなければならない多くの問題がある.メディアは時間や空間,状況の隔たりを越えて他者とのコミュニケーションを成り立たせる機能をもち,様々な情報を伝えることができる.そのため,情報化社会はメディア技術の発展によって形成されてきたといっても過言ではない.現代では我々は椅子に座ったままで,現在から過去の出来事,近所で起きていることから宇宙空間で起きていることやアートなどの概念世界をメディアを介して体験することができる.つまりメディアは身体の拡張を可能にする.しかし人間の認知的能力それ自身は拡張されない.これまでメディアのもつ能力の面ばかりが注目されてきた反面,メディアによってもたらされた大量かつ多様な情報を利用する人間側の特性や能力については言及されてこなかった.人間にとって自然な情報化社会を構築するためには,メディア技術の発展だけでなく,情報を利用する人間の特性や能力について理解しなくてはならない.メディアを介したコミュニケーションに際して,人間はそれぞれの状況に適応した認知的処理を行なっていると考えられる.本論文の第2章では,メディアを介したコミュニケーションにおける人間の認知的処理過程の解明を目指す.コンピュータは,扱う村象によっては人間を遥かに越えた高度な情報処理能力を発揮する.そこでこの情報化社会の中で,有限な人間の認知的処理能力を支援するためにコンピュータを利用することを目的とした研究が近年多く行なわれてきている.情報化社会では,大量の情報はメディアによって人間に提供される.メディアとしてのコンピュータは,情報のソースと人間との間に介在するだけでなく,人間の要求に応じて必要な情報を提供する機能をもつことが求められる.それを実現するために,エージェント技術を利用しようとするアプローチが盛んになってきている.エージェントは自己のアイデンティティを表象する「顔」や「体」をもち,音声,視線,表情,ジェスチャーなどの人間同士の会話で使われる複数のモダリティによって人間とインタラクションを行なう.また,このような外面的な擬人性を有しているだけでなく,自己概念と持続的な記憶をもち,自己と他者を区別し,外界を認知することによって自律的に行動し,人間同士の会話で使われている習慣や社会的規約・規範,人間の情動的側面を理解する能力をもつような内面的にも擬人性を有したエージェントを構築する試みが進んでいる.外面的・内面的な「人らしさ」をコンピュータにもたせようとするアプローチは,こうすることで人間-コンピュータ間でも人間同士と同様なインタラクションの実現が促されるはずであるという"設計の観点"からの直観に基づいている.ところが,必ずしも"設計の観点"に立脚した「人らしさ」によってコンピュータが人格的な存在とみなされるとは限らない.人間は"設計の観点"で挙げられる「人らしさ」以外の部分にも,コンピュータの「人らしさ」を帰属させている可能性が考えられる.そこで本論文の第3章から5章では,社会心理学の方法を用いて,コンピュータに対する人間の対人的反応を観察し,「人らしさ」の帰属という観点から,人間-コンピュータ間のより自然なコミュニケーションの在り方について考察する.本論文は,以下の章で構成される.第1章では,情報化社会の中核となるメディアを介したコミュニケーションの現状と問題点を示すことにより,本研究の目的と位置づけを明確化する.第2章では,本論文の第一部として,ラジオのような情報伝達が一方向的であるメディアを取り上げ,そのような特性ををもつメディアのもとでのメディアコミュニケーションにおける人間の認知的行動,特に伝達された情報を記憶し活用する認知システムについて検討する.人間は利用するメディアに柔軟に適応したコミュニケーションを達成している.ラジオによる情報伝達は一方向的であり,かつ音声言語を主体にしているため即時的な認知的処理が要求される.そのためには効率的な表象の認知的処理を行なう必要がある.ラジオでの情報伝達は逐次的であるため,過去に伝達された情報の表象をある期間記憶に保持しておくことで,新規の伝達情報を参照し,効率的に理解することができる.ところが表象を必要以上に長期に保持することによって参照時に検索する空間が増大して,これは限られた認知資源の浪費となる.そのため,伝達情報を効率的に認知的処理するためには,一時的に保持されている表象の量を減らす一方で,必要な表象をいかに長い期間保持できるかという点が重要になってくる.この関係は心的な表象の保持と処理との間でのトレードオフに基づく認知資源の配分によって成り立っていると考えられる.音声言語では一方向的かつ逐次的に情報が伝達されるので,表象を保持する期間の問題は,効率的な認知的処理を行なう上で重要である.そこで第2章では,認知資源の合理的利用に基づいて,表象が心的に保持される期間をコンピュータシミュレーションによって推定し,心理実験によってその妥当性を検証する.第二部として第3章から5章まででは,メディアとしてのコンピュータに対する人間の認知的行動について検討する.コンピュータは計算のための機械から思考する機械へと発展してきた.そして現代では,情報処理技術の高度化・多様化の急速な発展に伴い,人間の認知処理能力を越えた大量の情報に対して必要に応じて本質的な情報の獲得を行ない,かつそれらの有効利用を可能とする知的なメディアとしてコンピュータは位置づけられている.そのために,コンピュータを外見的・内面的に擬人化することによって,人格的な「人らしさ」を与える試みが活発に行なわれている.第3章では,特別な擬人化を施されていない通常のコンピュータと人間との間でのインタラクションが人間同士と同様に社会的であり,かつそれらが無意識的・自動的に引き起こされることを心理実験によって実証することを目指す・心理実験では被験者として日本人と米国人を用いた.第3章では,この心理実験の結果を通して,「人らしさ」の帰属とはどのようなことであるか,どのような特徴が「人らしさ」の帰属を助長するのかといった問題を議論する.なお,人間-コンピュータ間での社会的インタラクションを観察するための社会的要因として互恵性を取り上げた.互恵性とは,恩恵を与えてくれた人には返報すべきだ,という人間社会では普遍的といわれる社会的規範の一つである.第4章では,第3章での実験結果において生じた日本人被験者と米国人被験者との反応の違いについて,日米間における文化差が影響している可能性を指摘し,人間-コンピュータ間における社会的インタラクションの文化依存性について心理実験を通して検証することを目指す.第4章での心理実験では,日米の被験者のコンピュータに対する集団性の認知に注目し,第3章同様に互恵性に基づいた人間の返報行動を観察する.第5章では,人間-コンピュータ間における社会的インタラクションにおいて,ハードウェア・ソフトウェアを含んだコンピュータのどの部分に対して個体性を帰属させ,インタラクションの対象としてみなしているのかを明らかにするための心理実験を行なう.マルチタスク/マルチウインドウ機能のような複雑なコンピュータの動作機構に対する社会的な人間-コンピュータインタラクションでは,コンピュータに関する知識や経験によって反応に違いが生じる可能性が考えられる.そこで,人間-コンピュータ間の社会的インタラクションについての先行研究を踏まえ,人間はコンピュータシステムのハードウェアをインタラクションの相手としての個体とみなすのか,あるいは具体的なインタラクションを媒介するウインドウを相手としての個体とみなすのかを心理実験によって検証することを目指す.第6章では,本研究で得られた成果を総括すると共に,本研究の今後への展望について論じる., 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(学術) (課程) 学位授与年月日:平成11年3月25日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {メディアを介したコミュニケ-ションにおける人間の認知的行動に関する研究}, year = {1999} }