@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009734, author = {清水, 昭伸}, month = {Jul}, note = {医用画像を対象とした画像処理の研究は,X線CT(Computed Tomography)装置の誕生とほぼ同じ1970年頃に始まり,最初は画像の一部分をデジタル化したものから成分図形を抽出したり,階調変換や周波数強調による画質の改善等を行っていた.最も古くから画像処理の研究の対象となっていた胸部X線像の場合を例にとると,まず基礎的研究として限られた領域内で抽出された肋骨像や血管影等の成分図形を計測・認識するシステムの開発が試みられていた.その後,じん肺および肺がんの診断を意図した給合的な診断支援システムが開発されてきた.近年では,その他の医用画像の場合についても,診断支援を目的としたシステムに特に多くの研究者の関心が集まっているが,その理由としては以下の3つが挙げられる.(1)健康管理への関心の高まりによる医用画像の種類と数の増加と,それによる読影医師への負担の増加(2)計算機の性能の驚異的な進歩と低価格化,および画像処理のハードとソフトのツールの普及(3)X線CT像やDR(Digital Radiography)像によるデジタル画像処理の意義の確立と,画像のデジタル化技術の普及また,診断支援システムを臨床の場で実際に用いた場合,診断に対しては次の3つの意義が生じると考えられる.(1)医師の負担軽減例えば,定期的に行われる肺がんや胃がんのX線検診では,一時期に撮影される大量の画像が読影医師に大きな負担をかけているが,計算機支援により(例えば正常例の削減や異常部位のマーキング)読影作業の効率化を計ることができる.(2)診断の定量化 画像から検出された様々な成分図形に対して種々の特徴量の計測を行ない定量化することは,計算機にとっては比較的容易である.(3)診断精度の向上 人間には認識が困難な複雑あるいは微細な病変を認識できる場合や,検査試料や回数を大幅に増加させての検査などの場合に期待できる.ただし,これらの意義はシステムの性能が臨床的に使いものになるレベルに達した場合のみ当てはまることであり,診断支援システムの現状と問題点は以下のようである.まず,現在では人体上のほとんど全ての部位が医用画像の撮影対象となっており,同一部位に対しても撮影方式の異なる複数の装置(例えばX線CTとMRI(Magnetic Resonance Imaging))で撮影する場合もあり,極めて多くの種類の画像が撮影されている.これに伴って計算機診断の研究が対象とする画像の種類もますます増加しているが,医師なみの能力を持つシステムが近い将来に実用化されることは難しいと思われている.また,これまでに実用化されたシステムの例も,血球像や細胞像を対象とした顕微鏡像の自動診断装置などのごく一部に限られているが,その主な原因としては次の①~④の4点が指摘されている. ・目標設定上の問題①医療現場が要求する診断精度に関して,その具体的な数値目標の検討が十分に行われていなかった②数倍目標を実現するためのシステムの設計方針が良く分かっていなかった・技術上の問題③設定された問題に対する画像処理技術の限界が十分に理解されていなかったため,手法の選択が適切に行われていなかった④診断支援システムに求められる診断精度は,技術的に実現が困難である場合が多い これらの問題点に関する従来の研究としては,①に関しては仮想のシステム出力を用いた検討があるが,十分とは言えない.また,②については限られた分野での極めて小規模な検討に限られており,これまでにはあまり検討されていない.③,④については医用画像処理の領域のみでなく,パターン認識の分野の全体に共通な問題であり,現在も様々な議論が続けられているが,多くの未解決の問題が残されている.さて,本論文では,間接撮影胸部X線像およびCT像を対象とした診断支援システムの開発に関する研究とシステムの能力の振る舞いを確率モデルを用いて評価した2つの研究から構成されている.以下では,上に示した診断支援システムの意義や問題点等を,個々の問題について具体的に示しながら順に説明を行う.まず,間接撮影胸部X線像用の診断支援システムは,わが国で急増する肺がんによる死亡者数の抑制のために各市町村などで毎年撮影されている検診用の画像を対象としている.実際の検診では,肺がん陰影の見落としが2~3割存在するため,診断精度の向上が求められている.また,医師は2時間で500枚程度の画像を読影しているが,その負担の大きさも問題となっており,肺がん検出のための診断支援システムの開発が強く望まれている.