@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009730, author = {福山, 博之}, month = {Mar}, note = {本研究は,Na_2CO_3スラグを用いた粗銅の精錬に関する熱力学的基礎研究である.本研究では,精錬能力の指標として平衡分配比L_x{=(スラグ中のXの質量%)/[銅中のXの質量%], X:不純物元素}を用い,これを,スラグ組成N{=nNa/(nNa + nx), n:モル数}, 酸素分圧,CO_2分圧と温度の関数として推算するための実験を行った後,計算で決定した.本研究では,鋼中の不純物元素としてAs,Sb,SnおよびFeをとりあげた.以下に各章で行った実験および得られた結果の要約を記す.第1章では,本研究の研究背景とNa_2CO_3スラグの有効性および本研究で採用した研究手法について説明した.第2章では,平衡分配比をスラグ組成,酸素分圧,CO_2分圧と温度の関数として推算する原理と推算するために必要な実験について説明した.第3章では,NaO_0.5-CO_2-AsO_2.5系スラグと溶鋼間のAsの平衡分配比を広いスラグ組成にわたって推算するため,本系スラグについて以下に要約する研究を行った.(1)β"-アルミナ固体電解質を用いた電気化学的方法により,スラグ中のNaO_0.5およびNa(CO_3)_0.5の活量を,スラグ組成,CO_2分圧および温度の関数として測定した. (2)本系スラグと種々のCO_2分圧および酸素分圧の気相とを平衡させることにより,スラグのCO_2溶解度とAsのRedox比(n_AS^3+/n_AS^5+)を測定し,CO_2の溶解機構とスラグ中でのAsの賦存状態を明らかにした.本実験条件下では,スラグ中のAsは,ほとんど5価で存在していることがわかった.(3)スラグ-溶銅間の分配平衡実験により, AsO_2.5の活量を決定し,これを積分開始点としてGibbs-Duhem積分を行い,広いスラグ組成にわたって,AsO_2.5の活量を計算した.以上の実験結果を組み合わせて,Asの平衡分配比のスラグ組成依存性を温度,CO_2分圧および酸素分圧の関数として決定した.第4章では,NaO_0.5-CO_2-(SbO_2.5+SbO_1.5)系スラグと溶銅間のSbの平衡分配比を広いスラグ組成にわたって推算するため,本系スラグについて以下に要約する研究を行った.(1)β''-アルミナ固体電解質を用いた電気化学的方法により,スラグ中のNaO_0.5およびNa(CO_3)_0.5の活量を,スラグ組成,CO_2分圧および温度の関数として測定した.N=0.86~0.96の組成領域では2液相分離の傾向があり,純粋に近いNa_2CO_3が安定に存在していることを示唆する結果を得た.(2)本系スラグと種々のCO_2分圧および酸素分圧の気相とを平衡させることにより,スラグのCO_2溶解度とSbのRedox比(n_Sb^3+/n_Sb^5+)を測定し,CO_2の溶解機構とスラグ中でのSbの賦存状態を明らかにした.実験条件によっては,SbO_2.5の活量に影響を及ぼすほど多量の3価のSbが存在することがわかった.(3)Sbの価数変化に基づいた考察を行ない,Gibbs-Duhem積分の開始点を選択した.積分開始点におけるSbO_2.5の活量をスラグー溶銅間の分配平衡実験より決定し,Gibbs,Duhem積分を行い,広いスラグ組成にわたって,SbO_2.5の活量を計算した.NaO_0.5の活量とSbO_2.5の活量からNa_3SbO_4(1)の活量および標準生成自由エネルギー⊿G°を決定した.以上の実験結果を組み合わせて,Sbの平衡分配比のスラグ組成依存牲を温度,CO_2分圧および酸素分圧の関数として決定した.第5章では,NaO_0.5-CO_2-SnO_2系スラグの熱力学的性質ならびに本系スラグ-溶銅間のSnの分配挙動を明らかにするため,次のような研究を行った.(1)β"-アルミナ固体電解質を用いた電気化学的方法により,スラグ中のNaO_0.5およびNa(CO_3)_0.5の活量を,スラグ組成,CO_2分圧および温度の関数として測定した.測定を行った実験条件下では,NaO_0.5およびNa(CO_3)_0.5の活量には,スラグ組成依存性が認められず,純粋なNa_2CO_3に近い挙動を示した.当該スラグは,Na_2SnO_3の固相と微量のNa_2SnO_3が溶解したNa_2CO_3の液相とに分離していることがわかった.