WEKO3
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軟骨分化に関与するプロテオグリカンおよび関連タンパク質の構造と機能
http://hdl.handle.net/2237/11480
http://hdl.handle.net/2237/11480046347ff-7f31-4307-8584-4ce7d357c824
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2009-04-17 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 軟骨分化に関与するプロテオグリカンおよび関連タンパク質の構造と機能 | |||||
言語 | ja | |||||
著者 |
氏田, 稔
× 氏田, 稔 |
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アクセス権 | ||||||
アクセス権 | open access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||
抄録 | ||||||
内容記述 | すべての細胞は糖鎖を表面に持つ細胞膜に包まれており、多細胞動物ではほとんどの細胞が複合糖質を含む細胞間物質に囲まれて存在している。多細胞動物とは、このような糖鎖に囲まれた細胞が集まり、組織、器官、そして個体が作られることにより出来上がる生命体であり、その完全な理解のためには各組織を構成する細胞の集合や接着の機構を分子レベルで解明することが不可欠である。近年、細胞間認識や細胞の細胞外マトリックスへの接着に対して糖鎖が特に重要な働きをすることが明らかになってきているが、これと同時に、糖鎖に対する受容体の研究も活発に進められている。その1つとして、特定の糖鎖構造を認識して結合するタンパク質であるレクチンが想定されている。動物レクチンは糖鎖の受容体として細胞の接着や細胞間の情報伝達に関与し、発生や分化の過程で重要な役割を果たしていると考えられている。細胞認識の点から多細胞動物における発生や分化を考える時、細胞表面の構造とともに、その周囲に存在する物質群、すなわち細胞外マトリックス成分が注目される。細胞外マトリックスは動物組織中の細胞の外側に存在する安定な生体構造物で、細胞が合成、分泌し、その周囲に蓄積される生体高分子の複雑な会合体である。細胞外マトリックスの構成成分は、コラーゲン、接着性糖タンパク質、そしてグリコサミノグリカンおよびプロテオグリカンの3つに大別される。細胞外マトリックスは、細胞接着、細胞骨格の配向、細胞の形態、移動、増殖、分化、細胞内の代謝などと深く関わっており、細胞分化や形態形成を制御していると考えられている。また、細胞外マトリックス系は神経系や免疫系などとともに高等多細胞動物にしか存在しない機構であり、高等動物の生物学における重要な研究対象である。グリコサミノグリカンは一種の硫酸化酸性多糖であり、コンドロイチン硫酸やへパラン硫酸/ヘパリンなどが含まれる。これらは主にタンパク質(コアタンパク質と呼ばれる)のセリン残基に共有結合したプロテオグリカンの形で存在する。これまでのプロテオグリカンの研究は、グリコサミノグリカン鎖の構造や活性を中心に進められてきたが、近年、コアタンパク質の重要性が多くの研究者から指摘されており、その機能の解明が待たれている。特にプロテオグリカンのコアタンパク質にはいろいろな機能ドメインや特徴的な繰返し配列が存在するものがあり、注目されている。一般に組織の細胞は、それぞれに特有の細胞外マトリックスに囲まれて機能を調節されているが、細胞外マトリックス分子の中にはその発現が場所的、時間的に制御されているものがある。それらは特に発生や分化において重要な働きをしていると考えられ、多くの研究者の注目の的になっている。そのような分子の例としてプロテオグリカンーM(PG-M)とプロテオグリカンーLb(PG-Lb)があげられ、両分子の特異的な発現パターンから、これらの軟骨分化への関与が示唆されている。四肢は肢芽とよばれる前後2対の間充織のふくらみから形成される。四肢のパターンは、最初に軟骨のパターンとして出現する。この軟骨が後に骨になることから、四肢のパターン形成の理解のためには、まず第一に軟骨分化の分子レベルでの理解が必要であると考えられる。ニワトリでは発生段階23において肢芽間充織の中央部に細胞密度の高い領域が現れる。この部位の細胞が後に軟骨へと分化することから、この間充織凝集は軟骨分化にとって非常に重要な現象であると考えられている。PG-Mは、ニワトリ肢芽の間充織凝集部位に特異的に発現し、軟骨の形成とともに減少する大型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンである。このような時間的、空間的に制御されたPG-Mの発現は、この分子が間充織凝集部位において一時的に形成される特殊な細胞外マトリックスの構築に関与し、軟骨分化において重要な役割を担っていることを示唆する。ニワトリPG-Mのコアタンパク質のcDNA解析の結果から推定されるアミノ酸配列より、そのカルボキシル末端領域には進化の過程でよく保存された2つの上皮成長因子(EGF)様ドメイン、1つのC型レクチン様ドメインおよび1つの補体制御タンパク質(CRP)様ドメインの存在することが明らかとなった。今回、PG朋のカルボキシル末端領域に存在するレクチン様ドメインの結合活性を大腸菌発現系および動物細胞発現系を用いて調べてみた。グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質として大腸菌に発現させたPG_Mコアタンパク質のカルボキシル末端領域がカルシウム依存的に数種の糖(D一マンノース、D-ガラクトース、L-フコースおよびルN-アセチル-D-グルコサミン)やヘパラン硫酸/ヘパリンに結合することをアフィニティークロマトグラフィーにより明らかにした。これらの結果から、PG-Mは肢芽においてヘパラン硫酸プロテオグリカンと結合していると予想される。特に、ヘパラン硫酸プロテオグリカンの一種であるシンデカン3がPG-Mと同様にニワトリ肢芽の間充織凝集部位に発現することが報告されており、この分子がPG-Mのレクチン様ドメインのリガンドである可能性は高い。また、阻害実験の結果からPG-Mのレクチン様ドメインの単糖類に対する結合部位とヘパリンに対する結合部位は同一ではないと考えられた。