@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009732, author = {清木, 隆文}, month = {Mar}, note = {廃棄物処理の問題は年々深刻さを増している。核種廃棄物など無害化が困難な廃棄物は、何らかの形で自然環境から隔離しなければならない。これらの隔離方法として深部地下への埋設が注目されている。これは岩盤を対象とした新しい地下空間利用の方法で、原油の加湿地下備蓄と同様に負荷として熱源(構造物)からの発熱を考慮しなければならず、周辺環境にどのように影響を与えるかを把握することが重要な課題である。地下空間は、その特性である隔離性、耐震性、恒温性を生かして利用するものである。同じ用途の構造物を建設する場合、地下空間の工費は地上構造物に比べて割高になるが、いったん作ると維持費が安く、周辺環境の維持にもつながり、また、岩盤の有する優れた隔離性も期待される。地下水面以下の岩盤中に各種の物質を貯蔵・処分する場合、物質は岩盤のき裂における浸透流れに乗って移動、拡散し、あるいは母岩中に吸着されると考えられ、浸透流れの状況を精密に予測する必要がある。具体的に言えば、原油の地下備蓄においては岩盤空洞周辺に存在する地下水に原油の漏出防止の役割を負わせているのに対して廃棄物処分においては地下水は有害物質を拡散させる移動媒体である。このため、熱の影響により地下水がどのような影響を受け、どのように挙動をするかを具体的に把握する必要がある。浸透流は岩盤中の空隙や不連続面によって構成される水みちに大きく依存するため、対象とする岩盤中の幾何学的性質を把握しなければならない。また、不連続面の力学的性質はその幾何学的異方性に依存し、この不連続面の特性は様々な手法によってモデル化されている。本研究では最初に、岩盤不連続面の特性について述べた。つぎに、一様に空隙が存在する多孔質飽和地盤を仮定して、応力・熱・浸透連成場でどのような影響を受けるかを把握することを試みた。このとき、連成問題を扱うために新しく開発した実験装置を用いて熱・浸透連成実験を行い、熱と浸透場が実際にどの程度影響し合うかを把握した。つづいて熱源を負荷とする飽和多孔質地盤を対象にして有限要素法による数値解析を行い、浸透流がどのように発生して周辺環境に長期的な影響を及ぼすかを明らかにした。本論文の構成を各章に分けてまとめるとつぎのようになる。前半の第2章、第3章では、不連続面の扱い方について述べた。第2章では、岩盤中の不連続面の地質学的・工学的取り扱い方と不連続面の挙動の調査・実験の例についてまとめた。はじめに、地質学および岩盤工学における不連続面を分類する方法について示した。特にREV(representative elementary volume;代表要素容積)は、工学的なアプローチ法であるモデル化に必要な概念であるので、これについて触れ、不連続面の扱い方は大きく不連続面を個別に取り扱う方法と不連続性岩盤を等価な連続体に置き換えて取り扱う方法の2つに分けられることについて説明した。その2つの方法で、不連続面の挙動を陽な形で数値解析で取り扱う場合は不連続面を個別に取り扱う方法に頼るしかないが、個々の不連続面の性状を完全に把握することば不可能であるので、不連続面を等価な連続体に置き換えて岩盤全体の物性と挙動に注目する可能性について考えざるをえないことを明らかにした。つづいて、不連続面の破壊例としてキンキング現象の幾何学的な性質を分析するために現場調査と実験を行い、その特徴を把握することを試みている。実験には、へき開構造を含む変成岩(粘板岩)と木材を供試体として用い、一軸圧縮試験を通してキンキングの再現を行った。この実験から得られた幾何学的構造とひずみ値の関係を用いてキンクの特徴を調べ、自然考盤と室内試験によるキンクを比較した。その結果、自然岩盤中の高封圧履歴によるキンキング現象はヒンジ 移動モデルで表現され、地下構造物の周囲に発生するキンキング現象は回転モデルで表現されることを明らかにした。さらに、岩石供試体のキンクバンドの角度は、圧縮環境下のモール・クーロンの破壊規準から推定されるせん断破壊の方向とは異なることより、工学的にどのような意味を持つかを述べた。第3章では、不連続面を等価な連続体に置き換えるモデル化について、今までに提案されたモデルの概要を説明し、特徴をまとめていた。