WEKO3
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作図行動を含んだ問題解決の認知科学的研究 -幾何の証明問題からの考察
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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ko2953.pdf 本文 (4.7 MB)
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ko2953-1.pdf 要旨 (338.6 kB)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2009-04-22 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 作図行動を含んだ問題解決の認知科学的研究 -幾何の証明問題からの考察 | |||||
言語 | ja | |||||
著者 |
伊藤, 毅志
× 伊藤, 毅志 |
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アクセス権 | ||||||
アクセス権 | open access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||
抄録 | ||||||
内容記述 | 我々は、問題を解決する際や新しい発想を得ようとする時、紙面上にアイディアを書き留めたり図や絵を描いて、考えをまとめようとする。特に、作図行動は、思考の大きな助けになり、人間の理解、発想、学習などの思考活動に多大な利点となっている。本研究は、人間の作図行動が問題解決過程に与える影響を認知科学的アプローチで調べたものである。従来、人間の思考に関する研究は、心理学の「洞察」や「学習」などの分野で行なわれてきた。また、近年では、認知科学の分野で、積極的に扱われるようになり、パズルやゲームの問題解決などを例に挙げ、実際にコンピュータ上に実装される認知モデルもいくつか提案されている。しかし、限られた世界での限られた機能を表現する認知モデルがその多くであり、まだまだ人間の思考の性質を明確に表現したモデルとまでは、到底至っていない。まして、本研究のように視覚情報を考慮にいれた問題解決の認知モデル研究は、最近始められるようになってきたばかりであり、殆ど何も分かっていない状況である。一方、科学技術の分野では、コンピュータの処理能力の向上にともなって、多くのメモリーを必要とする画像処理技術が発達して、CG(コンピュータグラフィックス)やマルチメディア技術を駆使した情報処理機器が、市販されるようになり、多くのユーザーが利用するようになってきた。しかし、科学技術の発展に比べ、それを使う人間に対する認知科学的研究はあまり進んでいるとは言えず、人間にとって分かりにくく使いにくい機器が現われる傾向にある。ヒューマンインターフェースの研究は、本来、このような問題に対応するために生まれてきた研究分野であるが、人間の実際の認知過程を調べるといった研究は、まだ少ない。このような状況の中、人間の視覚情報処理の認知特性を調べ、理解の過程を研究することは意義のあることと思われる。したがって、本研究の目標は、人間の視覚情報処理が論理的思考に与えている影響を調べて、視覚的なイメージ処理と思考過程との関連を解明することにある。論文中では、研究の背景と目的という形で、1章に述べた。人間による問題解決の過程を調べるために、本論文では、幾何の証明問題を例に挙げた。幾何の証明問題は、一般に作図しないと解決できないので、作図過程を調べる問題としては適していると考えた。2章では、従来の研究と研究方法について述べた。本研究では、人間の具体的問題解決過程を調べることを目的としているので、認知科学的アプローチを用いた。一般に、認知科学的アプローチは、以下の3つの段階から構成される。1)発話プロトコルという心理的な実験を行ない、被験者の行動をモニターし、思考過程を調べる。2)1)で得られた心理データを整理し、認知モデルを提案する。3)認知モデルの論理的整合性を確認するためにコンピュータ上にインプリメントして、動作を調べ、認知モデル自体を評価する。3章では、実際に人がどの様に問題を解いているのかを上記の発話プロトコル分析を用いて調べた。そして、その結果に基づき、作図過程を含んだ問題解決過程を説明する認知モデルを提案した。このモデルでは、解決の過程を3つの過程に大別した。これによって、解決の流れが分かり、作図行動を解決過程の流れの一環として表現することができた。また、作図には、「作図することによって得られる問題文中には含まれない情報(隠れた情報)が見つかる」という利用上の利点があることを指摘した。その利点を含んだコンピュータモデルのプロトタイプとしてDIPS(DIagramatic Problem Solver)を試作した。DIPSでは、問題解決の過程を問題表現の変化の過程として捉えた。作図行動も、その一環であるとして論理的表現を図的表現(座標情報)に変換する過程であるとした。このように捉えることによって、作図の生成過程と作図の解釈過程を別の処理系として扱うことができた。生成過程では、問題文の文的情報を逐語的な変換によって図的情報としての2次元的な座標情報に変換を行なった。解釈過程では解法候補というトップダウンの知識を用いて図的情報を解釈し、解決に必要な情報を取り出すシステムが実現された。このモデルは、論理演算を行なうのに有効なPROLOGで表現されており、関数を追加することによって、新しい作図生成規則や解釈候補の可能性を広げることができる。しかし、作図の生成過程に関して、さらに詳しい観察を行なうと、文的表現を図的表現に変換して、隠れていた情報を得ることができるという利点だけでなく、他にも利点があることが観察された。4章では、このような作図利用の利点に注目して、より詳しい作図生成のメカニズムを明らかにしようとした。「作図利用の利点」をより細かく調べていくと、結局、以下の3つに集約される。①保持性・・・人間の短期記憶では、視覚情報のような情報量の多い情報をすべて記憶しながら推論したりする事は困難である。そのため、図的情報などは、一旦外部に情報を保持して、作業記憶の負担を軽くする。②操作性・・・文や式などで表現されたものを推論するときには、順序立てて論理的に組み立てなければならない内容でも、作図図形などの図形的表現上では、視線を動かしたり補助線を描き込んだりする簡単な操作で推論できる場合がある。