これまでに開発されたシステムとしては,鳥脇らのAISCR-V3が唯一存在するのみであるが,このシステムは低圧の管電圧(約75kV)で撮影されたX線像を用いて設計・評価が行われており,最近の検診で主流となっている高圧撮影像(管電圧:120~140kV)を適用した場合には,性能はかなり低下してしまうことが知られている.その原因としては,画質の変化が第一に挙げられるが,具体的には,肋骨像のコントラストが低下し,その認識が非常に困難になったことである.その他に,このシステムで用いられている肺がん陰影強調フィルタでは,肺がん陰影の見落としと拾いすぎを十分抑制できないことも挙げられる.そこで,本論文ではこれらの問題点の解決を目指して新しいシステムの設計を行った.具体的には,まず,従来より高い性能を持つ肺がん陰影強調フィルタを設計したが,これについては2章で詳しく述べた.そこでは,まず,従来のフィルタとの性能の比較を行い,次に,従来は経験的に決められていたフィルタ半径を,肺がん陰影検出の誤り確率を基準に設定する方針を示し,実際に肺がん陰影を検出する際の具体的な設定値をシミュレーション実験により示した.3章では,このフィルタの性能評価を理論的な面から行なった.5章では,フィルタ強調画像から抽出された肺がん陰影候補領域を,局所的な濃度値特徴量により正常と異常の2クラスに分類する新しいアルゴリズムについて述べた.また,実際のスクリーニングで用いられた間接像に適用した結果も示したが,それによると,医師が見落とした肺がん陰影の内の幾つかを検出できることが知られた.ところで,現行の間接撮影像による検診の診断精度を大幅に向上させるために,高速撮影が可能なヘリカル型スキャン方式のCT装置(以下ヘリカル型CTと呼ぶ)を肺がん検診へ応用する試みが最近行われている.実際にはまだ一部の地域での試験的な導入に限られているが,将来的にはCT像は肺がん検診の中心的な画像になることが予想される.その場合には,間接撮影像と比べてはるかに大量の画像を医師は読影しなければならず,診断支援システムの導入は必須となる.本論文の4章では,ヘリカル型CTにより撮影されたthin sliceのCT像からの肺がん陰影検出のための診断支援システムの開発について述べた.従来行われていた研究は,CT値に対するクラスタリングやしきい値処理により肺がん陰影の検出を試みたものが数例見られるだけであり,2次元胸部X線像に対するシステムのように空間フィルタを用いた肺がん陰影の検出を行ったものはほとんどない.しかし,初期の非常に淡い肺がん陰影の場合には,空間フィルタによる強調が有効であると考えられる.そこで,本論文では,2次元の胸部Ⅹ線像に対して従来用いられていた幾つかの肺がん陰影強調フィルタを3次元に拡張し,3次元CT像からの肺がん陰影の検出に応用した.その結果,3次元CT像の場合においても空間フィルタによる肺がん陰影の強調は有効であること,また,フィルタの性能が肺がん陰影の位置に依存して大きく変化することなど,フィルタを実際に用いる際に重要な幾つかの知見が得られた.さて,これまでに実用化された診断支援システムは,細胞像の自動分類装置以外にはほとんど見られない.これは,その他のシステムの多くはまだ開発の初期段階であることにもよるが,それ以外の原因としては,最初に述べた①~④の4点が挙げられる.本論文の6章では,この中の「数値目標を実現するためのシステムの設計方針が良く分かっていなかった」ことに注目し,システム設計のための資料を提供した.従来の研究としては,血球像や細胞像の診断自動化に関する研究の中で幾つか検討されたものがあるが,極めて小規模な例や部分的なものに限られていた.その後も,診断支援システムに関して,システムの設計方針を明らかにしたものは見受けられない.本論文では,診断支援システムが通常幾つかの局所的な判定と,それらを統合して画像単位の最終診断を導く総合判定からなることに注目し,まず,これらの判定の段階を確率モデルで表現し,局所判定能力と総合判定の性能の関係を明らかにした.また,実際の数倍例により,総合判定の性能を目標値に到達させるために必要な局所判定の能力を示した.これにより,診断支援システムの効率的な設計方針が導かれたことになる., 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (課程) 学位授与年月日:平成7年7月4日}, school = {名古屋大学, Nagoya University}, title = {医用X線像の自動診断システムの設計と評価に関する研究}, year = {1995} }