はじめに、7つのモデル(混合体モデル、等価異方弾性体モデル、クラックテンソルモデル、等価体積損傷モデル、損傷テンソルモデル、均質化モデル、せん断弾性係数モデル)についての概要を記述した。つぎに、損傷量を変化させたFEMの解析モデルと各等価連続体モデルを比較し、損傷方向の再現性について比較した。つづいて、先に説明した各 モデルを決定するデータを得るために、損傷実験を行った。これは、モルタルを用い、金属ブレードを打設時に挿入し、スリット状の損傷を予め含む供試体を作成して一軸圧縮試験を行うものである。供試体は、このブレードの載荷軸との挿入角度を変化させるパターンと、ブレード枚数を変化させるパターン、および比較のための損傷を有しないパターンの3種類を作製した。実験では供試体上のき裂の進展を観察した。そして、このき裂の進展状態と軸ひずみとの関係について整理した。つづいて実験供試体の幾何データを用いて等価連続体モデルを定め、実験値と比較した。最後に各モデルの特徴を明らかにした。 後半の第4章、第5章では、多孔質岩盤を対象とした実験と解析についての研究を行った。すなわち、不連続面を等方多孔質地盤に置き換えて、多孔質体の挙動について考えることにした。第4章では、新しく開発した熟、浸透圧、荷重を同時に負荷することができる実験装置を用いて、熱・浸透連成実験を行い、供試体表面の温度とひずみの経時変化について観測した。熱と浸透圧を同時に負荷すると、飽和させた供試体中の間隙水圧が上昇し、温度とひずみの経時変化に影響を与えると考えられるので、これを確 認した。供試体には、多孔質凝灰岩(大谷石、船人石)を用いた。実験パターンはパターンA(飽和させた供試体に熱(80℃)を負荷する場合)、パターンB(飽和させた供試体に同時に熱(80℃)と浸透圧(0・98MPa)を負荷する場合)、パターンC(乾燥させた供試体に熟(80℃)を負荷する場合)の3通りである。その結果、熱源からの熱が、供試体の変形を支配していることが判った。また、浸透圧もその変形 に僅かであるが影響を与えることが明らかになった。 第5章では、複数の負荷(熱、応力、浸透圧)がかけられた地盤の長期的な挙動を把握するために、多孔質岩盤の数値解析を行った。ここでは、損傷量が等方的に分布しているとして、多孔質岩盤をとらえて混合体理論を適用した。このとき、岩盤は固相と液相の2相混合体で完全に飽和していると仮定し、各相ごとに運動場、速度場などの基本諸量を定義した。つぎに応力・熱・浸透連成場における混合体の質量保存則、運動量保存則、エネルギー保存則を記述し、液相(水)の密度の温度、圧力依存および動粘性係数の温度依存を考慮した浸透式、力のつり合い式およびエ ネルギ一輪送式を導出した。さらにこれらの支配方程式を弱形式化して有限要素離散化を行い、熱を負荷とする多孔質岩盤を想定し、長期的な挙動を推測するために数値解析を試みた。理論および解析手法の検証をするために1次元圧密問題の理論解ならびに浸透連成場の実験結果と比較した結果、それぞれ良い一致を見た。さらに、浅い軟岩層に熱源を持つ場合の地盤と深所に熱源を持つ岩盤に対して解析を行った。その結果、熱輸送の違い(熱伝導のみ考慮した場合と熱伝導と対流を考慮した場合)による地盤内の温度分布に有意な差は見られなかった。しかしながら、浸透流場に関しては、熱伝導のみを考慮した場合、熟を与えた直後に過剰間隙水圧がピークを示し、それを消散する方向に浸透流が発生するが、熱伝導と共に対流を考慮した場合、対流による過剰間隙水圧が発生し、時間の経過に従ってその影響が大きくなり、特に、地表面の上昇は過剰間隙水圧の発生によって、熱伝導だけを考 慮する場合に比べて3倍程度大きくなり、無視できないことが明らかとなった。また、深層岩盤を対象にした解析に対してもBoussinesq近似(水は温度変化が浮力を生ずる以外は非圧縮とする。)が適用できることが判った。第6章は各章で得られた結論を総括すると共に、今後のテーマおよび解決すべき問題点について記す。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (課程) 学位授与年月日:平成6年3月25日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {岩盤中における不連続面の挙動と応力・熱・浸透連成挙動に関する基礎的研究}, year = {1994} }