③全体性…作図図形のような図的表現では、角度、線分長、平行性などの情報が空間的に関係付けられて表現されているので、文的表現だけでは容易に得られなかった副次的な情報(文的表現だけでは分かりにくい線分間の位置関係などの情報)が得られ易い。これら3つの作図利用の利点を考慮にいれて、さらに、作図を現れ方から8つに分類した(逐語的作図、条件記入作図、条件拡張作図、推測的作図、状況考慮作図、解法考慮作図、実験的作図、部分強調作図)。また、具体的にどの様な問題解決段階でこれらの作図が現われるのかを、心理実験を通して観察した。心理実験の結果を受けて、作図の現われる原因は意図(Intention)であると考えた。その意図は、解決の段階に対応して現われることが示唆された。この作図生成過程を「問題解決スクリプト」という概念を提案することによって説明しようと試みた。「問題解決スクリプト」では、問題解決の段階は5つの段階(問題理解の段階、解法探索の段階、解法適用の段階、解法吟味の段階、答案作成の段階)に分類される。そして、各段階で異なった意図が生じるとし、その意図が人間の行動を制御していると考えた。実験の結果から、各段階で生成される意図に対応して、生成される上記に分類した8つの作図の頻度が異なることが確認された。この「問題解決スクリプト」と「8つの作図の分類」を想定することによって、人間が問題解決の際に使い分けるいろいろな種類の作図行動をうまく説明することができた。次に問題になるのは、このような作図を含んだ問題解決過程がどのように学習されるのかという点である。したがって5章では、作図利用過程と問題解決過程の学習過程による変化を調べるために、実際に学習する中学生の被験者を約3カ月間にわたって、追跡調査した。その結果、この被験者は、最初、先生に教わった通りの手続き的情報を基に、その手続きをなぞるような問題解決しかできず、作図は殆ど有効に用いていなかった。しかし、徐々に学習が進むにつれて、問題全体の構成が分かるようになり、それにともなって、作図記号を使って積極的に図に操作を加える操作的な作図が見られるようになった。最終的には、問題全体を見渡したトップダウン的な問題解決過程が定着していくことが分かった。この実験では、従来指摘されていた「宣言的知識→手続き的知識」という手続き化学習の流れと言うよりは、「手続き的知識→宣言的知識」という手続き的知識が優先する学習形態をとることが確認された。学習の過程では、「解く」という体験が問題構造などの理解と深く関わっていて、作図行動のような行動も、最初はその意味よりも手続き的な知識として憶えているが、適用して解けたことから後向きに理由付けをしていることが推察された。その考えをもとに、学習にともなって変化していくであろう知識ベースの変容の過程をモデル化して説明した。6章では、作図によって理解のもとになる知識はどのように想起されるのかを、作図の有無による行動を比較した心理実験を通して考察し、理解のメカニズムをPCSという概念を提案することによって明らかにしようとした。7章では、本論文のまとめと、以下に述べる今後の課題を挙げた。まず、問題解決における理解(解釈)を、本研究では、PROLOGによる論理的解釈の過程として捉えたが、直観的な解釈の過程もあるのではないかと考えている。我々の理解の過程を調べていくと、論理的解釈と直観的解釈の2種類が混合して現われているように思われる。いわゆる"印象"とか"感覚"のような直観的解釈については、結局、今回は扱えなかった。この2種類の解釈が融合した時に、人間の行なっている理解の過程がシミュレートできると考えているが、この点については、今後の課題と言えよう。また、5章で行なった学習の実験についてであるが、ここでは、被験者は一人しか扱わなかった。当然、学習には、いろいろなパターンが存在するだろうし、問題の種類によっても違いが生じるだろう。この点についても、よりいろいろなパターンでの比較が必要となろう。最後に、応用についてであるが、本研究では、具体的な応用研究は行なわなかったが、今後は、本論文で提案した認知モデルに基づいたHI(Human Interface)研究も行なっていくつもりである。 | |||||
言語 | ja | |||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | ||||||
内容記述 | 名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (課程) 学位授与年月日:平成6年3月25日 | |||||
言語 | ja | |||||
内容記述タイプ | Other | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源 | http://purl.org/coar/resource_type/c_db06 | |||||
タイプ | doctoral thesis | |||||
書誌情報 |
発行日 1994-03-25 |
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学位名 | ||||||
言語 | ja | |||||
学位名 | 博士(工学) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||
学位授与機関識別子 | 13901 | |||||
言語 | ja | |||||
学位授与機関名 | 名古屋大学 | |||||
言語 | en | |||||
学位授与機関名 | Nagoya University | |||||
学位授与年度 | ||||||
学位授与年度 | 1993 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 1994-03-25 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第2953号 | |||||
フォーマット | ||||||
application/pdf | ||||||
フォーマット | ||||||
application/pdf | ||||||
著者版フラグ | ||||||
値 | publisher | |||||
URI | ||||||
識別子 | http://hdl.handle.net/2237/11531 | |||||
識別子タイプ | HDL |