さらに、CRP様ドメインの除去によりレクチン活性が失われることから、このドメインもPG-Mのカルボキシル末端領域における糖認識構造の形成に寄与していると考えられた。続いて糖タンパク質糖鎖に対するPG-Mのレクチン様ドメインの結合特異性を調べたさらに、ニワトリの肢芽内でこのレクチン様ドメインが結合するリガンドを探索するための実験を行った。GSTとPG-Mのカルボキシル末端領域から成る分泌型キメラタンパク質をコードするcDNAを組み込んだpcDNAI/NEOをCOS細胞に導入し、その培養上清から分泌されたキメラタンパク質を精製した。様々な糖タンパク質の糖鎖に対する精製PG-Mキメラタンパク質の結合を固相結合実験により調べた結果、カルシウム依存的に複合型糖鎖に特に強く結合することが明らかとなった。さらに、フィブロネクチンの糖鎖に対する結合も見いだされた。フィブロネクチンは肢芽の主要な細胞外マトリックス成分であり、これまでにPG-Mのコアタンパク質がフィブロネクチンと結合することが確かめられている。よって、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと同様にフィブロネクチンも肢芽におけるPG-Mのリガンドの1つであると考えられた。また、このキメラタンパク質と上記の大腸菌に発現させたGST-PG-M融合タンパク質を比較したところ、それらの結合特異性は互いに類似していた。そして、GST-PG-M融合タンパク質を使ったプロットアツセイにより、PG-Mのカルボキシル末端領域と結合するいくつかの糖タンパク質が発生段階23のニワトリ肢芽に見いだされた。以上のことから、PG-Mのレクチン様ドメインは他の細胞外マトリックス分子や細胞表面の糖鎖との相互作用を通して間充織凝集および軟骨分化に関わっていると考えられる。肢芽間充繊細胞の軟骨細胞への分化については細胞の形態が特に重要であることが知られている。PG-Mのコンドロイチン硫酸鎖は細胞の形態や基質への接着性を変化させ、軟骨分化を促進することが報告されているが、コンドロイチン硫酸鎖に細胞を凝集させる活性があるとは考えにくく、間充織凝集には他の因子の関与が予想される。今回研究を行ったPG-Mのレクチン様ドメインはその凝集因子の候補と考えられ、この作用を含め、PG-Mの持ついろいろな活性が軟骨分化を制御していると思われる。PG-Lbは小型のプロテオグリカンであり、発生過程のニワトリ四肢の骨端軟骨に存在する扇平細胞層に特異的に発現している。PG-Lbの生物学的機能は不明であるが、その独特な発現パターンから、この分子の軟骨形成への関与が示唆されている。PG-Lbのコアタンパク質はロイシンリッチプロテインファミリーに属し、その中で特にオステオグリシンと相同性が高い。オステオグリシンは最初にウシの骨から単離された糖タンパク質であるが、ヒトとウシでcDNAクローニングが行われているだけである。また、その生物学的機能などについては全くわかっておらず、研究の進展が待たれるところである。TGF-βはロイシンリッチプロテインであるデコリン、バイグリカンおよびフィブロモジュリンのコアタンパク質に結合することが知られており、同様にTGF-βがオステオグリシンと結合する可能性は充分にある。TGF-βが軟骨分化に関与するとされていることから、この結合が軟骨分化を制御していることも考えられ、また、PG-Lbとの分子構造の類似性からオステオグリシンが直接に軟骨分化に関与していることも予想される。オステオグリシンについては、今後の研究のための基碇データを蓄積する目的でマウスのオステオグリシンのcDNAクローニングを行い、また、その組織分布について検討した。今回、マウス肢芽のcDNAライブラリーから298アミノ酸から成るオステオグリシンをコードするcDNAクローンを単離し、その塩基配列を決定した。この分子は、ヒトおよびウシのオステオグリシンに対してそれぞれ85および86%の相同性を示した。また、ノーザンプロット解析により、マウスのいくつかの組織において3.7kbのオステオグリシンmRNAの発現が明らかとなった。 | |||||
言語 | ja | |||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | ||||||
内容記述 | 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(農学) (課程) 学位授与年月日:平成7年3月27日 | |||||
言語 | ja | |||||
内容記述タイプ | Other | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源 | http://purl.org/coar/resource_type/c_db06 | |||||
タイプ | doctoral thesis | |||||
書誌情報 |
発行日 1995-03-27 |
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学位名 | ||||||
言語 | ja | |||||
学位名 | 博士(農学) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||
学位授与機関識別子 | 13901 | |||||
言語 | ja | |||||
学位授与機関名 | 名古屋大学 | |||||
言語 | en | |||||
学位授与機関名 | NAGOYA University | |||||
学位授与年度 | ||||||
学位授与年度 | 1994 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 1995-03-27 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第3126号 | |||||
フォーマット | ||||||
application/pdf | ||||||
フォーマット | ||||||
application/pdf | ||||||
著者版フラグ | ||||||
値 | publisher | |||||
URI | ||||||
識別子 | http://hdl.handle.net/2237/11480 | |||||
識別子タイプ | HDL |