@phdthesis{oai:nagoya.repo.nii.ac.jp:00009804, author = {小松, 美砂}, month = {Mar}, note = {1.緒言 骨粗鬆症による最大の障害は骨折である。WHOは大腿骨近位部骨折の増加を予測し、骨粗鬆症対策を重点項目の一つと位置づけている。また、欧米では骨折・骨粗鬆症対策のガイドラインや勧告も出され、地域における予防対策指針が示されている。現在、わが国では老人保健法に基づき骨折・骨粗鬆症の1次予防策として健康教育や健康相談を、2次予防策として骨粗鬆症検診を、いずれも市町村の責任で行っている。これらの事業は法の要請により公費を用いて行われるため、対策は科学的根拠、いわゆるエビデンスに基づいて実施される必要がある。しかし、現在行われている対策がどの程度エビデンスに基づいて実施されているかは明らかではない。そこで、全国市町村が実施している骨折・骨粗鬆症予防対策がどの程度エビデンスに基づいているかを把握し、より強固なエビデンスに基づく対策の実施に関連する要因を明らかにすることを目的とし本研究を行った。また、結果をもとに地域看護職のための骨折・骨粗鬆症予防指針を策定した。 2.対象及び方法 全国市区町村1843ヶ所の骨折・骨粗鬆症予防対策担当課および指定都市保健所に調査票を郵送した。また、同一市区町村内で異なる対策を実施している市町村より連絡を受け、必要部数追加配布した。調査票への記入は保健師らに依頼した。依頼文には調査目的、結果の使用、秘密保持・情報管理について記載した。調査期間は2006年8月から12月であった。調査票は保健師18名に予備調査を行い、回答者が自記式で回答可能であることと、対策を網羅的に調査できることを確認した。主な調査項目は①対象施設の特性、②対策の策定過程における特性(企画参加職種、参考資料の有無と参考の程度、実施機関)、③骨粗鬆症検診の内容(検診実施の有無、対象、骨密度測定方法)、④健康教育の内容(健康教育実施の有無、対象、指導内容)等とした。対策がエビデンスに基づいているかを判断する基準としては、伊木らの「地域保健におけるエビデンスに基づく骨折・骨粗鬆症予防ガイドライン」の推奨度の格付けを用いて分析した。このガイドラインは若年成人女性、閉経後女性、高齢者それぞれ対策の推奨の強さを、A:実施を強く勧める、B:行うよう勧める、C1:実施してもよいが十分な根拠なし、C2:根拠がないので勧められない、D:行わないよう勧める、の5段階で示している。本研究では推奨度A又はBについて、対策を実施したか否かを従属変数、対策の策定過程における特性を独立変数として単変量ロジスティック回帰分析を行った。また、有意に関連する変数が複数ある場合は、これらを独立変数として強制投入した多変量ロジスティック回帰分析によって調整オッズ比を算出した。 3.結果 調査票は1978施設に配布し、回収数は1319(回収率66.7%)であった。分析対象は1319施設であり、配置されていた専門職は保健師が97.9%と最も多かった。検診の実施率は72%であり、企画に参加した職種は保健師が89%と最も多く、7割以上が企画に資料を利用し、4割が資料の一部を変更して企画していた。骨粗鬆症検診においてエビデンスに基づき推奨される65歳以上の女性全体を対象としていた施設は36%と少なかった。骨密度測定方法は定量的超音波骨評価法が約4割を占め、エビデンスに基づき推奨される腰椎や大腿骨近位部の二重X線吸収法による測定は5%であった。健康教育の実施率は59%であり、企画に参加した職種は保健師が93%と最も多く、7割が企画に資料を利用し、4割が資料の一部を変更し企画していた。健康教育内容のエビデンスに基づく実施状況としては、「牛乳・乳製品を毎日コップ1杯以上摂取」、「適正体重の維持」等は半数以上の施設で実施していた。しかし、エビデンスに基づき実施を推奨できる「カルシウムを食事から1日800mg以上摂取」と指導していた施設は3%、「喫煙を始めない」の指導は25%、高齢女性に対する「日常生活の活発化」の指導は15%であった。エビデンスに基づく検診の実施に関連する要因としては、企画段階での看護師の参画や、骨密度測定を外注せずに実施したことは、65歳以上の女性を対象とした検診の実施割合を上げる要因であった。一方、マニュアル等を参考に企画することは、その割合を下げる要因であった。エビデンスに基づいた健康教育の実施割合を上げる要因は、管理栄養士や理学療法士の参画、マニュアル等参考資料の使用、各自治体での教育の実施であった。 4.考察 65歳以上の女性全体を検診対象とした施設は4割以下と少なかったが、高齢女性の骨密度測定は有効であるというエビデンスに基づき、5年毎の節目検診以外にも検診を実施すべきと考える。また、65歳未満でもリスクのある閉経後女性への検診が推奨されるが、対象選定段階でリスク要因を把握している施設は少なかったことから、性別と年齢だけでなくリスク要因を考慮して検診対象を選定すべきと考える。骨密度測定には定量的超音波骨評価法が多く使われていたが、測定値が測定環境に左右されるため、腰椎または大腿骨近位部の二重X線吸収法を用いるのが妥当であり、このような情報を現場に提供していく必要がある。健康教育では「カルシウムを食事から1日800mg以上摂取」と指導している施設は少なく、サプリメントの使用も指導されていなかった。カルシウムは1日800mg以上摂取することが有効であり、ビタミンDの併用により骨密度低下の抑制が期待できるため、カルシウム摂取について指導を強化する必要がある。運動指導では、若年成人女性および閉経後女性には衝撃の強い運動が骨密度を上昇させるが、指導率は1割未満であり、高齢女性においてもエビデンスに準拠しない指導状況にあった。また、喫煙や、やせへの指導は3割程度と、リスク要因への指導も十分とはいえず、対策内容を改善していく必要がある。 検診の実施において参考資料の使用がエビデンスに基づき実施する割合を下げる要因であったことは、参考資料の出版年度が古く最新のエビデンスに対応していないことによると思われる。資料通りに企画するよりも一部を変更した方がエビデンスに基づいていたことは、資料内容を鵜呑みにせず、エビデンスを見極め企画することの重要性を示している。また、看護職の参画や自治体での検診実施も、エビデンスを高める要因であったことから、保健師に加えて看護師や他職種が協働して企画し、地域の実情にあった形で提供する体制が整った施設であることが、エデンスの高い実践につながると思われる。健康教育では、各市町村で行った調査結果や参考資料がエビデンスを高める要因となっていたことより、効果的な健康教育のために企画段階で内容の有効性を吟味することの重要性が示唆された。 5.結論 エビデンスに基づく対策は様々な項目で実施されていたが、エビデンスに基づかない項目も少なくなかった。エビデンスに基づく対策の実施に関連する計画策定段階の要因が明らかになったため、結果をもとに地域看護職のための骨折・骨粗鬆症予防指針を策定した。これらは、各自治体が対策をエビデンスに基づくものに改善していく上で利用可能と考えられる。, 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(看護学) (課程) 学位授与年月日:平成20年3月25日}, school = {名古屋大学, NAGOYA University}, title = {エビデンスに基づく骨折・骨粗鬆症予防対策に関する研究}, year = {2008} }