(2)Na_2CO_3融体へのNa_2SnO_3の溶解度を測定することによって,本系スラグの固液共存組成範囲を決定し,さらに,Na_2CO_3融体に溶解しているSnの賦存状態および溶解機構を明らかにした. (1)と(2)の結果から,本系スラグは固液共存領域と均一液相領域に分けられることがわかった.(3)固液共存スラグ-溶銅間でSnの分配平衡実験を行い,NaO_0.5の活量と組み合わせて,2NaO_0.5(1)+SnO_2(s)=Na_2SnO_3(s)の⊿G°を決定した.この値を用いて,固液共存領域におけるSnO_2の活量をNaO_0.5の活量から計算した.(4)均一液相スラグ-溶銅間でSnの分配平衡実験を行い,均一液相領域におけるSnO_2の活量を評価した.この活量を用いて,Gibbs-Duhem積分より,同領域のNaO_0.5の活量を計算した.以上の実験結果から,Snの平衡分配比を固液共存領域と均一液相領域のスラグに分けて推算した.第6章では,NaO_0.5-CO_2-FeO_0.5系スラグとCu-酸素-Fe系合金の熱力学的性質ならびに本系スラグ-溶銅間のFeの分配挙動を明らかにするため,次のような研究を行った.(1)β"-アルミナ固体電解質を用いた電気化学的方法により,スラグ中のNaO_0.5およびNa(CO_3)_0.5の活量を,スラグ組成,CO_2分圧および温度の関数として測定した.測定を行った実験条件下では,NaO_0.5およびNa(CO_3)_0.5の活量には,スラグ組成依存性が認められず,純粋なNa_2CO_3に近い挙動を示した.当該スラグは,NaFeO_2の固相と微量のNaFeO_2が溶解したNa_2CO_3の液相とに分離していることがわかった.(2)Na_2CO_3融体へのNaFeO_2の溶解度を測定することによって,本系スラグの固液共存組成範囲を決定し,さらに,Na_2CO_3融体に溶解しているFeの賦存状態および溶解機構を明らかにした.(1)と(2)の結果から,本系スラグも固液共存領域と均一液相領域に分けられることがわかった.(3)FeO_1.5-NaFeO_2系のNaO_0.5の活量をβ"-アルミナ固体電解質を用いた電気化学的方法を用いて測定することにより,NaO_0.5(1)+FeO_1.5(s)=NaFeO_2(γ)の⊿G°を決定した.この値を用いて,固液共存領域におけるFeO_1.5の活量をNaO_0.5の活量から計算した.(4)固液共存スラグー溶銅間でFeの分配平衡実験より,溶銅中のFe-酸素間の相互作用係数を決定した.(5)均一液相スラグ-溶銅間でFeの分配平衡実験を行ない,均一液相領域におけるFeO_1.5の活量を評価した.この活量を用いて,Gibbs-Duhem積分より同領域のNaO_0.5の活量を計算した.以上の実験結果から,Feの平衡分配比を固液共存領域と均一液相領域のスラグに分けて推算した。第7章では,溶銅共存下におけるNa_2CO_3スラグへの酸化銅の溶解度を明らかにした.また,溶銅共存下におけるNaO_0.5-CO_2-(SbO_2.5+SbO_1.5)系スラグへの酸化銅の溶解度を,スラグ組成,CO_2分圧および酸素分圧の関数として測定した.さらに,溶解した酸化銅が,Na_2CO_3の分解,SbO_2.5の活量および第4章で推算したSbの平衡分配比に及ぼす影響を検討した.第8章では,第3章~第6章で得られたAs,Sb,SnとFeの溶銅中の平衡濃度および平衡分配比を用いて,銅1tonを処理するのに必要なNa_2CO_3スラグのkg数で定義されるスラグ原単位を計算した.これより,平衡論的観点から,銅中のこれらの不純物を,高純度銅中の不純物濃度に匹敵する0.1mass ppmまで下げるために必要なNa_2CO_3スラグの処理法を示した.第9章は本研究によって得られた成果の総括である.本研究の結果から,溶銅からのAs,Sb,SnおよびFeの除去には,Na_2CO_3スラグを用いた酸化精錬が非常に有効であることが明らかとなった., 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (課程) 学位授与年月日:平成5年3月25日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {炭酸ソ-ダ系スラグ-溶銅間の不純物成分の移行に関する熱力学的研究}, year = {1993} }